『HUNTER×HUNTER』といえば長期休載にも関わらず、いまだに高い人気を誇る名作です。現在は暗黒大陸へ向かう巨大船ブラックホエール号を舞台にたくさんの人物の思惑がからみ合う複雑なストーリー展開が進行しています。そこで新刊発売前にこれまでの展開を振り返ります。



『HUNTER×HUNTER DVD&BD Vol.1』(バップ) (C)POT(冨樫義博)1998年-2011年 (C)VAP・日本テレビ・集英社・マッドハウス

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あまりにも複雑な展開に頭がショートしそう?

 現在休載中の「週刊少年ジャンプ」(集英社)のマンガ『HUNTER×HUNTER』の38巻の発売日が発表されました。発売日は2024年9月4日、およそ1年10か月ぶりの新刊です。しかしあまりに複雑な展開や長い休載期間中にどんな物語だったか、記憶が定かでない方もいるのではないでしょうか?

 この記事ではアニメ化されたエピソード以降の内容を振り返ります。

アニメ版はゴンがジンと出会うまで

 アニメ『HUNTER×HUNTER』の最終回は第148話「コレマデ×ト×コレカラ」です。このエピソードは単行本だと32巻に収録されており、ついに主人公である「ゴン」が追い続けていた父「ジン」と出会って、その思いを語り合うというものでした。「ネフェルピトー」を倒すときに使った念能力の副作用で死にかけていたゴンが復活したこともあり、死闘に次ぐ死闘が繰り広げられた「キメラアント編」の本当の最終回といっても過言ではありません。

 原作マンガではほとんどセリフのない叙情的な演出だったこともあって、『HUNTER×HUNTER』が終わるのではないか、と思った方も多いのではないでしょうか。

 しかしここからの展開は誰もが想像もつかない、新しいフェーズに突入します。なんとキメラアントの王「メルエム」と戦ったハンター協会のトップである「ネテロ」の息子「アイザック」が登場するのです。

 そして「カキン帝国」の「ホイコーロ国王」のバックアップのもと、人類がほとんど足を踏み入れたことのない「暗黒大陸」への進出を目指します。ジンがゴンに語ったように、人類の世界は世界の広大さに比べたら本当にちっぽけなものに過ぎません。

 そもそも世界の脅威となったキメラアントですら、たまたま「外の世界」で傷つき、人類世界へと流れ着いただけの生物でした。1匹の外来種が人類世界に紛れ込んだだけで、重大なダメージを与える事件を引き起こしたのです。人類領域の外の暗黒大陸はどれだけ危険な世界なのでしょうか?



『HUNTER×HUNTER 選挙編 DVD&Blu-ray BOX』 (C)POT(冨樫義博)1998年-2011年 (C)VAP・日本テレビ・マッドハウス

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最新エピソードの内容を覚えていますか?

 さて、ここから記憶が曖昧になってきます。なぜ曖昧になるかというと、あまりにも多くのシナリオが入り組んでいるからです。20万人を抱える巨大船「ブラックホエール号」という密室を舞台に、大きな枠で捉えても下記の6つのシナリオが同時進行しています。

・暗黒大陸に行きたいアイザックを抑えようとするハンター協会内部のいざこざ
・ジンと「パリストン」の確執
・緋の目の回収を目指す「クラピカ」
・カキン帝国の王位継承戦、壺中卵の儀(王子は14人)
・カキン王国の王子が『ケツモチ』をするマフィア同士の抗争(三つ巴)
・幻影旅団の「ヒソカ」狩り

 しかもこれらにはそれぞれにサブシナリオが存在し、複雑さはとんでもないことになっています。現在何が起きているのか説明するには、とても紙幅が足りません。そこで2024年7月時点の最新刊である37巻までの状況をかいつまんで紹介しましょう。

 まず継承戦を拒んでいた第9王子「ハルケンブルグ」は儀式が中断できないことを悟り、ジョイント型の強力な念能力に目覚めて第一王子「ベンジャミン」の護衛を殺害します。

 快楽殺人者の第4王子「ツェリードニヒ」は、護衛のハンター「テータ」に殺されかけたことをきっかけに「10秒世界を先行できる」念能力に目覚めました。そして幻影旅団に協力するマフィア「シュウ=ウ一家」の若頭「ヒンリギ」が部下の「ザクロ」と「リンチ」を伴ってヒソカを捜索し、マフィア同士の抗争が始まります。

 クラピカはもっとも立場が弱い「ワブル王子」とその母「オイト」を守ろうと一般人に念能力を広めて、王子同士の争いを抑止する均衡状態を作ろうと奮闘しています。

 これらはすべてショートエピソードで、どれも直接の関係はありません。しかし巨大船の運命という点で有機的に結合しており、かなり読み応えがあります。

 これまでの『HUNTER×HUNTER』では、ゴンや「キルア」など特定のキャラクターを中心に物語が描かれてきました。そのため、分かりやすく力強い展開が魅力だったといえます。

 しかし「王位継承編」では粉々に砕けた破片のような「状況」が無数に描かれており、主役は存在しません。しかし最終的には無関係に思えたエピソードの破片同士が組み合わさって巨大な構造物ができあがると思われます。いったいどのような結末を迎えるのか、いまのところ、まったく先が読めません。

原作マンガのストックはある?

 38巻の刊行と合わせて短期集中連載はあるのでしょうか。現時点でいっさい情報がありませんが、富樫先生は頻繁にX(旧:Twitter)で仕事の様子をポストしています。もしかしたら書き溜めた原稿があるかもしれません。

 そしてもし連載再開が実現したら久しぶりに『HUNTER×HUNTER』と『ONE PIECE』というジャンプの双璧が復活します。新刊と合わせて連載再開を期待して待ちましょう。