人生経験も豊富で、仕事における知識もある「おっさん」。しかし一部のおっさんは、なぜか若い世代に嫌われ、煙たがられる傾向にあります。人気サービス「おっさんレンタル」を運営し、自身も「おっさん」として活躍する西本貴信さんに、「嫌われないおっさん」になるための心構えを聞きました。
年間の依頼は約1,000件!7割は「相談系」の依頼
――まず、「おっさんレンタル」に登録しているおっさんはどれくらいいるんですか?
全国各地に70人くらいですね。現役の大学教授から、メガバンクに勤めていたおっさん、IT企業の経営者までさまざまですよ。基本的には1年契約で、クレームを3回受けるとクビになる、というルールで運営しています。
さまざまな趣味や特技、キャリアを持つおっさんたち
現在は毎月数十人程度のおっさんが応募してきます。「志望理由に下心がないか」「身なりが不潔ではないか」といった項目を面接でチェック。その中でも「人の役に立ちたい」という熱意のあるおっさんを採用するようにしています。
――現在、どれくらいの依頼件数を受けているのでしょうか?
1日に30件ほどです。年間で1,000件くらいのレンタルが発生しているので、大変ですよ。今日も電話で「今からレンタルできるおっさんいますか?」って。ぼく自身もサービスを始めてから、2,500件はレンタルの依頼を受けています。
実はサービスを開始してから最初の2年間は僕1人で依頼を全部引き受けていたんですよ。全国各地、いろんなところを飛び回っていました。3年目で「おっさんが足りてません!」と募集をかけ、徐々に仲間が増えていきました。
「現在も『おっさんレンタル』ではおっさんを大募集中です!」と西本さん
――「おっさんレンタル」の利用者はどういった人が多いのでしょうか?
メディアに出た影響などもあって、今は若い子が多いです。一時期は依頼の8割が女性だったのですが、徐々に若い男性のお客さんも増えてきました。依頼内容は7割が相談系で、3割が作業系です。
――どういった相談が寄せられることが多いんですか?
男性は「転職をしたい」「インターンシップをしたい」など、仕事関係の相談が多いです。「こういう時はどうすればいいんですか?」と、明確なアドバイスを求めてくるお客さんが多いかもしれません。
逆に女性の場合、誰にも言えないような対人関係の悩み相談から「彼氏との待ち合わせ時間まで話し相手になって」というライトなものまで結構バラバラ。ノープランで「とりあえず借りてみたい」という問い合わせもあります。
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最初は相手の話を聞き、自分の意見は後回しにする
――西本さんが若い人からの相談を受けるとき、気をつけていることはありますか?
依頼者のパーソナルスペースに入らないよう、相手との物理的な距離感は保っています。そして、とにかく「傾聴」することを意識しています。自分から率先して話をすることはあまりないかもしれません。
――相手の相談に対し、なぜ「傾聴」が重要なのでしょう?
基本的に「相談に乗ってほしい」という言葉の裏には「ひたすら話を聞いてほしい」というメッセージが込められているんです。具体的なアドバイスを求められない限り、まずは気がすむまで相手へ喋ってもらうようになりました。
僕がサービスを始めた当初は「せっかく1,000円もらうなら、面白い話をしなきゃ」って毎回気合を入れていたんですよ。でも、あるお客さんから「西本さんの話なんかどうでもいい!」って言われて。ハッとしましたね。「お客さんは必ずしも解決策を求めているわけではないんだ」と気付きました。
でも、「傾聴」ができないおっさんは意外と多いんです。すぐに結論を言おうとしたり、今までの経験から答えを出そうとしたりします。特に仕事で成功を収めた「オラオラ系」のおっさんは、「おっさんレンタル」で失敗しがちです。
――なぜ「オラオラ系」が失敗するのでしょうか?
ビジネスで成功しているぶん、すぐマウントを取ろうとするんですよね。悲しいことに「おっさんが喋りすぎて、全然話を聞いてもらえなかった」というクレームを受けることも多々あります。
お仕事をバリバリやってきたおっさんは、基本的にやる気と熱意に満ちています。でも、長年培ってきたプライドもある。本人に悪気はないものの、つい威張りたくなるんですよ。自分が話す武勇伝に感極まり、依頼者の前で泣いたおっさんもいました(笑)。
――そういったおっさんを、西本さんはどのようにケアしていますか?
動向を追いながらも、基本的には静観しています。自分の良くない部分に気づかないうちにアドバイスをしても「俺は間違ってない!クレームを入れた依頼者の方がおかしい!」って聞き入れないおっさんがいるので。
それよりも「依頼者から良い評価がもらえない」「人気が出ない」と悩み始め、僕に相談をしてきて初めて助け舟を出すことが多いかもしれません。よく「最初は聞いてあげて、話題がなくなったら自分の話をしてもいいよ」ってアドバイスしています。