「ガンダム」シリーズの敵メカの代表格ともいえる「ザクII」。本編中では、ガンダムに攻撃が通用しないなど、「やられメカ」のような描写がされます。しかし『機動戦士ガンダム0083』を見ると、4年後でも現役機として使われています。性能的な問題はなかったのでしょうか。



初代『機動戦士ガンダム』序盤では「やられメカ」の印象が強かったが…… 画像は「HG 機動戦士ガンダム ザクII 1/144スケール 色分け済みプラモデル」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】え、どのへんがザク…? コチラが“変わり種”と“ザクの血脈を持つMS”の皆さんです(5枚)

「ザクなんか」って失礼では?

『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ(以下、MS)「ザクII」は、ジオン軍の栄光と挫折を象徴する機体です。地球連邦軍がMSを装備していなかった時期のザクIIは、「兵力差3倍」も覆して圧勝する無双ぶりを見せます。

 しかし『ガンダム』本編では、装備しているマシンガンはガンダムに歯が立たず、ガンダムのビームライフルどころか、頭部バルカン砲でも撃破される「やられメカ」として描写されます。これだけ見ると、「ザクは弱い旧式機」という印象を受けるでしょう。

 ですが、一年戦争終結から3年以上経った宇宙世紀0083年を舞台とする『機動戦士ガンダム0083』において、ザクIIは地球連邦軍と「デラーズ・フリート(ジオン軍残党)」の双方で、現役機として活躍しています。

 それどころか、宇宙世紀0087年の『機動戦士Zガンダム』でも、ザクと大差ないマジンガン、あるいはヒートホークを装備した「ハイザック」が現役機として活躍します。これが示すところは、「連邦軍もジオン残党も、ザクIIの性能が大きく不足しているとは考えていない」ということではないでしょうか。

 実際、ジオン軍は一年戦争末期でも『0083』でも、ザクIIにマシンガンを装備させています。ガンダムには通用しない兵器と描写されていますが、「ジム」や「ボール」など、他の兵器には十分に通用したからこそ、「連邦軍機の装甲には通用しないから、命中率が下がってもバズーカに変更する」とはならなかったということです。

 ちなみに「シャア・アズナブル」のザクIIがバズーカを構えた際には、「アムロ・レイ」は「あれを喰らってはマズい」と発言していました。「グフ」のヒートサーベルより重量がありそうなヒートホークもガンダムに通用するでしょうから、ザクIIには、ガンダムに通用する兵器がないわけではありませんが……。

 また、いわゆる「ザクマシンガン」は、対MS戦闘を想定した兵器ではなかったので、初速が遅く、装甲貫通力が弱いという設定もあります。初速を落としたのは、有視界戦闘の至近距離で発砲する兵器なので、貫通力は重視せず、砲弾の炸薬量を増やしたかったということでしょう。また、反動を下げて、関節部の負担を減らす意図もあったのでしょう。

 実際、大戦後期のザクIIは口径を120mmから90mmに下げた、新型マジンガンを装備しています。連邦軍機への貫通力が大きく不足しているなら、口径を下げるわけがありません。つまり、ジムの装甲相手なら90mmで十分だったのでしょう。連邦軍のジムも90mmマシンガンを装備しているタイプがあります。

 つまり連邦側からも「ガンダムの頭部60mmバルカン砲でザクIIを撃破できたのは、当たり所がよかっただけで、90mm程度の口径は必要」と見なされていたということです(シャアは、ガンダムのビームライフルで「ザクが一撃で破壊された」と驚いていますが、逆に「ザクに一定の防御力がある」証明でしょう)。

 実際、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で、「アレックス」の腕部に装備されたガトリングも90mm砲ですが、新鋭機「ケンプファー」を撃破できています。

 モビルスーツのサイズが18m程度とあまり変わらない以上、装甲厚の増加にも限度があります。ハイザックの「120mmザクマシンガン改」は砲弾の改良や初速向上で『Z』のMSにも有効な威力を維持しているのでしょう(現実世界でも、例えば戦艦の徹甲弾は20年間で貫通力が1.5倍くらいに増えています)。

 ちなみに『機動戦士ガンダム第08MS小隊』では、「陸戦用ガンダム」のようなハイエンド機でも、数多くの実弾兵器を装備していますし、『0083』の高性能機「ジムカスタム」でも、ビームライフルではなく、実弾兵器のジムライフルを装備しています。

 つまり、初期のMSにおいて、ビーム兵器は実弾兵器に対して、必ずしも性能優位ではなかったのでしょう。「ホワイトベース」のような、「サイド7」で試作機用の部品を大量に詰みこんだ部隊は別として、一般の部隊ではビーム兵器の性能・威力が安定していなかったり、装弾数が少なかったりなどがあり、問題視されたのかもしれません。実際、宇宙世紀0087年の「ガンダムMK-II」でもEパックひとつでビームライフル3~7発で、Eパックは3つ装備ですから、9~21発しか撃てないわけです。

 ビーム兵器は初速で実弾兵器より有利ではありますが、MSは有視界戦闘を前提とした兵器で、センサー範囲を考えても数km以内で撃ち合いますから「近くから撃てば当たる」という考えだったのでしょう。実際、「ドム」はMS相手でも、取り回しが悪そうな「ジャイアントバズ」を通常装備している例が多く見られます。

 このように、火力、防御力でザクIIはジムと大差ない性能と見なされていたのでしょう。運動性についても、量産機の3割増しの出力しかないシャアのザクIIは、アムロのガンダムが追従できないほどの運動性を見せつけました。

 いかにアムロが操縦に慣れていないとはいえ、ザクは操縦性と運動性に優れていた機体ということです。MSが有視界戦闘での白兵戦を想定する兵器である以上、運動性能の良し悪しは無視できないでしょうし、ヒートホークが威力面で不足とは考えにくいので、その辺りも「通用する」機体ということです。一年戦争末期になっても「ザクII改」「高機動型ザクII」のような新型ザクが配備され、ハイザックを開発したいと思わせる程度には、ザクの基礎設計は優秀で、あるいはジムよりも運動性能では上だったのかもしれません。

 もちろん、現在の戦闘機のように、コンピュータープログラムのアップデートでの性能向上もあったでしょうから、「新鋭機に置き換えるまでの戦力としては十分」と判断できるだけの基礎性能があり、ザクIIを連邦軍も使っていたのだと思われます。