マンガの実写化作品には、原作ファンの厳しい目が向けられがちです。特に3次元にはいないであろう強烈なビジュアルや、不条理なギャグが飛び出すギャグマンガはより高いハードルがありますが、数々の俳優が体当たりで演じてきました。



ドラマ『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』ポスタービジュアル (C)仲間りょう/集英社 (C)WOWOW

【画像】え…っ? 「柳楽優弥のトッシーがまんま」 こちらがイケメンが全力で演じたギャグキャラです(7枚)

普段はあんなにイケメンなのに!?

 ギャグマンガの実写化が発表されると、「3次元で再現は無理でしょ」とファンから厳しい声が飛び出すことは珍しくありません。特に、独特な絵柄だからこそ面白いギャグマンガを3次元で再現しようとすると、違和感が生じてしまうでしょう。

 しかし、数々の実写化作品では、イケメン俳優が演じており、顔は似ていないはずなのに再現度が高いギャグマンガのキャラクターもいました。

 たとえば2024年7月より放送されているドラマ『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』は、浮世絵風の絵柄が特徴的なギャグマンガの実写化でありながらも、世界観を失わないトーンやキャラクターの再現度に「これが観たかったんだよな」「原作のリスペクトが感じられて満足」と、高い評価を集めています。

 なかでも主人公の「磯兵衛」を演じる杉野遥亮さんは、「原作のダサカワイイ感じが倍増した」「イケメンなのに変顔を全力でやるから推せる」と支持されているようです。これまでにも、原作ファンもうなるほど全力でギャグマンガのキャラクターを演じたイケメン俳優がいました。

『斉木楠雄のΨ難』の斉木楠雄(演:山崎賢人)

「週刊少年ジャンプ」で不定期掲載を経て2012年から連載開始された『斉木楠雄のΨ難』(作:麻生周一)は、超能力を持つ主人公「斉木楠雄(さいき くすお)」が災難に巻き込まれるギャグマンガです。

 目立つことを避け、超能力者であることを隠そうとする斉木は、他人と関わろうとせず、基本的に発言する描写も省かれています。斉木が淡々としたモノローグで周囲にいる濃いキャラのクラスメイトにツッコミを入れる姿も、シュールで人気を博していました。ピンクの髪色、頭部に装着しているアンテナのような装置と緑色のメガネという奇抜過ぎるビジュアルも、斉木というキャラをより個性的に見せています。

 2017年の映画『斉木楠雄のΨ難』で斉木を演じたのは、「キングダム」シリーズでの「信」、『ゴールデンカムイ』の「杉元佐一」と、数々の実写化作品でかっこいい役柄を演じている山崎賢人さんでした。山崎さんが無表情のまま、「山崎賢人、実写やり過ぎじゃね? と思いましたね」と語りかける予告編の段階で、「このビジュアルで自虐ネタぶっ込んでくるのはずるい」「これは高評価せざるを得ない」とポジティブな意見が出ていました。

 山崎さんは斉木に惚れている美少女「照橋心美(演:橋本環奈)」の妄想に出てくる、「てんぱっている斉木」も熱演し、稲川淳二さんの怪談を聞いてガタガタ震える姿も披露して観客の笑いを誘いました。そのほか吉沢亮さん演じる「海藤瞬」や賀来賢人さん演じる「窪谷須亜蓮」など、イケメン俳優たちのクセの強い演技合戦が繰り広げられています。

『浦安鉄筋家族』の春巻龍(演:大東駿介)

 千葉県浦安市を舞台に、超元気な小学生、「大沢木小鉄」と家族、クラスメイトたちを中心としたギャグマンガ『浦安鉄筋家族』は、作者の浜岡賢治先生ですらドラマ化の際に「問題が多くて絶対無理だよ~」とコメントするほど、実写化がイメージできない作品でした。

 作中ではビンタや飛び蹴りをはじめとする暴力シーンだけでなく、一歩間違えれば炎上しそうな破天荒な行動も数多く描かれており、2020年にテレビ東京系で放送された実写ドラマ第1話のサブタイトルでは「コンプライアンス上等」と、真っ向から挑発するようなフレーズが掲げられています。

 本作には、1カートンのタバコをパッケージごと吸うほどのヘビースモーカーである小鉄の父「大鉄(だいてつ/演:佐藤二朗)」や、さまざまなアクシデントに巻き込まれては全裸になっている「花丸木(演:染谷将太)」をはじめとする強烈なキャラクターが登場します。

 小鉄の担任である「春巻龍」もそのひとりで、ブルース・リー風の見た目でありながら体力がなく、ケチで卑怯な性格から教え子たちにもバカにされるほどのギャグキャラです。貧乏で「家庭訪問」と称して生徒の家を訪れてタダ飯を食べようとし、「チョー」「ホイ」と独特な語尾が特徴的な春巻は、俳優の大東駿介さんが見事に再現しました。

 黄色いジャージや太い眉といったビジュアルに加え、目を見開いてのリアクションや謎の語尾も再現され、視聴者から「もう春巻本人じゃん」「語尾が完璧で笑う」と、絶賛の声が相次いぎます。

 大東さんは過去にもさまざまな実写化作品に出演しており、『バイオレンスアクション』でコントロール不可能のヤクザ「アヤベ」や、『桜蘭高校ホスト部』でクール系男子の「鏡夜」などを演じています。なかでも「生徒相手に威張れるから」としょうもない理由で教師になった、圧倒的「クズ」キャラでもある春巻の再現度は群を抜いていました。

『銀魂』の土方十四郎(演:柳楽優弥)

 ハイテンポで破天荒なギャグが人気の作品『銀魂』は、実写化の成功例として語られることも少なくありません。主人公「坂田銀時」を演じた小栗旬さんをはじめとする再現度の高いキャストや、原作通りのギャグ演出も話題を呼びました。

 荒唐無稽な要素も再現した実写版『銀魂』において、特に多くのファンが驚いたのは、新撰組で「鬼の副長」と呼ばれた土方歳三をモデルにしたキャラクター「土方十四郎」を演じた柳楽優弥さんです。

『銀魂』で柳楽さんが演じた土方は、「鬼の副長」として恐れられ、クールかつ冷静沈着な人気キャラでした。しかし、実写映画2作目で描かれた「真選組動乱篇」では、妖刀「村麻紗」の呪いでヘタレなオタクキャラである人格「トッシー」が生じます。

 赤いハチマキにデニムの袖なしベストというオタクならではの風貌、「ござる」という語尾や「○○氏」という2人称、アイドルや萌えアニメをこよなく愛するトッシーと、荒くれ者の多い隊をまとめあげていた土方のギャップは凄まじく、史上最年少かつ日本人で初めてカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した実力派俳優である柳楽さんの実力が遺憾なく発揮されました。

 観客からも「トッシーが予想以上のクオリティ」「完璧すぎた。イントネーションとかあれは原作見まくってないとできない演技だった」「同じ場面で土方さんとトッシーが、交互に入れ替わりまくるのが、アニメで見たまんまでホント驚いた」と、絶賛されています。