2月に1989年のバブル時代の最高値を超えてから、しばらく上がったり下がったりしていた株価が、7月に入って再び勢いを増し、7月11日には日経平均株価が4万2000円を超えた。これは、この3カ月あまり減少気味だった海外投資家の日本株投資が、再び息を吹き返したことに呼応するものだ。

 株式投資は安い時に買って、高い時に売れば儲かる。当たり前だ。しかし、株式投資に興味が集中するのは、株価が上がった時ばかり。本来、消費者は誰でも安いものが好きで、バーゲンセールになると、それまで売れなかったものも売れるわけだが、株式投資だけは別のようだ。

 いろんな人から「佐藤さん、今から買っても儲かるかね?」と、聞かれる。聞かれるのは大抵、安い居酒屋で酒と刺身を楽しんでいる時で、おじさんからそんなことを聞かれても、ちっともうれしくない。時折おばさんも聞いてくるが、それもあまりうれしくない。

 さて、そんな風に知らない人から訊ねられると、必ず「アサ芸に連載しているから、それを読んでくれ」と言っている。相手も酔っ払っている時に大切なお金の話を聞くより、シャキッとしている時に考えた方が100倍いいはずだ。

 さて、今後も株価は上がっていくのか? 答えは上がることもあるだろうし、下がることもある。株式投資なんてものは、そういうものだ。だから上がっても下がっても「まあまあいいんじゃないか」というものに投資するのがいい。

 では、何を買ったらいいのか? まずは、潰れない会社。潰れたら株式投資は外れ馬券のように価値がなくなってしまうからだ。

 そして、株価が上がる可能性があるもの。また、上がらなくても得できるものだ。上がらなくても得できるというのは、株式に投資して株主になると、ほとんどの会社で株主に対して半年ごとに配当金をくれる。この配当金の高い会社がいい。大体投資した金額の4%か、それ以上の配当金が年間で出るものなら合格だろう。

 この条件に合致する一例が日本製鉄(5401)とホンダ(7267)だ。

 配当金は会社の業績によって増えることも減ることもあるが、経営者は配当金はなるべく安定させて、増やしていこうというのが今の流れだ。株価が落ちることは会社の価値を減らすことだから、配当を減らして株式が売られないようにしたいものなのだ。

 今のところ日本製鉄は1年に160円、ホンダは58円の配当金が払われる。例えば日本製鉄を1株3200円で買えば、160円÷3200円=0.05で投資金額に対して1年で5%の配当金が払われることになる。

 7月16日時点での株価では、日本製鉄が4.5%、ホンダは4%ぐらいの配当金が出る。日本製鉄は大統領選挙後には懸案になっているUSスチールというアメリカ最大の製鉄会社の買収が進むとみられており、きっと株価を上げるだろう。

 ホンダは二輪車の世界シェア1位と、世界中で認知されている会社だが、現在は環境問題を見据えてEV車開発に向かうことの不透明感で下がっている。2000円ほどあった株価が1700円を下回るほど落ち込んでおり、この経営判断が成功するか、世の中の評価が割れているというわけだ。

 このように株価が上がったら売って儲ける。上がらなかったら高い配当金をもらって上がるまで持ち続ける。そんな投資にピッタリの銘柄でないかと思う。

 ということで、飲み屋で質問してきたTさん、こんなんでいいでしょうか? もっと他にはないのか?という人には、8月5日に「つみたてよりも個別株!新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)っていう長ったらしいタイトルの本を出すから、それを買って読んでもらいたい。

 以上、みんな熱中症に気をつけていこう!

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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