昭和時代の名作が、令和に蘇る。このリバイバル的な流れは、ゲーム業界も無縁ではありません。2024年の下半期だけでも、昭和のファミコンソフトがさまざまな形で蘇ります。懐かしくも新しい、令和で昭和な作品たちに迫ります。



『ファミコン探偵倶楽部』シリーズの1作目は、昭和63年(1988年)に発売された。画像は、Wii U バーチャルコンソール版『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』。(C)1988 Nintendo

【画像】えっ、ビジュアルが綺麗! こちらが「リメイクで蘇る昭和の名作ソフト」です(6枚)

ファミコンソフトの名作が復活!

 昭和時代に幕を開け、時代に残るヒット作となったマンガやゲームがいくつもあります。そのなかにはリバイバルされた作品も少なからずあり、往年のファンは懐かしい作品と再会することができ、若年層にとっては時代を超えて輝く名作と出会える絶好の機会といえるでしょう。

 1987年から約9年にわたってマンガ連載が続き、1989年から1992年にかけてTVアニメも放送された『らんま1/2』も、昭和生まれにとって懐かしい作品のひとつ。この名作の新たなTVアニメ化が先日発表され、大きな話題となりました。

 こうした昭和生まれの作品が蘇るたびに、消費者からは「いまって昭和?」「今年はきっと昭和99年」といった声が上がり、リバイバルによる盛り上がりをユニークに表現しています。

 リバイバルの波はゲーム業界にも及んでおり、令和6年の下半期だけに限っても、当時の名作やヒット作が集中して復活します。果たしてどんなゲームが、この令和6年に……いいえ、「昭和99年」に復活を果たすのか。特に見逃せない3本を紹介します。

昭和時代に幕を開けた名作ADVシリーズ『ファミコン探偵倶楽部』

 昭和時代の家庭用ゲーム機といえば、当時を代表する名機「ファミリーコンピュータ」が絶対的な人気を博していました。

 ファミコンソフト自体は平成6年(1994年)まで発売されており、現役期間はざっと数えて10年ほど。その前半にあたる約5年間が昭和時代と被っており、最初に取り上げる『ファミコン探偵倶楽部』も、1作目が昭和63年(1988年)に発売されました。

 シリーズ1作目の『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』は、不審な殺人事件とオカルト要素を巧みに重ね合わせた物語を、前編・後編に分かれたボリュームで綴ったアドベンチャーゲームです。

 サスペンスとホラーを融合させた切り口は好評を博し、2作目の『ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女』もその魅力を継承し、本作では学校に伝わる怪談話を盛り込み、ファミコン時代を代表する名作の仲間入りを果たします。タイトルの意味が分かった瞬間の驚きは、プレイヤーなら誰しも忘れられないほどでした。

 その後、衛星放送を介した「サテラビュー」と呼ばれるシステムで、ヒロインの橘あゆみを主人公に抜擢した『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』が配信されたほか、2作目をスーパーファミコン向けにリメイクしたり、1、2作目をファミコンミニのラインナップでリリースするなど、シリーズの展開が広がりました。

 しかし、以降はWiiや3DSなどでバーチャルコンソール版が配信される程度で、シリーズの新たな展開がないまま時間が過ぎていきます。もともとはファミコンのゲーム、しかも昭和時代に始まったクラシカルなシリーズです。他の作品に後を任せ、幕を閉じてもおかしくありません。

あの『ファミコン探偵倶楽部』が、35年ぶりに完全復活!

 そんな諦観にも慣れてしまった令和元年(2019年)、『ファミコン探偵倶楽部』の2作品をリメイクし、Nintendo Switch(以下、スイッチ)向けに発売されるとの発表が舞い込みました。

 このリメイク版は、原作のテイストを継承しつつ、グラフィックやBGMなどを一新。また、会話シーンはフルボイスになるなど、令和にふさわしい手触りとなって生まれ変わり、2020年に無事発売されました。

 スイッチ向けにリメイク版が出るとは予想していなかったシリーズファンは、この展開に驚き、そして喜びの声を上げました。しかし「リメイク版のリリース」という驚きは、まだほんの序章でしかなかったのです。

 その発売から4年後の令和6年、『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』が電撃的に発表されました。タイトルからも察しがつく通り、本作は移植やリメイクではなく、シリーズの完全新作。『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』はタイトルも一部異なる番外編的な作品だったため、本シリーズの完全新作はとなると、1989年発売の『ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女』以来なので、実に35年ぶりとなります。

 ファミコン時代の名作がリメイクされるケースは、ファミコンソフトの総数から考えると、ほんのごく一部です。そのため、リメイク版の登場だけでも、ファンが歓喜する十分な理由になります。

 しかし『ファミコン探偵倶楽部』はリメイクだけではなく、完全新作まで実現させました。発売日も確定しており、2024年8月29日にリリースを迎えます。35年ぶりの完全復活は、まさに驚異的な展開です。



原点となるファミコン版『ドラクエIII』も、昭和63年(1988年)に発売された。(C)1988 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

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ファミコン時代の名作が、「昭和99年」にリメイクで復活!

『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』が、37年の時を経てリメイク

 堀井雄二氏といえば、多くの人が「ドラゴンクエスト」シリーズを連想するでしょう。いま現在も、「ドラクエ」最新作の開発にあたっており、続報を待ち望んでいる人が少なくありません。

 しかし、堀井氏が開発に携わったゲームは、「ドラクエ」だけに限りません。PCが「マイコン」と呼ばれていた1980年代に3本のアドベンチャーゲームを手がけており、そのうち『ポートピア連続殺人事件』と『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』がファミコンにも向けて登場しました。

 ファミコン版の『ポートピア連続殺人事件』は昭和60年(1985年)に、『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』は昭和62年(1987年)に発売されており、この2作品も昭和時代を代表する名作アドベンチャーとなりました。

 2作品とも平成に入ると大きな動きはなく、携帯電話などでも遊べる施策が行われた程度です。しかし、時代が令和に移ると状況は大きく変わります。まず『ポートピア連続殺人事件』は、自然言語処理を目指したPCゲーム『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』として生まれ変わり、令和5年(2023年)にデビューを果たしました。

 自然言語とは、我々が日常的に使っている言語を指すものです。誰かと会話するようなメッセージを入力することで、メッセージの内容をゲーム側のAIが理解し、返答の文章を自動的に生成して出力する──この自然言語処理が実現すれば、「推理したのに、それを伝える方法が分からない」というアドベンチャーゲームにありがちなもどかしさから解放されることでしょう。

 ただし、現在配信されている『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』は、AIが非倫理的な発言を行う可能性があるとし、自然言語処理の機能は削除されています。目玉ともいうべき機能が備わっていないのは残念ですが、タイトルに「Tech Preview」とありますし、価格も無料なので、実験的な配信なのでしょう。

『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』の展開は明確で分かりやすく、スイッチおよびPC向けのリメイク版が決定し、現在開発が進んでいます。グラフィックを一新し、フルボイスにも対応するほか、2024年が舞台となる新規シナリオも追加されるとのこと。リメイクながら、まったく新しい物語との出会いも待っています。

 リメイク版のタイトルは『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~』で、発売は2024年9月12日です。『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の登場からわずか2週間ほどで、リメイク版『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』が後に続く形となります。

不朽の名作『ドラクエIII』が、新たな表現で令和に再誕

 紹介する最後の1本は、先ほど軽く触れた「ドラクエ」シリーズの新展開です。「ドラクエ」のナンバリング作品は、ファミコン時代だけでも4作品が生み出され、当時のRPGを代表する人気作として活躍しました。

 そのうちの1作目から3作目まで、いわゆる「ロト三部作」と呼ばれる3本は、いずれも昭和時代に発売されています。1作目はRPGというジャンル自体を日本国内に広く知らしめ、2作目ではパーティを組む冒険とバトルを提供するなど、当時のユーザーたちにRPGの面白さを丁寧に伝えました。

 そして3作目にあたる『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(1988年発売)では、主人公である勇者のみ外せませんが、残った3枠のパーティ編成は自由に行えるようになりました。戦士、僧侶、魔法使いといったオーソドックスなものから、全員戦士といった肉弾派な構成まで、パーティ編成はプレイヤーの思うがまま。その自由度に、多くのプレイヤーが魅せられました。

 ロト三部作の完結を飾ると共に、RPGの面白さを凝縮させた『ドラクエ3』は、本シリーズのなかでも指折りの名作と称えられることが多く、SNSではいまもたびたび話題に上がるほど。パーティに編成を変え、何度も世界を救ったプレイヤーも続出しました。

 その人気ぶりから平成時代にはリメイク版も作られ、スーパーファミコンやゲームボーイカラー向けにリリースされました。また、ロト三部作のファミコン版やスーパーファミコン版をまとめたものがWii向けにリリースされたほか、携帯電話版やスマホ版も登場し、世代ごとに認知度を広めていきます。

 しかし『ドラクエ3』そのものの動きとしては、あまり大きなものはなく、ファンにとっては物足りない日々が長く続きました。どれだけ根強い支持があるとはいえ、昭和時代の作品なので、新展開がなくても仕方がないのかもしれない……そんな考えも過ぎる2021年、「ドラクエ」35周年を記念する番組内で、『ドラクエ3』の新たなリメイク作が発表され、たちまち注目を集めます。

 今回のリメイクでは、ドット絵と3DCGを組み合わせた「HD-2D」というグラフィック表現が採用され、過去作との区別のため「HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』」とも呼ばれています。

 HD-2Dの恩恵を受け、奥行きに広がりが加わって臨場感が高まるなど、見た目の進化は一目瞭然です。また、戦闘中に「とくぎ」が使えるようになったほか、バトルスピードや難易度が変更できるようになるなど、プレイ感にも変化が訪れそうで期待が高まります。そんなHD-2D版『ドラクエ3』が登場する2024年11月14日が、いまから待ち遠しいばかりです。

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 1作目が昭和63年(1988年)に発売された『ファミコン探偵倶楽部』の完全新作が8月29日に、昭和62年(1987年)にファミコン版が出た『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』のリメイク版は9月12日に、それぞれリリースされる予定です。

 そして、昭和63年(1988年)発売の『ドラクエ3』はHD-2Dでリメイクされ、11月14日に新たな姿で蘇ります。いずれも昭和時代に足跡を残した名作が、2024年下半期に集中して登場する展開はまさに驚きのひと言。いまは間違いなく令和ですが、「昭和か?」と錯覚するのも無理のない話でしょう。

 この「昭和99年」の下半期に、昭和で令和な新作たちをたっぷりお楽しみください。