「ドラベ症候群」という持病を持つ7歳の長女が、深夜に発作を起こしました。救急車を呼んだ母は、到着までの短い間に急いで入院の準備を整え、次女たちの支度をし……。難病の子供を持つ親の思いを描いた創作マンガ「我が家と救急搬送」は、そのリアルな描写が話題になっています。作者の剥がれ鱗さんにお話を聞きました。
マンガ「我が家と救急搬送」のカット(剥がれ鱗さん提供)
【マンガ本編】長女が難病「ドラベ症候群」の発作を起こし、深夜に救急搬送 3人の子を1人で世話する母の苦労が凄絶!
「ドラベ症候群」の持病を持つ娘が深夜に発作を…!
難病の子供とその家族を描いた創作マンガ「我が家と救急搬送」が、Instagramで前後編合わせて約700のいいねを集めて話題となっています。
幼い3人の娘を持つ母。ある日の深夜、「ドラベ症候群」という持病がある7歳の長女が、発作を起こしました。父親は単身赴任中のため、救急搬送の準備はすべて母ひとりでやらなければならず……。日本てんかん学会で発表されたリアルな描写のマンガに、医療関係者や同じ難病の子供を持つ親から、驚きや共感の声があがっています。
このマンガを描いたのは、自身も「ドラベ症候群」のひとり娘を育てている、剥がれ鱗さんです。Instagramでエッセイマンガを発表するほか、Webサイト「kodomoe web」(白泉社)にて、「少し大変で、すっごく幸せ~ドラべ症候群の娘と心臓に毛の生えた母~」を連載中です。
注)ドラベ症候群:多くの場合1歳までに最初のけいれん性発作が起こり、その後も繰り返す小児の難治性てんかん。日本全国に3000人程度の患者がいると見積もられている。
ーーこのマンガを制作した経緯を教えて下さい。
毎年、医療従事者を対象とした「てんかん学会」があるのですが、「ドラべ症候群患者家族会」はそこで専用ブースを設けさせていただいています。会の方から、「マンガという分かりやすい媒体を使って、緊急薬に対する家族の気持ちを医療従事者の方に知ってもらいたい」と依頼を受け、このマンガを作成することになりました。
このエピソードは、家族会の方の体験をベースにはしていますが、フィクションです。
ーードラベ症候群の場合、発熱などで重症化する傾向があるのでしょうか?
発熱をはじめ、お風呂、夏の外気温、冬は暖房などで熱がこもるなど、体温が上がることが発作のトリガーのひとつになります。そのほかにも光、視界に入る模様や色彩、興奮、疲れなども発作の要因になります。
私の娘が小さな頃は、絵本、TV、木漏れ日でも発作を起こしていました。
ーー難病とされる「ドラべ症候群」ですが、この病気は救急隊なら知っているものなのでしょうか?
患者数の少ない病気なので、知らない方も多いです。救急車で搬送されることも多い病気なので、前もって管轄の消防署に、病気のことを説明しに行くご家族もある、と聞きました。
わが家の場合は、離婚を機に病院のすぐそばに引越したこともあって、ここ3年ほどは救急車での搬送はありませんが、ひんぱんに搬送されていた頃は顔なじみの隊員さんなどもできて、「分かってもらえている」という安心感がありました。「ドラベ症候群のことを勉強しますね」と声をかけていただけて、どれだけありがたかったか。
救急隊の方だけでなく、この病気を知らない医療従事者の方に、少しでも周知されるようになればいいなという気持ちで、Instagramでマンガやイラストを描きはじめました。
ーーこの作品で、どのようなことを伝えたいですか?
難病の子供を持つ家族には何通りもの形があり、わが家は母ひとり子ひとりですが、このマンガのようにきょうだいがいるご家庭もあります。また、同居家族だからこそ、核家族だからこそ、家族の形によって、人からは見えない事情や搬送時の大変さがあると思います。「こんな病気もあるんだ」「こんな子もいるんだな」と、知ってもらえるとうれしいです。
ただ、発作時に家庭で投与できる薬ができて、選択肢が増えました。新しいレスキュー薬で、少しでもみんなの生活が過ごしやすいものになればと願います。
ーー難病の子供とその保護者たちに対して、「こういう支援があるとうれしい」と思うことはありますか?
子供が小さい頃は、親子で社会からの孤立を感じていました。発作のことを考えると、本当に行ける場所がないんですよね。医療ケアの必要な子供を持つご家族は、それこそ外に出るだけでもハードルがあるのでは。医療的にサポート体制が必要な障害児や病児に向けた、気軽に出向ける児童館みたいな場所があったら、あの頃もう少し笑顔で過ごせたりしたのかな、と思います。
常に緊張感のある生活ですが、だからこそ子供と過ごすなかで、当たり前の幸せを感じる時間があるといいですね。