山下美夢有のスイングを石井忍が解説!「振り遅れと無縁のスイング」

パリ五輪のゴルフ競技には、日本代表4選手が出場。その選手たちの情報や最新のゴルフ理論に精通した石井忍がスイング解説。

このコーナーを読んで、ワンランク上の目線で観戦を楽しもう。今回は山下美夢有プロのスイングを解説。

体とクラブ、運動量も同調性している「大当たり確定」スイング

山下選手は、いい意味で「特徴がないのが最大の特徴」。アマチュアがお手本にしやすいスイングともいえます。クセがなくて教科書どおり。体の回転に対して腕がバラバラに動かない。とくにバックスイングからダウンスイングにかけての胸板と腕とクラブの同調と運動量が、完璧にそろっているので振り遅れと無縁のスイングです。

彼女自身もこれが自分のスイングの重要ポイントだと思っているはずで、トーナメント会場のドライビングレンジで、右ワキに物を挟んで打っている姿を見かけます。ただ、右ワキを締めることは簡単そうに思えますが、山下選手のようにトップで締めつつ右ヒジを下に向けると(7)、その動きや形を作るためにほかに不具合が起こる「代償動作」というものが発生しやすい。右ヒジは下を向けているが、左サイドが伸び上がって前傾が起き上がってしまうのがその代表例ですが、やはり国内女子ツアー2年連続年間女王は、素晴らしいスイングをしているということですね。

トップ以降に目を向けると、切り返し直後、すぐにフェースがボールを向く(9)「大当たり確定」のダウンスイング。アドレス時と比較するとバイザーのツバの向きはボールの右側を向いていて、球をきちんとつかまえられる要素が見られます。インパクトに向かっては「底屈」(足首の関節を足の裏の方向に折り曲げること)によって右足で地面をしっかりと蹴る(9〜12)、アクセルを踏むよう加速していくハイレベルのドローヒッターです。

山下選手はゴルフ競技に出場する選手のなかで、もっとも小柄かもしれません。体格的に飛距離面では不利だと思われがちですが、アイアンだけでなくバイブリッドも得意で、距離が160から170ヤードあってもウエッジで打ったかのようにピンに絡めてくる。その彼女の武器があれば、ほかの選手にまったく劣るとは思いません。

いかがでしたか? 国内女子ツアー通算11勝の山下選手の活躍に期待しましょう。

山下美夢有

●やました・みゆう / 2001年生まれ、大阪府出身。150cm。国内女子ツアー 、22、23年年間女王。同ツアー通算11勝。全米女子プロで2位に入りランキングを上げ、オリンピックの出場権を獲得。加賀電子所属。

解説=石井忍

●いしい・しのぶ / 1974年生まれ、千葉県出身。ツアープロからコーチに転身し、エースゴルフクラブを主宰。プロやプロの卵の指導のほか、国内外のトーナメント解説者としても活躍中で、国内外の最新のツアー情報を熟知している。

写真 = 田辺 “JJ” 安啓 、ゲーリー小林