8月6日に行なわれたセルビア代表とのパリオリンピック準々決勝。オーストラリア代表はパティ・ミルズが前半だけで20得点を奪うなど序盤からショットがよく決まり、一時は24点もの大量リードを手にした。
ところが後半、セルビアが徐々に巻き返して逆転に成功。オーストラリアも2点を追いかける第4クォーター残り9秒からミルズがタフショットを捻じ込み、準決勝進出をかけた大一番は延長戦へ突入する。
そのラスト5分間で本領を発揮したのがニコラ・ヨキッチ。残り1分半を切って1点を追う展開で、スティールからフックショットを沈めて逆転に導くと、残り25秒にもダメ押しとなるターンアラウンドジャンパーをヒット。最後はボグダン・ボグダノビッチがフリースロー2本を成功させて95-90とし、セルビアが大逆転勝利を収めた。
同点8度、リードチェンジ10回の大激戦のなか、鬼気迫る形相でオーストラリアを牽引したミルズは、ゲームハイの26得点に3リバウンド、2スティールをマーク。さらにジョシュ・ギディーが25得点、5リバウンド、4アシスト、ジャック・マクベイが13得点、ダンテ・エクサムが12得点、5アシストと続いた。
それでも勝利にはあと一歩届かず、前回の東京オリンピック銅メダリストは、金メダルを目指して臨んだパリ五輪をベスト8で終えることに。『ESPN Australia』によると、ブライアン・ゴージャンHC(ヘッドコーチ)は退任。そして長年オーストラリアを引っ張ってきたミルズも代表から引退する見込みと報じられている。
35歳のベテランガードは、2008年の北京オリンピックから5大会連続で“グリーン&ゴールド”のユニフォームを身にまとい、パリ五輪でもチーム最長の平均30.9分コートに立ち、16.5点、2.3リバウンド、1.0アシスト、1.5スティールに3ポイント成功率40.9%(平均2.3本成功)という成績を残した。
「僕らはこの旅において、どの瞬間も楽しんできた。順風満帆にはいかなかったけど、一丸になってやり切った。これらは決して当たり前に起こることじゃない」
セルビア戦を終えてそう口にしたミルズは、2007年のFIBAオセアニア・チャンピオンシップ以降、約17年間にわたって続けてきた代表活動を次のように振り返る。
「良い時も悪い時もあったし、浮き沈みも経験してきた。嬉し涙や悔し涙も流してきた。このチームの選手たちと分かち合うことができ、本当に信じられない旅になった」
“ブーマーズ”を世界屈指の強豪へと引き上げた最大の功労者と、第1次政権(2001~08年)、第2次政権(2020~24年)と合わせて計11年間指揮を執ってきたゴージャンHCが抜けるとなれば、オーストラリアは新たな時代を迎えることとなる。
今後は21歳のギディーらを中心に世代交代を図っていくことが予想されるが、ミルズがコート内外で残してきた数多くのレガシーは、これから先もずっと人々の記憶に残り続けるに違いない。
文●秋山裕之(フリーライター)