パリ五輪テニス競技の男子シングルスでは、四大大会最多の24度の優勝を誇るノバク・ジョコビッチ(セルビア/世界ランク2位)が決勝で21歳の若きヒーロー、カルロス・アルカラス(スペイン/同3位)を破り、悲願の金メダルを獲得。同時に男女を通じて史上5人目となる生涯ゴールデンスラム(キャリアで全ての四大大会と五輪を制すこと)の偉業を達成した。
ジョコビッチとアルカラスの決勝は終始凄まじい打ち合いが繰り広げられ、会場を熱狂の渦に巻き込んだ。7月のウインブルドン決勝ではアルカラスに完敗したジョコビッチだったが、その時とは別人のようなプレーを披露。抜群のコートカバーリングで相手に食らいつき、2度のタイブレークを制して表彰台の真ん中に立った。
今季のベストマッチとの呼び声も高いこの試合には、6月に新No.1となった22歳のヤニック・シナー(イタリア)も感銘を受けたようだ。単複で出場予定だったパリ五輪を扁桃炎で欠場したシナーは、今週ディフェンディングチャンピオンとして出場するマスターズ1000大会「ナショナル・バンク・オープン」(8月6日~12日/カナダ・モントリオール/ハード)のメディアデーで次のように称賛の言葉を口にした。
「非常にハイレベルな試合だった。誰もがそう思っているだろう。現時点で世界最高の選手2人が対戦すると、特別なプレーが生まれる。だからあのような試合を見られてうれしかったし、誰もが本当に楽しんでいたと思う。あんなレベルの試合は毎日見られるわけではないから、素晴らしかった」
またこれまで唯一手が届かなかった五輪の金メダルをようやく手にしたジョコビッチが、勝利後に身体を震わせながら号泣したことについて問われたシナーは、喜びを包み隠さず表現したジョコビッチと、悔し涙を流したアルカラスの心情を汲み取りつつこう答えた。
「彼(ジョコビッチ)があのような喜び方をしたことは理解できる。でも誰よりもその意味を理解しているのは彼自身だろう。彼は金メダルを取るために懸命に努力した。それは彼が成し遂げなければならなかった最後の課題で、彼自身も心の中でそれを理解していたと思う。彼はこれまで銅メダルや4位があって、惜しいところまで来ていた。だから今回は彼の年だったのだと思う。金メダルが彼にとってどれだけ意味のあることかがわかり、とても素敵な光景だった」
「一方で試合後のカルロス(アルカラス)の反応は、同じように見えて(ジョコビッチとは)全く逆の反応だ。我々は成功のために努力しているからね。もちろん、ノバクにも今後何年も期待が寄せられる。あんなシーンを見られてとてもうれしかった」
世界のトップを競うジョコビッチとアルカラスの壮絶なバトルに、シナーも大きな刺激を受けたことだろう。ぜひともシナーにはパリ五輪でプレーできなかった悔しさをモントリオールのコートでぶつけてほしい。
文●中村光佑
【PHOTO】男子シングルス金メダルのジョコビッチはじめパリオリンピックのテニス競技のメダリストたち
【画像】ジョコビッチはじめ、パリオリンピック・パラリンピックで躍動した男子選手の厳選ショット!
【関連記事】パリ五輪/ジョコビッチが悲願の金メダル獲得で生涯ゴールデンスラム達成!「心、魂、身体、家族、全てを捧げた」<SMASH>