ビッグバンは通過点に過ぎない

ベントー氏は、因果集合理論が宇宙の最初の瞬間をどのように表現するか、インペリアル・カレッジ・ロンドンのスタブ・ザレル氏と共同で研究を勧めました。

従来の因果集合理論では、因果集合は無から生じて現在の宇宙まで成長したとされています。

しかし、彼らは、そもそも因果集合に始まりが必要かどうかということを検討しました。

すると、彼らの研究では、因果集合は過去に向かって無限に続き、常に前に何かがある状態となり、ビッグバンという始まりは存在しないことが示されたのです。

彼らの理論によれば、私たちがビッグバンと認識しているものは、この常に存在する因果集合の進化における特定の瞬間に過ぎず、真の始まりではなかった可能性があるとのこと。


ビッグバンは進化の通過点に過ぎず、宇宙の過去は無限に続いている可能性がある / Credit:NASA,ナゾロジー編集部

ただ、この理論はまだ少数の物理学者が注目する理論でしかなく、論文も査読付き科学雑誌へは掲載されていません。

宇宙の過去が無限にあるということが、物理的に何を意味しているのかも、まだよくわかりません。

とはいえ、「宇宙に始まりがない」と言うことは、少なくとも数学的には可能なことなのです。

※この記事は2021年10月に公開したものを再掲載しています。

参考文献

The Universe May Have Never Begun, Physicists Say
https://www.sciencealert.com/the-universe-may-have-never-begun-physicists-say

時間と空間の起源
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v10/n11/%E6%99%82%E9%96%93%E3%81%A8%E7%A9%BA%E9%96%93%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90/48359

元論文

If time had no beginning
https://arxiv.org/abs/2109.11953

ライター

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部