現地8月7日、パリ五輪のレスリング女子50キロ級決勝が行なわれ、金メダルにはアメリカのサラ・ヒルデブラントが輝いた。日本の須﨑優衣は3位決定戦で果敢なタックルをかませる圧倒的な強さで10-0の完勝。2大会連続の表彰台を確保する銅メダルを獲得した。
一方で、決勝の舞台に立つはずだったインドのヒロインの話題は尽きない。日本の須﨑から大金星を挙げたビネシュ・ビネシュである。
オリンピック3度目の出場となった29歳は初戦で須﨑と対戦し、2点ビハインドの劣勢からラスト20秒で猛烈な圧をかけ、残り10秒でバックをとるビッグポイントを獲得。94連勝中と完全無欠の絶対女王から大逆転勝利の番狂わせを起こした。勢いそのままに決勝まで勝ち進んだのだが、決勝を前にした計量で「体重超過」が判明する。およそ100グラムのオーバーで、まさかの失格を言い渡された。
インドの女性レスラー史上初めて五輪の決勝に進出した彼女の失格処分は母国メディアも衝撃を受け、悲嘆に暮れている。インドの英語ニュースチャンネル『Times Now』の電子版は金メダルのチャンスを逃したビネシュが悲痛な思いをした後、最初に発した言葉が明るみになったと報じている。
母国の報道によると、彼女は準決勝後に水分補給などで体重が増加してしまい、その後はハードなトレーニングやサウナ、さらには血を抜くなどあらゆる手段を尽くしたものの、50キロを下回ることはできなかった。計量失敗を知るやその場で倒れて失神し、過度の脱水状態で病院へ運ばれたという。入院した彼女を見舞ったコーチ関係者は「起こってしまったことは試合の一部であり、メダルを逃したのは不運だった」と明かし、ビネシュの失格はインドのレスリング選手団に動揺を与えたという。
「レスリング選手団に衝撃が走りました。ニュースが報道された後、選手たちはかなり落ち込んでいました。私たちはビネシュに会い、慰めようとしました。彼女はとても勇敢でした。ベッドの上で彼女は『メダルを逃したのは残念でしたが、それも競技の一部だ』と言いました」
同メディアは「ビネシュはパリ五輪で素晴らしい成績を残した。前回女王のユイ・スサキを破り、今シーズン最大の番狂わせを起こした。決勝に進出してインドに4つ目のメダルをもたらすことも確実だった」と言及し、「そのため、今回の失格は彼女とインド国民全体にとって大きな痛手だ」と落胆を隠せなかった。
その後、ビネシュは自身のX(旧ツイッター)を更新。「レスリングが勝ち、私は負けてしまいました。ごめんなさい。私の勇気はすっかり折れてしまいました。もうこれ以上の力はありません」と綴り、現役引退を表明。決死の覚悟で臨んだ3度目の五輪は、何とも残酷な結末となり、レスリング人生に別れを告げた。
構成●THE DIGEST編集部
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