筋トレと有酸素運動を同時にしても筋肉は増える

有酸素運動をすると筋トレを頑張っても筋肉が増えなかったり、落ちたりすることを懸念している人に対して一定の答えを与える研究としては、2022年にドイツ・ケルン体育大学のシューマン教授らの研究グループが発表したメタ分析があります。

結果を見ると、389人(筋トレのみを行った188人と、筋トレと有酸素運動を行った201人)のデータを分析したところ、有酸素運動をしても筋トレによる筋肥大効果(筋肉が大きくなる効果)が失われないことが明らかになっています。

また、興味深いことに、この結果は、トレーニングの頻度やトレーニング歴(初心者、経験者)、トレーニングのタイミング(同じ日に実施するのか、別の日に実施するのか)別にみても変わりませんでした。

つまり、筋トレ愛好家であっても、有酸素運動をすると筋肉が増えなかったり、落ちたりすることを心配する必要はないのです。


筋トレ愛好家は筋肉が落ちる心配をせずに有酸素運動を楽しめる / Credit: Canva

また別の実験結果では、参加者が体重を維持できる十分なカロリーを摂取しつつ有酸素運動を行った結果、有酸素運動で筋肉のサイズが増えたという報告もあります。

そのため有酸素運動だけでも筋肉が落ち続けてしまうという恐れはないようです。

もちろん、極端なカロリー制限と大量の有酸素運動を組み合わせ、運動で消費したエネルギーを補給しないという極端なケースを取った場合は、有酸素運動によって筋肉が減る可能性はあるでしょう。

しかし、そういった特殊な例を除けば、有酸素運動で筋肉が落ちるとか、有酸素運動をすると筋トレをしても筋肉が増えないことを恐れる必要はないのです。

最初に述べたとおり、有酸素運動は持久力を高めることができる上、健康効果も期待できるエクササイズです。

実際、世界保健機関(WHO)も週2回の筋トレとは別に、週150~300分の有酸素運動(強度が高い場合には、週75~150分でも可)を最低限取り入れることを推奨しています。

ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミングなど、有酸素運動を取り入れることで、誰もが筋肉が落ちる恐れを抱く必要なく、体力の向上や理想の体を目指すことができるのです。

参考文献

A New Study Says Aerobic Exercise Can Help You Maintain Muscle
https://www.msn.com/en-us/health/other/a-new-study-says-aerobic-exercise-can-help-you-maintain-muscle/ar-BB1n09gE

WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour
https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128

元論文

Does Aerobic Exercise Increase Skeletal Muscle Mass in Female and Male Adults?
https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000003375

Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis
https://doi.org/10.1007/s40279-021-01587-7

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。