現在行なわれている男子テニスツアーのマスターズ1000大会「ナショナルバンク・オープン」(8月6日~12日/カナダ・モントリオール/ハードコート)は現地8日にシングルス2回戦が行なわれ、度重なるケガからの完全復活を目指す元世界ランク4位の錦織圭(現576位)が登場。第8シードのステファノス・チチパス(ギリシャ/同11位)を6-4、6-4のストレートで破り、同大会8年ぶり4度目のベスト16進出を決めた。
まさに完全復活を彷彿とさせるハイレベルなプレーだった。
復帰後最も高いランキングの選手との一戦となったこの試合、錦織は過去1勝1敗と互角のチチパスを相手にアグレッシブな攻撃でペースをつかむと、第3ゲームでは正確なリターンから形を作ってブレークに成功。以降もストローク戦では精度の高いフォアハンドでチチパスを左右に揺さぶりながら主導権を握り、第5ゲームで2つ目のブレークを奪って一気にリードを広げる。
サービング・フォー・ザ・セットとなった第8ゲームでも錦織は1ポイント目を幸先よく奪い、そのまますんなりセットを先取すると思われた。
しかし2ポイント目が始まる直前、自身の不甲斐ないプレーに苛立ちを見せていたチチパスがボックス席にいたコーチの父親と口論となり、主審がリターンポジションにつかなかったチチパスにタイムバイオレーション(遅延行為による反則)を宣告する。これでリズムを崩したのか、錦織はミスを連発してブレークを1つ献上。直後の第9ゲームもラブゲームでキープされてしまう。
2度目のサービング・フォー・ザ・セットとなった第10ゲームもミスを重ねて15-40とピンチを招いた錦織。それでもここをフォアの3球目攻撃で凌いでデュースに持ち込むと、次のポイントでラリー戦を制してセットポイントを取得。これを1回で取り切り6-4で第1セットを先取した。
第2セットに入っても錦織は得意のリターンが冴えわたり、第3ゲームでブレークを奪取。フォアのクオリティが落ちなかったことに加え、スピードを落としたサービスで幾度となくチチパスのリターンミスを誘うことにも成功し、相手に流れを渡さない。
そのままキープを続けて迎えた第10ゲームでは自身のミスからポイントを先行されるも相手のリターンミスと代名詞の“エアケイ”でマッチポイントに到達。最後はチチパスのバックハンドがネットに掛かり、1時間18分で勝利を収めた。
四大大会に次ぐマスターズでの16強入りは2021年5月のイタリア国際(イタリア・ローマ/クレー)以来約3年3カ月ぶり。またトップ20からの勝利は当時世界7位だったアンドレイ・ルブレフ(ロシア/現8位)に勝利した同21年の東京五輪1回戦以来約3年ぶりのことだ。
試合後のオンコートインタビューで日本の大エースはプレー内容を振り返りつつ、次のように喜びを語った。
「(僕にとっては)とても意味のある勝利。調子はいいし、再び軌道に乗ったと感じている。今日のプレーにも本当に満足しているよ。ステフ(チチパス)に勝つのは簡単ではないから、素晴らしい勝利だと思う。今日はアグレッシブにプレーできたし、ミスもあまりなかった。1回戦よりもずっと良かった」
ベスト8入りを懸け、3回戦ではヌーノ・ボルヘス(ポルトガル/43位)と対戦する錦織。次戦もどんなプレーを見せてくれるのか注目だ。
文●中村光佑
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