ジオン公国軍は将帥もわりとMSやMAに搭乗しており、なかにはシャアのような「専用機」を持つ人物も見られます。『機動戦士ガンダム』本編では描かれなかった、そうした将帥やエース専用の「ザク」を見ていきましょう。
やはり3機そろえたい。「RG 1/144 MS-06R-1A 黒い三連星専用ザクII」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
【画像】見た目だけで分かればザク博士? こちらがバリエーション豊富なザクの各専用機です(8枚)
過去の専用機はザクばっかり?
TVアニメ『機動戦士ガンダム』の魅力といえば、やはり「地球連邦軍」や「ジオン軍」によるさまざまな「モビルスーツ(MS)」は外せないでしょう。特にジオン軍は宇宙空間や陸、水中などのシチュエーションに合わせた機体に加え、「シャア専用機」に代表される「エース専用機」もあるため、実に多種のMSが登場しました。
そして、1980年から発売が始まった「ガンプラ」は、そういったMSたちの魅力をさらに大きなものにしてくれました。さらに、プラモデルや雑誌、資料集などで展開された企画「モビルスーツバリエーション(MSV)」により、本編には登場しないMSが多数、世に送り出されます。MSVのそもそものきっかけは、ガンダムシリーズでメインのメカデザイナーを担当した大河原邦男さんの企画として、各種オリジナルザク(ザクバリエーション)のイラストが発表されたことだそうです。
アニメに出てこないMSが描かれるMSVには、本編のキャラが過去に乗っていたとされる機体も登場し、さらに、その機体の背景なども設定されました。『機動戦士ガンダム』付近の時代に限れば、特に将校やエースパイロット各人専用の「ザク」が多い印象です。
たとえば『機動戦士ガンダム』において、「ドム」のパイロットである「オルテガ」「ガイア」「マッシュ」の「黒い三連星」には、過去に搭乗した機体として「高機動型ザクII 黒い三連星専用機」が存在します。
1999年6月にガンプラとして発売された「MG 1/100 MS-06R ザクII(黒い三連星)」(BANDAI SPIRITS)の説明書には、U.C.0079年7月、サイド3付近に侵入してきた連邦軍の強行偵察艦隊に対して「ジェットストリーム・アタック」を仕掛け、発見からわずか1時間でマゼラン級戦艦1隻とセイバーフィッシュ編隊を殲滅(せんめつ)してみせた、との記述がありました。
さらに同年の9月、訓練をしていた黒い三連星の3人に出撃要請が下り、グラナダ宙域で作戦行動を展開していた連邦軍のパトロール艦隊と対峙し、艦艇2隻を沈めるなどの戦果を挙げたといいます。
なお、OVA『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、一年戦争最序盤の「ルウム戦役(ルウム会戦)」の時点で、黒い三連星が彼ら専用の高機動型ザクIIに搭乗しているさまが描かれています。
一方、ザビ家の一員でジオン公国軍の将帥を務めた「ドズル・ザビ」は、TVアニメ『機動戦士ガンダム』本編においてMSには搭乗しませんでした。彼が搭乗した「ビグ・ザム」は、ご存じのように「モビルアーマー」に分類される兵器です。
MSVシリーズには「ザクII ドズル・ザビ専用」という機体が存在します。文字通りドズル専用のザクIIで、巨漢であるドズルのためにコックピットの容積を拡大し、さらには、グリーンを基調とした全身に「エングレービング」という金色の華美な装飾が施されています。『MS図鑑 ザク』(双葉社)によれば、一年戦争初期、ドズルは戦場視察の名目で同機に搭乗したとのこと。その後、ソロモン防衛戦の際に格納庫で焼失したとされています。
本編では描かれていないものの、ガンプラとして発売されたうえに、アーケードカードゲーム『機動戦士ガンダム アーセナルベース』のカードとして登場したり、マンガ『機動戦士ガンダム MSV-R 宇宙世紀英雄伝説 虹霓のシン・マツナガ』(作画:虎哉孝征/メカニックデザイン:大河原邦男/原作:富野由悠季/原案:矢立肇/KADOKAWA)の作中でも描かれたりしています。
ガルマのパーソナルカラーが施された専用機。「HG 1/144 ザクII(ガルマ専用機)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
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「青い巨星」やエースたちが過去に搭乗していた専用機
ザビ家の末弟である「ガルマ・ザビ」にも、MSVシリーズで「ザクII ガルマ・ザビ専用機」というMSが存在します。ガルマのパーソナルカラーであるブラウン系の塗装が施され、頭部には「ブレード・アンテナ」がついているため、どことなくシャア専用ザクに似ているビジュアルをしています。
しかし、せっかく専用機として用意されたのにもかかわらず、当のガルマは早々に地球へ降りて、主に「ドップ戦闘機」などに搭乗していため、実戦で使用されることはほとんどなかったようです。ちなみに、同機はマンガ『機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』(作画:曽野由大/脚本:クラップス/原作:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)で見せ場が与えられています。
また以前、月刊誌「ガンダムエース」(KADOKAWA)では「MSV-R」という連載企画が展開されており、メカニックデザイナーの大河原さんによって生まれた新たなバリエーション機が発表されていました。そのなかには、OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場するジオン軍のエースパイロット「ノリス・パッカード」が過去に搭乗していた「ザクI ノリス・パッカード少佐機」というMSがあります。
ノリスといえば『第08MS小隊』で搭乗した「グフカスタム」のパイロットというイメージが強いでしょう。グフカスタムが愛機になる前の一年戦争開戦当初は、専用のザクIを駆り連邦軍の輸送艦隊を襲撃して、搭載物資を押収するという任務を遂行していました。紫を基調とした同機の手甲部にスパイクが装備されていることから、白兵戦を得意としていたことがうかがえます。
このほか、エースパイロットで外せない存在といえば、「グフ」を愛機とした「ランバ・ラル」でしょう。ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』には、彼がかつて搭乗していたという「ザクI ランバ・ラル専用機」が登場します。
2000年9月に発売された「MG 1/100 MS-05B ザクI(ランバ・ラル専用機)」(BANDAI SPIRITS)の説明書には、同機に搭乗したランバ・ラルの活躍ぶりがつづられています。それによるとU.C.0079年1月8日、サイド1の工業コロニーに立てこもって抗戦を続ける連邦の駐留軍に対し、ランバ・ラルは背後から襲撃する作戦を実施、その結果、見事に成功したうえにほぼ無傷でこれを制圧したとのことです。
同機はパーソナルカラーである青を基調とした色合いになっており、ご存じの通り、その後に愛機となるグフも似た色が塗装されています。ランバ・ラル機以外のグフも青いのは、彼のパーソナルカラーにあやかって塗装されたからだそうです。
このようにMSVシリーズを少し掘り下げるだけでも、本編の視聴だけでは知ることのできないMSの存在が次々と明らかになります。本編となるアニメシリーズや劇場版、MSVなども含めた場合、みなさんは、どのMSが印象に残っているでしょうか。