パリ・オリンピックでは日々、各競技で熱戦が繰り広げられる中で多くの興奮と感動が生まれているが、同時に競技場の内外で問題が噴出し、それに対する不満や批判が渦巻いている状況である。
【画像】史上初めて競技場外で行なわれたパリ五輪開会式の名場面を厳選ショットでお届け! 不可解な判定がしばしば物議を醸しているのはこれまでの多くの大会同様だが、さらに性別の公平性を巡る議論、性差別的な発言、スパイ行為、そして水質問題と、論争の対象は実に多様だ。大会は8月11日まで続くが、アメリカのニュース情報誌『Newsweek』は「パリの混乱:五輪を揺るがした7つの論争」と題した記事で、とりわけ大きな問題とされた出来事を選定している。
まず挙げられたのは、女子ボクシング66キロ級で決勝まで勝ち進んでいるイマネ・ケリフ(アルジェリア)の性別適格騒動。男性ホルモンの分泌量が多い特異体質を持つ彼女との対戦で、対戦相手のアンジェラ・カリーニ(イタリア)が「自分の身を守るため」という理由で棄権したことが大きな注目を集めることとなった。
昨年の世界選手権ではIBA(国際ボクシング連盟)が「XY染色体を有している」として出場権を剥奪したが、IOCはケリフ、そして同じ体質である台湾のリン・ユーティン(57キロ級)ともに「科学的な見地から出場は問題ない」と真逆の判断を下し、現在、両機関は対立状態となっている。
同メディアは、パリ五輪組織委員会のスポークスパーソンに取材を試み、「ケリフらが受けているハラスメントに対して強く非難する。それは到底受け入れられないものであり、我々が支持するオリンピズムの価値に反する」とのコメントを引き出したが、性別と競技の公平性のバランスという難しい問題を抱えており、今後も論争は続いていきそうだ。
続いてはテレビ解説者による性差別発言で、フランスのラジオ局『RMC』の解説者が女子テニス・ダブルスの一戦で、イタリアのサラ・エラーニについて「家事全般をこなす」と語ったことが「女性蔑視的なコメント」と批判されたが、スポーツ専門チャンネル『EUROSPORT』でも、水泳の女子100m自由形リレーの後、「化粧をするため、ぐずぐずしている」と発言した解説者が即座にその職を解かれている。
3つ目は、カナダ・サッカーのスパイ行為。男女代表チームで常習的に行なっていたことを認めており、罰金、関係者たちの停職処分に加えて、今大会に出場した女子代表はグループステージで勝点6剥奪のペナルティーを受けたが(それでも準々決勝進出)、男子代表についても「アメリカ、メキシコと共催の2026年ワールドカップに影響が及ぶ可能性がある」と同メディアは指摘した。
4つ目は、大会前から懸念されていた「汚染されたセーヌ川」。1世紀以上にわたって水泳が禁止されていたというこの川はトライアスロン等の競技の会場となり、15億ドル(約2205億円)を投じて浄化作業が行なわれ、パリ市長自らが泳いで水質良化をアピールしたが、後の検査で「アスリートが大腸菌やその他の細菌によって健康被害を受ける可能性が高い」との警告が出され、また選手からも不安の声が聞かれたものである。
そのセーヌ川で行なわれた開会式で物議を醸したのが、ドラァグクイーンやトランスジェンダーのモデルらによるレオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐」を連想させるパフォーマンスで、カソリックの総本山バチカンからも抗議の声明が出される事態となり、開会式を演出した舞台演出家のトマ・ジョリー氏は「『最後の晩餐』は私のインスピレーションの源ではない。作品の中には、誰かを侮辱したり、嘲笑したりする意図は一切ない」と弁解する羽目となった。
大会直前には、フランスの陸上短距離走者であるスンカンバ・シラが、イスラム教徒の女性が頭部や身体を覆うために使う「ヒジャブ」の着用を理由に開会式の出席を拒否されたことをSNSで明かし、後にフランスの五輪委員会は「我が国のオリンピアンは公務員に適用されるのと同じ原則に従うべきであり、それには国家と宗教の分離を維持するためのヒジャブ禁止が含まれる」と主張している。
そして最後は、イスラエルに対する観客からの反ユダヤ的な言動が挙げられた。男子サッカーのパラグアイ戦では、ガザ地区における紛争に関連するバナーが掲げられ、その中には「ジェノサイド・オリンピック」と書かれたものもあったという。また、イスラエルの国歌斉唱時にはブーイングがスタンドから浴びせられたことも確認されている。
『Newsweek』誌は記事の最後に、それでも「五輪は全体として非常にスムーズに進行している」と五輪組織委員会のスポークスパーソンが語ったことを紹介するとともに、パリ市民の大会運営に対する見方は圧倒的に肯定的なものが多く、フランス人の79%が大会の成功に楽観的な姿勢を示していると伝えた。
構成●THE DIGEST編集部
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