「パリ五輪」は佳境を迎えていますが、「テニス競技」はすでに終了し、テニス界は通常のツアー大会に戻っています。しかし、例年にはない大きな大会が1つ増えたわけですから、選手にとって負担もあります。今後のツアー大会にどう影響していくのでしょうか。
「パリ五輪テニス競技」は全仏オープンの会場であるクレーコートで行なわれました。例年ならばクレーシーズン後に芝のシーズン、そしてハードコートシーズンへと入っていきますが、「パリ五輪」に出場した選手は、芝シーズンの後に再度クレーに戻ることになりました。
芝の後にクレーに戻ること自体は問題ありません。ただし、クレーでは試合時間が長くなるため、フィジカル的なダメージが後になって出てくると思います。特に勝ち残った選手は試合数が多くなっていますし、トップ選手は出場が義務付けられている大会もあるため、ケガなどがない限り連戦になります。負荷がかかるトップ選手ほど、コンディションの維持に気を付ける必要があります。それでも、故障者が例年より多くなることは避けられないのではないでしょうか。
ただし、マイナス要素ばかりではありません。テニス競技は1988年ソウル五輪から公式種目になったため、私のファーストキャリアの時代は出場する選手としない選手がはっきりと分かれていました。出ないことを選んだ選手の理由は過密スケジュールになるからです。そして出場した選手もタイトなスケジュールになる上に、大きなプレッシャーになると感じていました。
今は五輪がスケジュールに入って来るのが当たり前の時代になりました。五輪出場に対する捉え方が変わり、ポイントが付かないとしても積極的に出場する選手が大半を占めています。五輪に出場して自国のプライドを持って戦える機会に他競技の選手と交流したり、大会を楽しんで刺激を得たいと考えているようです。開会式に出たり、会場を回ってSNSで発信したりと、楽しんでいる様子がうかがえます。そのため、試合数が多くなかった選手にとっては、五輪でリフレッシュしてハードコートシーズンに臨めると思います。
秋になるとシーズン終盤に向けてツアー離脱者が出るのは毎年のことです。今年は五輪が入った影響で、その傾向が強まるのではないでしょうか。過密スケジュールになった選手、リフレッシュできた選手、ツアー大会に出場を続けた選手で、シーズン終盤の戦い方が変わってくるかもしれません。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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