マンガの実写化にあたっては、人気キャラが消えてしまったり、新たなオリジナルキャラに差し変わったりすることもあります。制作の都合上仕方ないとはいえ、重要人物であれば話の展開に影響がないか心配になる人もいるでしょう。そんな、実写化で消えてしまった重要なキャラを振り返ります。



黒田カナが主人公となった『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス』(講談社)

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続きが実写化されるなら登場は必須なはず?

 人気マンガの実写化にあたり、キャラクターのキャストやビジュアルは、特に気になる人も多いでしょう。なかには、重要なキャラであるにもかかわらず、実写化で登場しなかったキャラも多々います。本記事では、そんな実写化で消えてしまったキャラを振り返りましょう。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』黒田カナ

 2021年夏に実写ドラマ『ハコヅメ ~たたかう!交番女子~』が放送され、好評を博した『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(著:泰三子)には、生活安全課で「くノ一捜査官」と呼ばれる女性警察官「黒田カナ」が登場しませんでした。

 25歳ながら背が低く童顔で高校生にも化けられるため、尾行、潜入にも適した優秀な捜査官で、先輩の藤聖子(演:戸田恵梨香)のことも「聖子ちゃん」と呼ぶ気の強さやツッコミの上手さ、また意外と「心の闇」が深い点も人気です。1話に原作のエピソードが複数盛り込まれているドラマは、カナが登場していた回もいくつか実写化されましたが、その役割は別のキャラに引き継がれています。

 藤の同期の桜しおり(演:徳永えり)を轢いて逃げた犯人を捜す後半のエピソードや、婦警キャラたちによる「女子会」の場面にカナがいないため、原作ファンの間では「カナがいたらもっと面白いのに」「物足りん」といった声が出ていました。

 カナが主役のシリアスなスピンオフ『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス』も高い評価を受けているため、「2期があるならそこからでいいから登場してほしい」という声も少なくありません。キャストは「そもそもの見た目が似ている」「コミカルな演技も闇深い演技もハマりそう」と、伊藤沙莉さんや岸井ゆきのさんが推されていますが、果たしてどうなるのでしょうか。

『進撃の巨人』リヴァイ

 巨人と人類の死闘を描いた、諫山創先生によるマンガ『進撃の巨人』を実写化した『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』2部作(2015年)では、新キャラの追加や既存キャラが消えたことが話題になりました。なかでも、主人公「エレン・イェーガー」(演:三浦春馬)の上司で調査兵団の兵士長「リヴァイ・アッカーマン」は、圧倒的な戦闘力やクールな魅力から絶大な人気を誇るキャラでありながら、実写映画には登場していません。

 その代わり、リヴァイと同じ「人類最強」の称号を持つ者として登場したのが、長谷川博己さんが演じる「シキシマ」です。しかし、戦闘中にリンゴをかじる謎の行動やエレンと「ミカサ・アッカーマン」(演:水原希子)との三角関係が描かれるなど、キャラクター性はリヴァイと大きく異なるものでした。

 また、シキシマは実は「巨人化」の力を持っており、映画のノベライズ版では彼がエレンの生き別れの兄、ハク・イェーガーであることも明かされています。どちらかといえば、リヴァイよりも原作のエレンの兄、ジーク・イェーガーに近いキャラだったかもしれません。

 映画評論家で本作の脚本を担当した町山智浩さんは2015年9月号の雑誌「映画秘宝」で、リヴァイが登場しなかった理由に関して語っています。

 作者の諌山先生や担当編集者の川窪慎太郎さんから原作通りにしなくていいと言われた町山さんは、日本で進撃の巨人を実写化するにあたって、「キャラ名をすべて完全に日本人らしい名前に変える」か「開き直って、全員原作通りのドイツ名のままでやる」か迷ったそうです。結果的には、キャラの名前はそのままで行くことを判断しますが、リヴァイに関しては「『ヴ』というアジアにない発音がある。アジア人なのになぜそんな名前なのか説明が必要になってくる」と削って、別のキャラを考えることになります。

 また、同じ「ヴ」の字があるエルヴィン・スミスや、日本人キャストにあてはめるには無理があると判断したベルトルト・フーバー、ライナー・ブラウンもカットされました。

 こういった理由が説明されたものの、そのほかに「リヴァイがあまりにも人気だから、実写化でキャストへの批判を生まないために出さなかったのでは?」という憶測も出る事態となっています。

『進撃の巨人』は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のアンディ・ムスキエティ監督によって、再度ハリウッドで実写化されることが発表されています。今度こそリヴァイは登場してくれるのでしょうか。



実写ならではの演出に原作ファンの評価も高い実写版ドラマNetflix『ONE PIECE』メインキービジュアル (C)尾田栄一郎/集英社

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実写から消えて原作の考察にも疑問が?

『東京卍リベンジャーズ』佐野エマ

 和久井健先生によるマンガ『東京卍リベンジャーズ』は、現代で死亡した元恋人を救うため、主人公の「花垣武道」が高校時代とのタイムリープを繰り返す物語です。本作に登場する「佐野エマ」は、武道が所属する「東京卍會」の総長「マイキー」こと「佐野万次郎」の妹でした。高校時代の武道と「橘日向」との恋のサポートや、副総長の「ドラケン」こと「龍宮寺堅」を一途に想う健気な姿も印象的な、サブヒロインのようなキャラです。

 エマの原作での初登場は、ドラケンを嫉妬させるために下着姿で武道に迫るシーンで、強烈なインパクトを残しています。そんな大胆な印象でありながら恋に不器用な彼女ですが、ドラケンと両想いであると伺える描写の数々に「距離感がもどかしい」「一途なエマちゃんかわいすぎるし、硬派なドラケンがカッコいい」などの声もあり、見どころのひとつとなっていました。

 エマの実写化での登場も期待されていましたが、実写化で公開された『東京リベンジャーズ』(2021年)、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(2023年)には、登場することはありませんでした。

 また、原作のエマは物語が進むと、彼女の身に起こる事件によって展開が大きく変わるという重要人物でもあります。そのため、「続きが実写化されるならエマちゃんの登場は必須だけど、今まで登場してないしどうなるんだろう」と心配する声もあがっていました。

 実写『東リべ』は『血のハロウィン編 -決戦-』で完結したことになっていますが、まだまだやってほしいというファンの声は少なくありません。もし今後の実写化が決まった場合、エマが不在のままであれば、どのように物語が進んでいくのか気になるところです。

『ONE PIECE』ガイモン、はっちゃん

 2023年より「Netflix」で配信された尾田栄一郎先生による大人気マンガ『ONE PIECE』の実写ドラマでも、いなくなってしまった重要キャラがいます。

 たとえば、原作22話で「珍獣島」に漂着した「麦わらの一味」が出会った、20年間宝箱にハマったままの男「ガイモン」の不在は話題となりました。彼は主人公の「モンキー・D・ルフィ」に仲間に誘われるものの、珍獣たちを守るため島に残ります。

 22話でガイモンが残した「『ワンピース(ひとつなぎの大秘宝)』はお前が見つけて世界を買っちまえ!!」というセリフは、「ワンピースが世界を買えるほどの宝だと知ってるのか?」と長年の考察の対象となっています。「まだ初期の22話でわざわざ1話使って出てくるってことは絶対重要キャラ」などと注目されるガイモンは、短い出番ながら2021年に開催された『ONE PIECE』の世界人気投票では60位にランクインしました。

 そんな人気かつ重要(?)なキャラのガイモンは、実写版ではエピソードごと削られてしまい、彼がキーマンであるという考察自体が、意外な形で揺らぎ始めることになります。実写ドラマには尾田先生がエグゼクティブ・プロデューサーとして、しっかり監修に入っているため、「尾田先生が削っていいって判断したってことはガイモンはそんな重要じゃないのか?」と動揺した人もいたようです。

 また、タコの魚人である「ハチ」こと「はっちゃん」は、実写版の「アーロンパーク編」にあたるエピソードで登場しませんでした。

 原作では「アーロン」率いる「魚人海賊団」の幹部として登場したハチは、「ロロノア・ゾロ」と交戦してあっさり敗退しており、この時点ではそれほど大きな存在感はありません。しかし、後に改心したハチは麦わらの一味の協力者となり、「海賊王の右腕」と呼ばれる「シルバーズ・レイリー」と引き合わせたり、麦わらの一味が不在の間に「サニー号」を守ったりする、重要人物となる存在です。

 登場しなかった理由に関しては、ハチには腕が6本あり六刀流で戦うため「キャラの再現が難しいのかな?」という声もあります。憎めないキャラクターのハチには愛着のあるファンも多く、物語にも影響を与えているため、どこかのタイミングで登場を期待したいところです。