アニメやマンガの「実写化」を成功させるのは、想像以上に難しいことです。媒体が違えば作品を魅力的に見せるための演出も変わってくるため、ある意味、仕方のないことなのかもしれません。ただなかには、前評判を覆すほど人気を獲得する実写化作品もありました。



続編を待ち望む声も多数! 画像はドラマ『ゆるキャン△ シーズン2』メインビジュアル (C)ドラマ『ゆるキャン△』製作委員会

【画像】「まんまなキャラ多数」「コスプレ感ない」 こちらが大評判となった実写化作品です(8枚)

キャスティング、細部の再現… ドラマ『ゆるキャン△』は何がスゴい?

 マンガやアニメ作品の実写化は、実に多くの困難がともないます。キャラクターのデザインをどう現実の役者に落とし込むのか、原作のセリフは実写のリアリティラインに耐えられるのか、限られた尺でどのようなエピソードを選ぶのか……。制作者の頭を悩ませる問題は尽きません。

 残念ながら評価が低くなってしまう実写化作品も多いのですが、なかには原作を上手に再現し、ファンから高い評価を獲得した作品もあります。

 例えば、2020年に実写ドラマ化された『ゆるキャン△』もそのひとつです。同作は女子高生たちのアウトドアを通して描かれるゆるやかな日常が、多くのファンから支持されました。

 TVアニメや劇場版アニメもクオリティが高く、その影響力はマンガ&アニメファンの間にちょっとしたアウトドアブームを巻き起こしたほどです。今年の春クールでは、ちょうどTVアニメのシーズン3が放送されています。

 そんな『ゆるキャン△』の実写化は、やはりハードルが高い印象があり、実際のところ前評判もあまり良くありませんでした。しかしいざドラマが始まると、再現度の高さに多くのファンが納得。余計な設定が追加されていたり、オリジナルキャラが活躍したりといったこともなく、かなり原作に忠実に作られていたのです。

 また舞台となるキャンプ場やアウトドア用品などの小道具、さらには原作に登場した車(なでしこの姉の車)のナンバープレートに至るまで可能な限り細かい部分も再現されており、ファンの間で大きな話題を呼びました。

 そして成功した最大の要因は、やはり再現度の高いキャスティングにあるでしょう。主人公のひとりである各務原なでしこ役の大原優乃さんをはじめ、志摩リン役の福原遥さん、大垣千明役の田辺桃子さんなどメインキャスト陣の功績は大きく、原作をそのまま再現するところ、実写ならではの表現に変えるところの取捨選択が非常に巧みだった印象です。

 ドラマ『ゆるキャン△』を制作したテレビ東京は、以前から『孤独のグルメ』や『きのう何食べた?』など、実写化作品が高く評価されています。どちらも『ゆるキャン△』と同じく、マンガならではの表現を過度に再現し過ぎず、それでも原作の本質的な魅力を汲み取って作られたドラマでした。



『銀魂2 掟は破るためにこそある』ポスタービジュアル (C)空知英秋/集英社 (C)2018 映画「銀魂2」製作委員会

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一周回って原作完全再現だった実写版『銀魂』

 実写化作品の難しさのひとつは、キャスト陣の衣装やビジュアルを3次元に再現すると、どうしても「コスプレ大会感」が出てしまうことです。テレ東のドラマは「あのキャラが現実にいたらこんな感じ!」といった雰囲気に落とし込めています。

 とはいえ「コスプレ大会」が全て悪いという訳でもありません。2017年に公開された実写映画『銀魂』は、むしろ「コスプレ大会っぽさ」もうまく使って面白い映画に仕上げていました。

 原作者の空知英秋先生も「ちょっと豪華なコスプレ大会位の温かい目で見守ってくれると幸いです」と紹介していたくらいなのですが、そうそうたるメンバーがコスプレをして全力でキャラを再現していることの面白さも込みで、一周回って「銀魂らしさ」を再現できていたと評判です。

「銀魂実写、コスプレの完成度が高すぎる」「コスプレ感はんぱないけど、銀魂の世界観は再現できてる」「俳優達がコスプレした本気の学芸会(誉め言葉)って感じで好き」「銀魂の実写はコスプレ大会こそが銀魂の魅力の一つにもなってんだなって、銀魂最強すぎんだろマジで」と、『銀魂』ならではの賛辞を受けていました。

 また、さまざまなバージョンが高い評価となった作品もあります。北条司先生の『シティーハンター』のパラレルワールド作品『エンジェル・ハート』は、2015年に実写ドラマ化されたのですが、こちらはキャスト陣のビジュアル面も含めて再現度が高く好評を博していました。

 特に冴羽リョウ役の上川隆也さんが、「完コピ」だと話題になっていたのです。なんと上川さんは原作のビジュアルに近づけるため、体脂肪率が10%を切るまで徹底的に肉体改造をしました。

 一方の原典『シティーハンター』に関しては、「アクション映画としては面白いけど原作とは全然違う」という意見が多い1993年のジャッキー・チェンさん主演の香港版が作られてから長い時を経て、「正解」ともいえる実写版が登場します。

 原作の大ファンを公言するフランス人のフィリップ・ラショー監督による『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)は、かなりの好評を博しました。舞台がフランスで冴羽リョウ役はフランス人の監督本人だったにもかかわらず、日本国内で「オリジナルストーリーなのにまじで原作にありそうな話」「身体もバキバキに作りこんで、マジで愛を感じる」「上品な下ネタ、アクションとコメディのバランスも再現度高い」「人種違うのに海坊主も槇村兄も異様に似てる」「ラストの止め絵も『GET WILD』流れるタイミングも完璧」と大絶賛されました。

 そして2024年4月25日(木)公開のNetflix映画『シティーハンター』も、「冴羽リョウを演じるために俳優になった」と語る鈴木亮平さんが主演を務め、これまで数々のキャラを再現してきた鈴木さんに期待が集まっていました。

 予告が公開されると「劇画っぽくて首が太くて肩幅広くてたくましいデザインだから、鈴木亮平のスタイルがめっちゃしっくり来てる」「銃の構えや撃ち方が原作の冴羽リョウまんま」「『かっこいい』と『おちゃらけ』をいい塩梅で持ち合わせてる演技が上手すぎ」「スマホやUber eatsが出てきてるが原作の世界観を壊すことなく馴染んでる」と、さっそく評判となり楽しみで待ちきれない人が多いようです。

 実写化作品が成功する秘訣はどこにあるのか……。ありきたりな帰結になってしまいますが、やはり制作側の原作愛や熱意といったものが、作品を輝かせるのかもしれません。