水星に住める?

月への有人着陸を果たした人類は、次は火星を目指しています。いずれは水星にも進出するのでしょうか?

人間は水星に住めるか?

結論から言ってしまうと住めません。

まず大きな難点として水星の気温の問題があります。水星は太陽に最も近い惑星のため、昼間の表面温度は400℃で夜は-200℃になります。人間はここまで大幅な温度変化に耐えられないでしょうし、そもそもこれは人間が生存できる温度の範囲を超えています。

また大気がほとんどないため、太陽からの有害な放射線をブロックすることができません。磁場によって荷電粒子は防げてもX線や紫外線などは遮蔽することができません。

それでも水星に住めるようにするには?

北極の永久影の中に基地を建設して、空気を生成することができればそこに拠点を築くことは可能かもしれません。

水があるので資源として有効に活用できます。飲み水としても使えますし、電気分解して酸素や水素を取り出すこともできます。酸素は生命維持に必要です。水素は燃料として使えるでしょう。

とはいえ生物の生存においては、非常に厳しい環境であることに違いありません。

まとめ

1日の方が1年より長い不思議な惑星「水星」。それはどんな時間感覚なんでしょうか? それは水星に住んでみないと分からないかもしれません。

SF的な妄想を膨らませるなら、遠い未来には水星極点の永久影に、南極基地のような研究目的の厳しい環境の拠点が作られるかもしれません。

水星は地球と同じように磁場をもつ惑星なので、水星の磁場の構造を解明することができれば惑星磁場の理解が大きく進むでしょう。太陽についても多くのことが分かるかもしれません。

宇宙の広大さに比べれば、水星は非常に地球の近くにある惑星ですが、地球より内側の軌道を回っていることや、太陽に近いなどの点から、非常に観測が難しく実際は非常に謎の多い惑星です。

水星についてはまだまだ分からないことだらけですが、今後の研究に期待しましょう。

参考文献

惑星のきほん
https://www.amazon.co.jp/dp/4416617496

惑星科学入門
https://www.amazon.co.jp/dp/406159222X

元論文

The Role of Giant Impacts in Planet Formation
https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/2312/2312.15018.pdf

ライター

浅山かつのり: 屋号:創造情報研究所。大学で物理学を専攻し、課外活動では天文研究会の会長を務めました。現在はITエンジニアとして働きながら、サイエンスライターとしても活動しています。歴史にも興味があり、史跡めぐりや歴史関係の本を読むのも好きです。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。