ゲームクリアまでの実時間を競い合うRTA(リアル・タイム・アタック)。「アイテム不使用」「ジャンプ禁止」など、いわゆる”縛りプレイ”でRTAを行う走者もいるなか、ゲーム内の操作ではなく、あえて自らの五感を縛る猛者も。目隠しで「ときめきメモリアル 〜forever with you〜」をプレイするRTA走者、Kazupoonさんを駆り立てるのは、エンターテイナーとしての“血”だった。
画面は見えないが、愛は見える
RTA(リアル・タイム・アタック)という遊び方がある。やり直しや一時停止も含めて、スタートからクリアまでの実時間を計測する。ただ、早くクリアする。それだけのために、RTAの達人たちは数千時間に及ぶ練習、数百台以上のゲーム機本体の厳選、果ては己の肉体に至るまで、持てるものすべてを本番一発勝負にぶつける。
そこにゲーム愛があるのは言わずもがなだが、RTA自体が好きで、高みに上り詰めたプレイヤーもいる。その一人がKazupoon氏だ。
――Kazupoonさんは画面を見ないでRTAを走るそうですね
Kazupoonさん(以下同) 僕のやっているRTAはPlayStation版『ときめきメモリアル 〜forever with you〜』の最難関攻略ヒロイン、藤崎詩織を目隠しで攻略するというものです。
ときメモは恋愛シミュレーションゲームで、3年間の高校生活を送りながら、自分のパラメーターやヒロインの好感度を上げたりし、卒業式の日に彼女から告白を受けるとゲームクリアとなります。
藤崎詩織はときメモ界隈でもラスボスと呼ばれるほど付き合うのが難しいヒロインなのですが、画面を一切見ず、音と記憶だけを頼りに最速でカップル成立を目指すのが本RTAの主旨です。
――最速クリアを目指すだけでも難しそうですが、さらに目隠しとなると、なにが大変ですか?
まず、画面が見えません。
――そうですよね
ですから、コマンドの配置からイベントの発生条件、タイミング、BGMや効果音の細かな違いまで全部覚える必要があります。とくに、BGMと効果音の組み合わせは、今、自分がいったい全体なにをやっているのかを判断する重要な手がかりになるので、しっかり暗記しました。
――組み合わせパターンはどれくらいあるのでしょうか?
ちゃんと数えたことはないですが、体感1000パターンくらいですかね。
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「敬老の日は『敵』」
――1時間弱の間、目隠しで操作するわけですから、覚えることはたくさんありそうですね
そうですね。ときメモの時代設定が1995年4月から1998年3月なのですが、その期間のカレンダーを覚えるのにも苦労しました。
――カレンダー?
ときメモは日曜日の夜にその週の平日の予定を決め、休日は休日で、平日同様コマンドを実行するゲームシステムでして、目隠しでやるにはいつ休日がやってくるのかを、把握しなくてはならないんです。連休の存在をうっかり忘れていると、途端に操作が狂ってしまいます。もはや、敬老の日がRTA最大の敵といっても過言ではない。
――Kazupoonさんはお若いですよね。1995年なんて生まれてないのでは?
そうですね。RTAのためだけに覚えました。
――試しに、問題を出しても良いですか? 1996年の敬老の日って何曜日ですか?
日曜日です。その次の日が振替休日になりますよね。
――ゲーム外の努力が途方もないですね……ここまで極めていると、目隠しに加えて耳栓してもクリアできちゃいそうですね(笑)
意外とできますよ?
――すでにやっていた……!
完全な無音はさすがに無理ですが、テレビを消して、「ゲーム画面が見えない&ゲーム音も聞こえない」状態に挑戦したことがあります。
ゲーム機の読み込み音を手がかりにするんですよ。イベントが発生するとディスクを読み込む音が大きくなって、通常モードに戻ると静かになる。その仕様を生かして、プレイステーションに耳をあてながらプレイしていました。