TVアニメ『逃げ上手の若君』(毎週土曜深夜11:30-0:00ほか、TOKYO MX・BS11ほか/Prime Videoにて最速見放題配信中)のオープニングを飾っているのがDISH//の新曲『プランA』だ。和を感じさせるメロディーや楽器、作品のメッセージと共鳴する言葉で紡がれたこの曲は、どのようにして生まれたのか、DISH//の4人に話を聞いた。
アニメ主題歌の制作は大きなチャレンジ
――『逃げ上手の若君』のオープニングテーマ曲『プランA』は、どのように作っていったんですか?
北村匠海(以下、北村) 主題歌のお話をいただいてから、まず(橘)柊生と(泉)大智が作曲の基盤を作ってくれたんです。
橘柊生(以下、橘) サビのメロディーは匠海が考えて、他の部分は大智とふたりで作りました。作品を読んだ上で、「こんな感じがいいんじゃない?」って案を出しながら作っていったら、あっという間に土台ができましたね。
北村 そこから景色が見えてきて、僕が詞を書いていきました。
――曲作りの最初の段階から、和楽器を入れるイメージがあったんですか?
橘 ありました。バンドの僕ら4人とサポートメンバー以外の楽器の音を入れたくて、大智と笑いながら、「ここいいじゃん!」みたいな感じで作っていきましたね。
――アニメの主題歌作りは、通常の楽曲作りとは違う難しさはありましたか?
北村 ドラマやCMに曲を書き下ろすことはやってきたんですけど、今までのアニメとのタイアップは提供していただく曲だったんですね。メジャーデビューシングルも『NARUTO-ナルト- 疾風伝』とのタイアップだったし、作詞作曲ができない時代からアニメと関わらせてもらって、DISH//としての転機になってきた中で、今回の曲作りは僕らにとっても大きな挑戦になると思っていたんです。
でも実際の曲作りでは、『逃げ上手の若君』チームと僕らのイメージの差異がなくて、やり取りがすごくスムーズでした。
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ずっと逃げていることが正義でいい
――曲作りをする上で考えた『逃げ上手の若君』のイメージは、具体的にどういうものでしたか?
北村 『週刊少年ジャンプ』の作品で逃げることに特化した漫画はなかったと思うし、それでいてバトルシーンには『週刊少年ジャンプ』らしい熱さもあり、仲間とのつながりも描かれていて、弱さも持つ主人公に感情移入もできて。歴史的におもしろいところを切り取っているのも新しくて、歌詞がどんどん湧いてきましたね。
――歴史好きの矢部さんとしては、『逃げ上手の若君』をどう受け取りましたか?
矢部昌暉(以下、矢部) まず「そこをやるんだ」って思いました(笑)。その時代だと足利尊氏が圧倒的に注目されるし、北条氏でも、大河ドラマで主人公だった北条義時とか、教科書で習う北条時宗がまず思い浮かびますよね。だから、この作品で初めて北条時行という名前を知った方もたくさんいらっしゃると思うんです。
「逃げる」を武器に戦うのも意外だったけど、読めば、「逃げるって間違ったことじゃないんだ」っていうことがすごくよくわかるんですよね。松井(優征)先生特有のギャグと伝えたいことのバランスが絶妙で、本当におもしろい作品だと思いました。
――『プランA』という曲のタイトルに込めた意味は?
北村 「逃げることが第一の作戦でいい」ということです。この作品はアクションシーンもかっこよくて、「ずっと逃げていることが正義でいいんだ」と思えるんです。
僕も子どもの頃から逃げることは恥だっていう考え方を植え付けられてきた感覚があるんですけど、逃げることが大事な瞬間もある。
逃げることがプランBじゃなくてプランAでもいいという意味です。