パリオリンピックの射撃競技で、『シティーハンター』冴羽リョウと無課金おじさん(ユスフ・ディケチ選手)の姿勢が一緒、と注目を集めました。うわさの「ポケットに手を突っ込むと安定」は真実なのでしょうか? 「日本ライフル射撃協会」にお話を聞きました。
画像は『シティーハンター』第1巻より (C)北条司/コアミックス 1985
【画像】えっ、揉んでみたい… こちらが冴羽リョウの「もっこり胸筋」です(4枚)
話題の「あのメガネ」は何円で買える?
2024年7月26日から8月12日までパリオリンピックが開催されています。X(旧:Twitter)で、特に盛り上がった競技のひとつに射撃競技での選手たちが挙げられます。映画から飛び出してきたような、近未来的なメガネや個性あふれる選手の服装に「かっこよすぎ」「クセ強いな」との声があがり、「25mピストル」の銀メダリストである、韓国のキム・イェジ選手が「美しすぎる」と注目を浴びました。
またトルコのユスフ・ディケチ選手がとてもラフな格好と普通のメガネで参加し、「混合エアピストル」にて銀メダルを獲得したことで「無課金おじさん」というワードがトレンド入りします。ここでいう「無課金」とは、ほかの選手が使用していたようなメガネを使用せず、ゲームでいう「無課金」状態である、という意味です。
また、マンガ『シティーハンター』の冴羽リョウも、同じ格好で撃っていた、と言う事実ファンを驚かせました。その理由として、ちまたでは「ポケットに手を突っ込んで撃つと安定する」という説が流れているようです。実際のところはどうなのでしょうか?
射撃の装備品や射撃の姿勢などについて、2016年のリオデジャネイロオリンピックで射撃チームの監督を務めた、日本ライフル射撃協会事務局の溝部政司さんにお話をうかがいました。
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ーー矯正メガネといった競技に使われる道具は、高額なのでしょうか?
メーカーにもよりますが、最新の銃砲店カタログでは、グラスフレームが4万円から8万円といった価格で販売されています。
ただし、レンズは別料金です。レンズは片目用のため1枚3000円から6000円くらいかと思われます。通常に使っているメガネの効き目でないほうのレンズにシールなどを貼って目隠しをする選手も普通にいます。
ーー無装備のユスフ・ディケチ選手が注目を浴びましたが、装備がないことによって競技への差が出てしまうものなのでしょうか?
ピストル競技は、銃を片手で保持して、止めて撃つ競技です。このため銃を保持して静止させる能力の差が、成績を左右します。このため、装備の差よりも能力の差が出やすい競技と言えます。
一方でライフル射撃は、選手は固い布製のジャケットを着用して銃を体で支えて静止させて撃ちますので、ピストルよりも装備の差が出やすい競技です。
しかしライフル競技の選手でオリンピックに出場するトップクラスの選手は、ほとんどの選手が同等の良い装備で出場しているため、最後は能力の差やメンタルの差で勝敗が決します。
銃を構えようとする冴羽リョウが描かれた『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』通常版DVD(アニプレックス) (C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
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「ポケットに手を突っ込む方が競技で有利になりえる?」←射撃協会からの回答とは
ーーパリオリンピックでは、ポケットに手を入れて射撃する選手が複数名いました。この姿勢は、ちまたで「安定するから」といわれていますが、実際はどうなのでしょうか?
ピストルは利き腕で銃を持ち上げて標的を狙います。反対側の手は、できるだけ静止させたいので、ポケットに手を入れたり、自分のズボンのベルトに手をかけて安定させようとしたりする選手がいます。ズボンのベルト以外に、別のベルトを腰に巻いて、これに手を掛ける選手もいます。
もちろん、手を体側にそって真っすぐ下におろしたままで撃つ選手もいます。このような撃つときの姿勢は、各選手の好みで自由に姿勢を取って良いことになっています。どの姿勢が有利といったことはありません。
ーー「25mピストル(実弾を撃つ銃)」と「エアピストル」では、どれほど重さが違うのでしょうか?
以下のように、ルールで重量上限が規定されています。
■エアピストル:銃最大重量1500g、トリガー(引き金)の重さ:最小500g(これ以上軽くしてはならない)
■25mピストル:銃最大重量1400g、トリガーの重さ:最小1000g
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今回の取材で、ポケットに手を入れる行為は射撃姿勢を安定させるものであることが分かりました。ただ、それが有利かといわれると、そういうわけではなく、選手ごとの好みによって分かれているようです。つまり、冴羽リョウとユスフ・ディケチ選手は好みが一緒だったといえます。
その一方で冴羽リョウの「片手をポケットに突っ込んだ」射撃シーンは、実は理にかなっていたものであることが分かります。もしも冴羽リョウとユスフ・ディケチ選手が戦ったなら、どちらが勝つのか、妄想するのも楽しそうです。