一時、場内は騒然となった。
8月10日に行なわれたJ2第26節の横浜FC対V・ファーレン長崎の一戦。88分、横浜FCのベンチ前でボールがアウトになる。すでにベンチに下がっていた髙橋利樹が、拾ったボールを相手に渡さないような素振りを見せる。
これを発端に、両軍が入り乱れて取っ組み合いに。ほどなくして事態は収まり、横浜FCの髙橋には反スポーツ的行為でイエローカードが提示され、長崎の齋藤直幸コーチは乱暴な行為で退場処分となった。
あわや乱闘騒ぎとなるなかで、横浜FCでコーチを務める中村俊輔の振る舞いが気になった。井上潮音に詰め寄る相手スタッフを、やや強引に引き離す姿が、試合を中継する『DAZN』で見て取れた。
SNS上では別角度からの映像も確認でき、「こんな怒るんだ中村俊輔って」「お咎め無しなのか」「ここまでエキサイトしてるの初めて見た」「こんなにアツくなることあるんだ」といった声もあがった。
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現役時代を振り返れば、感情を前面に押し出すようなタイプではなかった。どちらかと言えば寡黙。それだけに個人的にも意外に思ったが、以前に俊輔が指導者として「演じようとは思わないけど、キャパは広げないといけない」と語っていたことを思い出した。
「たとえばハーフタイムに、納得いかない感じになっていたらキレるだろうし…キレなきゃいけないだろうし。監督として、指導者として、もしかしたら、そういうのも必要な時が来るかもしれない」
本来の自分とは違う姿も見せなければいけない。現役の時、自身初の欧州移籍でセリエAのレッジーナに赴いた。日本では黙々とサッカーに打ち込んできたが、それだけでは現地で認められない。まだ言葉は通じなくてもボディランゲージなどを交え、自ら意思表示し、積極的に要求するなどアピールした。そうした経験を活かそうとしている。
「イタリアで良いプレーヤーになるために、レベルを上げるために、自分は内向的なところを少し変えていった。それと一緒で、指導者になるために、もしかしたら気づいて、変わっていかないといけないかもしれない。根本的なところは変わらないと思うけど、怒鳴るっていうか、意思表示というか…分からないけどね」
いずれにしても、ピッチ内外で荒々しい行動は許されるべきではないし、どんなシチュエーションでも冷静な対応が必要だ。それでも、コーチとして常に選手ファーストを大事にしている俊輔が感情あらわに井上を守ろうとしたアクションには、俊輔なりの考えがあったのかもしれない。
文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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