川内優輝が議論沸騰の”マラソン補欠制度”に私見「他の団体競技と違って、マラソンの場合は…」【パリ五輪】

 マラソンの「補欠問題」が議論沸騰している。

 現地8月11日、パリ五輪は陸上の女子マラソンが行なわれ、日本勢は鈴木優花が2時間24分02秒の自己ベストをマークして6位入賞を果たし、東京五輪8位の一山麻緒は51位で終えた。金メダルはオランダ代表のシファン・ハッサンが2時間22分55秒の五輪新記録でゴール。5000メートルと1万メートルで銅メダルを獲得した鉄人ランナーがマラソンで異例の頂点に輝いた。

 その一方、日本記録保持者の前田穂南は右大腿骨疲労骨折のため無念の欠場となった。日本陸上連盟がレース前日の10日に電撃発表し、日本列島は小さくない衝撃を受けた。同連盟によると、前田は7月31日の練習で右大腿部付け根付近に張りを感じたという。強い痛みではなかったため、調整しながら本番に向けた練習を実施。チームドクターと連絡をとりながら練習を行ない、診察や画像検査は選手村入村のタイミングで行なうこととした。
  8月6日にチームドクターの診断、レントゲン検査、同7日にエコー検査を実施、大きな所見は確認されず、引き続き様子を見ながら調整練習を続けた。ところが、症状が改善されないことから同9日にMRI検査を行なったところ、右大腿骨疲労骨折と診断された。同連盟は「チーム、コーチ、選手と話し合い、この状態でマラソンに出場することは今後の選手生命にも関わる重大な問題であるため」とし、苦汁の決断を下した。なお、前田が本番に向けて調整練習を行なっていたこともあり、陸連は8月2日に補欠を解除。ゆえに、補欠登録だった細田あいとの入れ替えはしなかった。

 そして、11日には陸連の高岡寿成シニアディレクター(SD)からマラソンの補欠問題について説明があった。パリ五輪の選手の入れ替えはレース前日の午前中まで可能だったが、同連盟が補欠解除日(同2日)を独自に設定したことから、入れ替え出場はしなかった。同SDは「(補欠解除の)期限までの期間が非常に短くて、検査する時間がつくれなかった」と認める一方、補欠問題に対しては、「別のやり方で考えていかないといけないのか、話を進めていかないといけない」と振り返り、課題を口にしていた。 この発表を受け、パリ五輪の陸上男子マラソンで補欠となっていた川内優輝は自身のX(旧ツイッター)を更新。「元補欠としては今回のニュースを見て、マラソンの補欠という制度について色々と思うところはあります」と切り出し、補欠制度に言及。「陸連のリリースで、発表しなくてもよい日付や経過をしっかりと発表したことは誠実な対応だと思います」と、故障以外の部分も詳細に発表された内容について評価した。

 そのあと、同氏はさらにXを再更新。「マラソンの補欠問題について」と書き出し、「陸連の高岡SDは2004年のアテネ五輪でマラソンの補欠でした。そのため、他の陸連幹部以上に補欠選手の立場や心境を理解しています」と綴り、高岡SDの決断を尊重。続けて、「陸上競技ではリレーとマラソン以外で補欠は設定していません。また、JOC(日本オリンピック委員会)が競技団体ごとに派遣枠を設定しているため、派遣枠を使ってしまう補欠を現地に連れていけないのです」と説明した。
  さらに、「補欠解除の時期は既に海外で高地合宿に入っており、そのまま日本に帰国せずに現地入りするチームも多くあります。他の団体競技と違って、マラソンの場合は各選手がチーム毎にバラバラに調整練習を進めているため、数ヶ月前のメディカルチェック以降は定期的な練習報告でしか情報が把握できません」と内情を告白。陸連の判断に理解を示しつつも、「補欠のあり方については、これらを踏まえた上での議論が必要です」と私見を述べている。

 10日に実施されたパリ五輪の男子マラソンで優勝したエチオピアのタミラト・トラは補欠選手だったこともあり、ファンからは「補欠問題」について、疑問の声が少なからず上がっていた。直前まで補欠を帯同させるチームもあったなか、今回の欠場発表のタイミングは適切だったのか。騒動の余波は、まだしばらく続きそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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