〈終戦79年〉出撃前の特攻隊、原爆のきのこ雲、火炎放射器で焼かれる沖縄…AI技術と対話をもとにカラー化した写真が繋ぐ“過去と現在”

AIの最新技術と人の手によってカラー化した戦前〜戦後の写真を約350点収録した『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)。2020年7月に出版され、発行部数6万部を記録し好評を博している。当時の写真をカラー化することの意義、書籍化への想いを、担当編集者・高橋恒星さんに聞いた。

本書出版までの道のりを、実際に掲載されたカラー化写真と共にお届けする。〈サムネイル写真/1945年8月6日8時15分。広島市への原子爆弾投下〉

太平洋戦争終結から79年目の夏、今年も日本は「終戦の日」を迎える。

ロシアによるウクライナ侵攻は出口が見えず、ガザではイスラエル軍による虐殺が続いている。国際情勢が緊張を増す中、かつての戦争を振り返り、「いかに平和を守るか」について考えることは、今の時代を生きる私たちの義務ではないだろうか。

戦争と平和を考えるにあたり、関連書籍を手に取る方も多いだろう。

戦前〜戦後の貴重な白黒写真をカラー化して掲載した書籍『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)は、写真集としては異例の発行部数6万部を記録し、大きな反響を呼んだ。原爆投下や各地への空襲だけでなく、当時を生きた人々の“日常”にもスポットを当てた写真が、約350点収録されている。

「形あるものとして留めたい」書籍化への思い

本書にかけた想いと出版までの道のりを、担当編集者の高橋恒星さんに聞いた。

「歴史的・軍事的な視点から戦争を振り返るような書籍はたくさんありましたが、それだけでは不十分だと感じており、別の方法で戦争に対してアプローチしたいという気持ちがありました。

そんな折、著者の渡邉先生が“〇〇年前の今日”としてTwitterで毎日発信されていた写真を見て、『これを写真集にできないか』と考え、先生にコンタクトを取りました」

SNS全盛の今、ネット上で誰でも気軽に写真を載せたり、見たりすることが可能だ。そういった写真を、あえて一冊の本にまとめることに意味があったのだという。

「本書は、決して“ネットありき”の企画ではないんです。よく『フロー(Flow)とストック(Stock)』という言葉が使われますが、ツイートだとそのまま流れて、明日にはみんな忘れてしまう。“フロー”ではなくて、形を持って留まることはすごく大事なことなんじゃないかと思います。

いわゆる“バズらなかった”写真の中にも大切なものがあり、それらを全て並列的に扱えるという点でも、書籍というスタイルで写真を残すことには意味があったのではないでしょうか」

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戦火だけではない「普通の生活」から伝わること

著者の庭田杏珠さんと渡邉英徳さんが、共同プロジェクト「記憶の解凍」などを通して集めた写真の数は膨大だ。その中から掲載する写真の選定にも気を配ったという。

「写真を選ぶ基準は何点かありましたが、とにかく“暮らし”が分かるものをちゃんと入れましょう、という話をしましたね。普通に選ぶと、どうしても戦闘機や戦艦の写真ばかりになってしまうんです。それだけではなく、軍人などではない銃後(一般国民)の人々の生活が分かる方が、より伝わるものがあるのではないかと思いました。

カラー化した時に目を引くようなもの、いわゆる“映え”ももちろん意識しましたが、できるだけ全国各地の写真を並べたり、海外も含め、歴史的に見て重要な事件に関わる写真も掲載することで、幅広く訴えかけるものにしたかったのです」