〈終戦79年〉出撃前の特攻隊、原爆のきのこ雲、火炎放射器で焼かれる沖縄…AI技術と対話をもとにカラー化した写真が繋ぐ“過去と現在”

今と“地続き”になる…写真のカラー化で繋がる過去と現在

そうして選ばれた写真は全て、AIで自動色付けの後、関係者への聞き取りや図鑑での照合を経て手作業で調整されたものだ。

「AIが自動カラー化した画像は、一見そのまま使えそうなほど”それっぽく“なります。しかし実のところ、服装や軍人の徽章、原爆のきのこ雲など、”それっぽく”なっているだけで、実際とは異なるところも多いのです。

それらを修正するためのアプローチはさまざまです。資料を確認したり、専門家の知恵を借りたり、当事者と対話したり。地道な作業で場合によっては一枚の写真のカラー化に数ヶ月かかる場合もあります。著者の二人はこうしたプロセスを通じた、”なぜ”カラー化するのかという意味の部分をとても大事にしています」

対話と調整を積み重ねてカラー化された写真が、多くの人の心を捉えるのはなぜなのか?

白黒の世界で「凍りついて」いた過去の時が「流れ」はじめる――著者の渡邉英徳さんは本書中でこう表現している。そこに映る人々に体温を感じ、今の自分と繋がる。

担当編集者の高橋さんが考える、カラー化写真の“意義”とは。

「写真をカラー化することで、“想像力が繋がる”ような感覚が生まれます。例えば、特攻隊の写真を改めて見た時、同じ時代に生きていてもおかしくない、ただの若者や少年だったんだ、と感じました。彼らの境遇や気持ちを想像し、他人事じゃなくなるんです。

私たちが5年前・10年前のことを考える時、確かに『現在まで続いている』と感じるのに、80年前の話になると急に時の流れが途切れてしまうのは何故でしょうか? この本の中では『地続きになる』という言い方をしているんですけど、戦争というものが切り離された世界の出来事ではなく、戦前〜戦中〜戦後という流れの中で今と繋がっているんだ、と感じられるところに、カラー化の意義があるのだと思います」

次ページからは戦前の広島や真珠湾攻撃など、今までモノクロでしか見ることができていなかった写真を本書から抜粋するかたちで掲載する。

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戦前の広島、中島地区にあった丸二屋商店

1932年ごろ。中島地区(現在の広島平和記念公園)にあった、丸二屋商店の写真。元安橋と本川橋を結ぶ中島本通りにはたくさんの商店が建ち並んでいた。丸二屋商店は本川橋東詰め付近に所在し、石鹸と化粧品の卸問屋だった。新商品が出るたびにチンドン屋(編集部注:原文ママ)が雇われ、店頭を賑わせていた。