感慨深い3連勝。苦境にも屈しなかった鬼木達監督の姿勢と大島僚太&三浦颯太の復帰で辿り着きつつある“新生フロンターレ”の姿

[J1第26節]FC東京 0-3 川崎/8月11日/味の素スタジアム

 破竹の3連勝だ。
 
 前節の神戸戦で今季のリーグ戦で何度も阻まれた初の連勝を飾った川崎は、J1の26節でFC東京との多摩川クラシコに3-0で勝利。今季、少なくない入れ替えがあったチームは、降格圏にかなり近づくなど苦しんだが、夏場に入ってようやく調子を掴んできた印象だ。

 信じ続けてきた積み重ねがついに花開きつつある点は感慨深い。

 確かに川崎のスタイルを誰よりも表現できる大島僚太の復帰は特大級の効果を示す。彼がボランチに戻ったことで、脇坂泰斗、家長昭博らキーマンの躍動がより増したのも興味深いポイントである。

 さらに左SB三浦颯太のカムバックも大きい。果敢なオーバーラップで推進力をもたらし、クロスやプレースキックから得点も演出できる彼が戦列復帰してからチームが3連勝しているのも、より注目されるべきポイントだろう。

 ただ、ふたりの好パフォーマンスを心強く感じながら、個人的に心打たれるのは、鬼木達監督のブレなかった姿勢である。今季も主力が抜け、世代交代を強いられたチームは結果が出ず、黒星が先行。前述したように降格圏に片足を突っ込んだ時期もあり、周囲からも厳しい声も寄せられた。

 それでも、どんな時でも選手を、川崎の力を信じ抜いた信念の指揮官は言い続けた。

「自分たちは自分たちができることをやり続ける」と。

 目指したのは本来のボールを保持して主体的に攻め続けるスタイルであり、観ている人たちを驚かすゴール、心を動かす戦う姿勢であった。

【動画】FC東京×川崎のハイライト
 
 その指揮官の下で、新しいタレントたちが確かな成長を見せ、飛躍の時を迎えようとしている。

 FC東京戦でJリーグでは通算9人目、日本人としては通算3人目の3試合連続となる複数得点を奪った大卒2年目の山田新は、これで今季ふた桁得点を達成。まだ粗削りな面を残すが、アカデミー育ちのCFとして大きな注目を浴びる。

 さらにこれまでは左SBを主戦場にしていた大卒3年目の佐々木旭は、ボールを持ち運び、パスを出せるCBとして素晴らしい出来を披露。時々、驚くようなミスもあるが、課題だった声でチームを引っ張る姿も見せるようになっている。

 FC東京戦でチーム3点目のヘッドを決めた19歳のCB高井幸大はパリ五輪で大いに株を上げたが、高校生時に鬼木監督の下でトップ昇格を果たし、育てられてきた存在。こちらも信じられないミスをする時もあるが、大型CBとしての抜群のポテンシャルが急速に花開いている。

 そこにGKチョン・ソンリョンらベテラン陣や、右SBファンウェルメスケルケン際、ボランチ・橘田健人らも上手く組み合わさり、好循環が生まれつつある。

 チーム在籍15年目の小林悠も好調の背景を語る。

「勝てなかったけど負けていなかった、苦しかったあの5試合(19節から5戦連続ドロー)をしっかり乗り越えられたのが大きかったと思います。ああいう試合で負けたり、上手くいかないなかで腐っていく選手がいたら今の勝ちはない。今はみんなが乗り越えて、自分たちで強くしている最中。若い選手が成長をしながら試合をやることができている。

 それと今は勝てているという自信が生まれた。そこだけが足りなかったのですが、勝つということが本当に大変ですが、それを勝ち取っているからこそ、勝ちへの欲とか、こだわりを若い選手が本当に分かってくれていると思う。そういう選手が増えるとまた強いフロンターレがより戻ってくると思います」

 またキャプテンの脇坂も“自信”について口にする。

「ひとつは勝つと自信になりますし、良いプレーをすると自信になる。日々の練習で自信を付けていく地道な作業がプロは必要だと思いますが、それにプラスしてゲームやワンプレーなどが一気に自信になるのは、自分の経験値としてあります。そのふたつが噛み合ってくると、再現性が出てきたり、同じプレーができてきて、余裕をもってやれたりだとかそういったところにつながってきます。そこが今は噛み合っているのかなと」

 4-3-3から4-2-3-1へシステムを変え、新たな川崎が生まれつつある。苦境を乗り越え、徐々に川崎らしいワクワク感も戻ってきてきていると言えるだろう。

 ただし、やはり大島のゲームコントロールなど属人的な部分があるのも事実。秋口からはACLエリートも始まり、過密日程を強いられる。

 FC東京戦では改めて試合中に家長から修正ポイントを伝えられていた佐々木は想いを口にしてくれた。

「アキさんは自分たちが詰まった時に『もう少しこうしたら良いちゃうか』という感じで言ってくれるので、ヒントを出されている感じがします。右サイドハーフの人が僕らCBを見て、『こうしたら良いんじゃないか』と言えるのは本当にすごい。自分もそういう選手になりたいですし、アキさんに言われる前に気付けるようになっていきたい」

 ピッチ上では脇坂が各選手にアドバイスを送るシーンも光り、各選手での話し合いもかなり増えている印象だ。

 チームとして成長し、個人としてもさらにレベルアップする。まだ険しい道は続くはずだが、その先にある、新しい川崎に期待したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部) 

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