Mars / Credit:NASA/JPL/MSSS
夜空でひときわ赤く輝く火星は、古代から人々の想像力を掻き立ててきました。
赤い色が「血」や「火」を連想させることから不吉な星、戦乱の神とされてきました。例えば、ローマ神話では戦いの神「マルス」の名がつけられています。
また、火星は探査機が一番多く訪れた惑星で、生命の存在や移住の可能性について議論されています。
この記事では、火星について、その魅力と謎について解説します。
目次
赤い惑星火星の地理火星の天気火星に生命はいるか?火星の大接近火星に住んでみる
赤い惑星
火星は、地球の一つ外側を回る惑星で、半径は地球の半分ほどで、質量は地球の10分の1です。自転周期は地球とほぼ同じなので、1日の長さは地球と同じぐらいです。太陽からの距離は、地球よりも1.5倍遠く、公転周期は1年と10ヶ月半ほどです。
また、地球と同じように太陽に対して自転軸が25°傾いた状態で公転しているため、火星には季節が存在します。
火星と地球の比較 / Credit:国立天文台
火星が赤く見えるのは、その表面に酸化鉄が多く含まれているからです。火星の表面には酸化鉄を含む土や岩石が多くあり、これが太陽の光を反射して赤く見えるのです。
first color image from Viking / Credit:NASA/JPL
酸化鉄は鉄が酸素と結合してできる物質ですが、現在の火星には酸素はほとんどありません。火星表面の酸化鉄がどのようにしてできたのかはっきりとはわかっていませんが、いくつかの仮説が考えられています。
そのひとつが、かつて火星に大量に存在したとみられる水が分解されて酸素が作られたという説です。現在有力な仮説の一つでは、火星には30数億年前に表面の20%が海になっていたと推測されています。
海から蒸発した水分子が太陽から放射された紫外線や荷電粒子によって酸素と水素に分解され、軽い水素は宇宙へ逃げていきます。一方酸素は火星の表面に含まれていた鉄と結びつきました。そのため、火星の表面は酸化鉄に覆われて赤い色をしているのです。
そんな火星の地面は地球から望遠鏡でも直接観測できます。
その理由は火星の大気がとても薄いからです。実際、火星の大気圧は地球の100分の1ほどしかありません。大気圧が低いということは、火星の大気が非常に薄いことを意味します。
そんな火星の大気はほとんどが二酸化炭素です。二酸化炭素は地球では温室効果ガスとして問題にされていますが、火星の場合、この大気の量では温室効果を生むには不十分なため、火星を温める効果はほとんどありません。
そのため火星表面は太陽に照らされている昼間は比較的暖かくなりますが、夜になると急速に冷え込み、平均気温は赤道付近でも約-50℃ほどと非常に低温です。
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火星の地理
火星の赤道付近には、アマゾニス平原と呼ばれる平原が広がっています。アマゾニス平原は、火星で最も滑らかな平原の1つで表面は赤い土でおおわれています。
赤い土は鉄の赤さびで、黒い岩石もむき出しになっています。
アマゾニス平原が滑らかな理由として、比較的最近の火山活動によってできた溶岩流に覆われたことや河川活動によって土砂が堆積したことなどが考えられています。
これは火星の地下にもマグマの活動があり、最近まで火山活動や河川の流れが存在したことを意味しています。(最近と言ってもそれは何億年というスケールです)
ただ火星の火山は地球とはいろいろと異なる特徴を持っています。
その代表となるものがアマゾニス平原の東にある、太陽系で最も高い山、オリンポス山です。その高さは、なんと2万5千mです。富士山6つを重ねてもその高さには及びません。そして、山の裾野の広がりは600kmを超えます。オリンポスという名前はギリシャ神話に登場する神々が住む伝説の山が由来になっています。
Olympus Mons / Credit:NASA/JPL/USGS
なぜ、火星ではオリンポス山のような巨大な山ができたのでしょうか?
その理由は、火星の重力が小さいことにあります。火星の重力が小さいため、火山の噴出物がより高く吹き上がり、高い山として積み重なったのです。
重力が小さいということは、高い場所から低い場所への物体の移動力が弱いことを意味します。そのため、火星の山は一度形成されると崩れたり風化したりしにくいのです。
さらに、火星では地球のようにプレートの移動が起こらないため、ホットスポット上に火山がずっと存在し続けることができます。
このため、火山も巨大に成長しやすくなります。火星の地殻が動かないため、火山活動が一定の場所に集中し、複数の噴火が重なって高い山を形成することが可能となっています。