昭和や平成では地上波で放送されていた内容が、コンプライアンスや多様性の広がりによって制限されるものが増えてきました。「不適切表現」が含まれ、いまでは、ほとんど地上波放送されなくなってしまった名作を振り返ります。



画像は『じゃりン子チエ 劇場版』(ウォルト・ディズニー・ジャパン) (C)はるき悦巳/双葉社

【画像】あれ、時代間違えてない? こちらが令和に復活した「懐かしアニメ」です(4枚)

ぜひ「不適切表現」以外にも目を向けて欲しい

 権利として「表現の自由」が認められているものの、アニメやドラマなどのコンテンツにおいて、時を重ねるごとに「不適切な表現」と判断された描写はカット、あるいは描写が変更されてきました。

 最近でいうと、2024年6月28日に公開された劇場アニメ『ルックバック』の原作マンガ(作:藤本タツキ)が「不適切な表現がある」と指摘され、一部修正が加えられました。

 令和に入ってから『SLAM DUNK』の映画や『うる星やつら』など懐かしい作品が改めて制作、公開されましたが、いくつかのシーンが変更されています。昭和や平成では問題なかったりグレーゾーンだったりした描写が、令和ではほとんど地上波放送されなくなってしまいました。

未成年の飲酒

 大阪の下町を舞台に、女子小学生「竹本チエ」の日常が描かれたアニメ『じゃりン子チエ』では、チエの父親である「テツ」の元担任「花井先生」が、チエにお酒を飲ませるシーンがあります。

 この作品は、ほかにも子供が深夜に労働したり喫煙したりとはちゃめちゃな描写が多いです。作品としては人情味あふれるストーリーで多くのファンを魅了しているものの、令和でアニメが再放送したら「子供にお酒を飲ませる」といった「アウト」な行為に、お叱りの言葉が多くあがるでしょう。

 続いて、TVスペシャルアニメとして放送されたジブリ作品『海がきこえる』です。この作品は「スタジオジブリ」の美しい描写と青春時代の甘酸っぱさや、ほろ苦い経験を思い起こさせる素敵なアニメです。

 しかし「金曜ロードショー」では2011年7月以降、再放送はありません。やはり、作中でヒロイン「武藤里伽子」が未成年でありながらコークハイを飲んでいることが地上波放送へ何らかの影響を与えているのでしょうか?

「LGBTQ」への配慮

 また、作品に登場するキャラにおいて、「LGBTQ」への配慮から、性別に対する差別的な言動や「おかま」「おなべ」といった呼称が避けられる傾向にあります。

 例えば国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の、おとぎの国「ヘンダーランド」を中心に物語が展開される『ヘンダーランドの大冒険』や、しんちゃんが拾った「光るタマ」をめぐる『暗黒タマタマ大追跡』では「オカマキャラ」が登場します。

 しかし、この2作品以降、「オカマ」という単語が作中で使われることはなくなっていきました。その結果、しんのすけが「おかまのおねえさん」と呼んでいた、男顔の女性キャラ「売間久里代」は、「女装のひと」という表現に変更されています。

 ほかにも『ONE PIECE』に登場する「ボン・クレー(ベンサム)」は、肩から白鳥が生え、背中に「おかま道」と書かれた羽織が印象的なキャラクターです。しかし、アニメ版では、「おかま道」ではなく「盆暮れ」に変更されています。

女性の露出

 昭和の時代はアニメやバラエティ番組で、女性の胸が露わになることが平気で行われていました。アニメ作品で例を挙げるならば、『うる星やつら』の「ラム」、『ヤッターマン』の「ドロンジョ」、『機動戦士ガンダム』の「フラウ・ボゥ」などが当てはまります。

 いわゆるファンを喜ばせる「サービスショット」ですが、2022年にリメイク版として放送された『うる星やつら』では、そういった生々しい場面は登場していません。確かに性的な描写によって子供を悪い意味で刺激することはNGと認識するのは、現代の価値観でいえば当然の判断でしょう。

 昭和や平成の作品は、思い切りが良いキャラやストーリーで我々を楽しませてくれました。ただ、令和ではそういったものに加えて、コンプライアンスや多様性などを尊重するような配慮もしなければなりません。そのような制限があるなかで、創作物を生み出し続ける創作者には尊敬の念を抱きます。