土星 / Credit:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)Acknowledgment: R.G. French (Wellesley College), J. Cuzzi (NASA/Ames), L. Dones (SwRI), and J. Lissauer (NASA/Ames)

土星のトレードマークはその特徴的な美しい環です。

天文ファンに好きな惑星を聞くと「土星」と答える人が多いようです。

望遠鏡で土星の環を見た時の感動から宇宙や天文に興味を持つ人も多いと思います。土星の環は小さな望遠鏡や双眼鏡でも確認できて、写真撮影の被写体としても手ごろなので、天体観測の初心者からベテランまで人気があります。

そんな人気者の土星にも、多くの謎が隠されています。

この記事では、土星の環がいつ、どのようにしてできたのか、なせ土星だけに立派な環があるのかなど、土星の謎について解説します。また、生命の可能性が示唆されている土星の衛星についても紹介します。

目次

美しい大きな環を持つ土星土星の環の正体どうして土星にだけ立派な環があるのか?土星の環がなくなる?土星は水に浮く?太陽系で最も多くの衛星を持つ惑星土星の衛星には生物がいるかもしれない!?

美しい大きな環を持つ土星

「環がある惑星」といえば、だれもが土星のことを思い浮かべるでしょう。

「木星型惑星」と呼ばれる、木星、土星、天王星、海王星はいずれも環を持っていますが、望遠鏡でもよく見えるはっきりとした環をもっているのは土星だけです。

実際に望遠鏡で観察すると、その環は土星本体の2倍まで広がっています。望遠鏡では見えないかすかな部分まで含めると、その環は本体の5倍ににも及びます。


土星の環の図解 / Credit:NASA/JPL

土星は、大きさでも引けを取りません。土星は太陽系で木星に次いで巨大なガス惑星で、その直径は地球の約9.4倍、質量は地球の95倍です。

土星は完全な球形ではなく、赤道部分が膨らんだ楕円形をしています。自転軸方向の半径は赤道半径より1割ほど短く、つぶれた球のような形状をしています。この「つぶれ具合」を表す扁平率も太陽系の惑星の中で1番です。

土星がこのような形状になる理由は10時間14分という短い自転周期で高速に自転している上に、1立方センチメートル当り0.7gという太陽系最小の密度であることが原因です。

(広告の後にも続きます)

土星の環の正体

最初に望遠鏡で土星を観察したのはガリレオ・ガリレイです。

ただ、このとき観測に用いた望遠鏡はガリレオが自作したもので、性能が悪く、彼は土星の周りに見えるものが環とは判別できませんでした。

そのため彼は「土星には耳がある」と言ったそうです。これが土星の環であるこを確認したのは、後の天文学者ホイヘンスとされています。

そんな土星の環ですが、現代の望遠鏡では非常に詳細な構造が明らかになっています。

土星の環を高性能な望遠鏡で見ると、美しい縞模様が見えます。環にはレコードの溝のような筋がたくさんあり、A環からF環までの環に分かれています。その幅は約27,500kmにも及び、細かく数えると総計で6,000本に分かれています。

土星の環は、浮き輪のように見えますが、板状に固まっているわけではありません。実際には、小さな氷のかけらが連なって土星の周りを回転しています。これらの粒が太陽の光を反射することで、明るく輝いて見えます。

ではそんな塵の集まりで出来た土星の環に、レコードの溝のような隙間ができたり、妙に細い環ができるのはなぜなのでしょうか?

これは、土星の衛星の重力が環に影響を与えているためだと考えられています。

衛星の重力が環を構成する粒子を引き寄せたり、はじいたりすることで、衛星の軌道に沿ってすきまができます。

衛星同士で挟まれた部分は、両側から衛星に押さえ込まれるため、細かい環が整列した状態となります。このように環を整列させている衛星たちは「羊飼い衛星」と呼ばれています。


羊飼い衛星 Pan / Credit: NASA/JPL/Space Science Institute