天王星の衛星

天王星には2024年2月現在、28個の衛星が確認されています。

天王星の衛星は13個の内衛星、5個の主要な大型衛星、そして10個の不規則衛星の3つのグループに分けることがでできます。

内衛星

すべての内衛星は、天王星の環と密接に関係しています。

天王星の環はおそらく1つまたは複数の小さな内衛星の破片から構成されていると考えられます。最も内側の2つの衛星コーデリアとオフェーリアはε環の羊飼い衛星です。

小さな衛星マブは最も外側のμ環にその材料を供給していると推測されます。

主要な大型衛星


天王星の主な衛星 Credit:NASA/JPL-Caltech

主要な大型衛星は以下の5つです。
アリエル
ウンブリエル
タイタニア (天王星最大の衛星、直径1,578km)
オベロン
ミランダ

これらの主要5衛星は、天王星の自転軸がほぼ横倒しになっていることから、天王星の公転面に対してほぼ垂直な軌道を回っています。

不規則衛星

内惑星や主要5衛星の軌道は円に近く、ほぼ同一平面上にあります。

これに対して細長い楕円軌道や傾いた軌道を持つ衛星、天王星の自転とは逆向きに公転している衛星を不規則衛星と呼びます。これらの衛星は天王星とは離れた場所で形成された天体が天王星の重力にとらえられ衛星となったものと考えられています。

これらの衛星の名前は、シェイクスピアやアレキサンダー・ポープの作品に登場する人物の名前が付けられています。

衛星の組成は主に氷と岩石が混じったものと考えられていますが、天王星の衛星の総質量は天王星の質量の0.01%とかなり小さいことが特徴的です。 この点については、天王星の形成過程で巨大天体との衝突があり、その際に生じた円盤から衛星ができたことが理由の一つとして考えられています。

天王星の探査計画

天王星を探査機が訪れたのは、1986年に惑星探査機ボイジャー2号が接近したときの1回だけです。私たちはこの奇妙な惑星についてあまり多くを知りません。


Artist’s concept of Voyager in flight. Credit:NASA/JPL

しかし、そんな状況が変わるかもしれません。

NASAの新しい10年計画「Origins, Worlds, and Life」では、天王星の探査ミッションが最優先プロジェクトとして提案されているからです。

提案されているミッションは「ウラヌス・オービター・プローブ」と呼ばれ、天王星の大気に突入する探査機と、天王星の周回軌道に投入される探査機の2機で構成されます。

天王星本体については内部構造、磁場、大気組成、環の調査などが計画されています。

また、28の衛星の観測・調査も重要な目的です。特に海が存在する可能性が指摘されているミランダ、アリエル、オベロン、ティタニア、ウンブリエルの5つの衛星が重点的な観測対象とされています。

天王星探査は長年の懸案事項でしたが、今回の10年計画で最優先事項に位置づけられ、2030年代の実現が期待されています。

液体の海があり、生命の可能性がある衛星としては、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンセラダスが知られていますが、天王星の衛星にもそのような衛星があるかもしれません。これからの探査ミッションに期待したいですね。

参考文献

惑星のきほん
https://www.amazon.co.jp/dp/4416617496

惑星科学入門
https://www.amazon.co.jp/dp/406159222X

シリーズ現代の天文学[第2版] 太陽系と惑星
https://www.amazon.co.jp/dp/B09FSPG3BY

ライター

浅山かつのり: 屋号:創造情報研究所。大学で物理学を専攻し、課外活動では天文研究会の会長を務めました。現在はITエンジニアとして働きながら、サイエンスライターとしても活動しています。歴史にも興味があり、史跡めぐりや歴史関係の本を読むのも好きです。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。