五輪に男子サッカーは必要か!? 英メディアは「満足のいかない妥協案」「正式種目に値するのか疑問」との否定的見解を示す一方でその有用性への指摘も

 オリンピックは「スポーツの祭典」であり、多くの競技でトップアスリートたちがその最高レベルの技を競い合うのが最大の魅力であるが、当然ながら世に存在する全ての競技を採用することはできず、その選考を巡って様々な議論が生まれることになる。

 その中で、男子サッカーは1908年ロンドン大会で公式種目となって以降、32年ロサンゼルス大会を除く全ての大会で実施され、人気種目として常に多くの注目を集めており、96年アトランタ大会で正式種目となった女子サッカーは、女子ワールドカップとともに最も権威の高いコンペティションとして位置づけられている。

 男子については選手の出場条件に23歳以下という項目が組み込まれているが、これは世界最高峰のイベントであるワールドカップの権威を守りたいFIFA(国際サッカー連盟)の意向を汲んでのものであり、一方でIOC(国際五輪委員会)は可能な限り多くの有名選手を出場させたいということで、折衷案として各国3人のオーバーエイジ(OA)枠が設けられている。

 予選は年代別代表チームで戦い、五輪本大会のみOAの選手が加わるという、ある意味不自然な規定であり、またサッカーにおいてはFIFA主催で各年代別の大会がすでに整備されていることもあり、たびたび五輪における男子サッカーの必要性の有無は議論の対象とされてきた。
  FIFA主催の大会とは異なり、国単位での出場が条件となるため、今回も不参加となったイギリスの日刊紙『The Guardian』は、「廃止されるべき種目」を検討する記事において男子サッカーをそのひとつに選定し、その理由を以下のように挙げた

「テニスのように世界最高の選手が参加するなら続ける価値はあるが、それは絶対に起こらない。結果として我々が得るのは、満足のいかない妥協案である。無名の23歳以下の選手たちに、ほんのわずかなスター性を加えたチームであり、最終的には誰も満足しない」

「これは、豊富なオイルマネーで設立された全てのスタートアップリーグと同じ理由で、最後には失敗する。サッカーは、スター選手だけでなく、伝統や国のシステムの産物としての明確なアイデンティティーを持つスター集団に依存しているスポーツだ。これが、女子サッカーが依然として重要で価値のある種目の一部である理由である」 皮肉と、徹底した某中東国への嫌悪を示すという、同国メディアらしい見解だが、サッカー専門サイト『Football365』も、決勝で敗れたフランスのミカエル・オリーズが、授与された銀メダルをすぐに首から外してポケットにしまった様について言及し、「選手たちが銀メダルを『敗者のメダル』と見なしているのを見ると、男子サッカーが本当に五輪競技に値するのか、疑問が生じる」と綴っている。

 同メディアは、スポーツ専門チャンネル『ESPN』で解説を務めた元フランス代表DFのフランク・ルバフが「私はそれを楽しんだが、それでも男子サッカーは五輪の一部であるべきではないと思う。それは五輪の精神に反しているし、スポーツですらない。もし、無理強いされたり、上司に勧められたりしなければ、観戦する気にはなれなかっただろう。素晴らしいエンターテインメントだったが、それでも見るべきではなかったと思う」とのコメントを紹介した。

 また、フランスを率いたティエリ・アンリ監督が、キリアン・エムバペら多くのトップスターたちの招集に失敗としたことを振り返り、「こんなに多くの拒絶を受けたのは初めてだ」と語ったことを伝え、五輪男子サッカーがいかに多方面から理解を得られていないかを強調した同メディアだが、この競技の有用性についても言及している。

「スペインはこの大会を利用し、2026年のワールドカップで輝くであろう選手を育成している。それは3年前の東京大会も同様で、決勝でブラジルに敗れたチームのうち、ウナイ・シモン、ミケル・メリーノ、ダニ・オルモ、ミケル・オジャルサバルは、今夏のEURO2024決勝でイングランドの心を打ち砕いた選手たちである」
 「スペインは規則により、クラブに対して五輪への選手の提供を求めているが、その効果は非常に大きく、彼らはこの舞台での機会を無駄にしない。同国サッカー連盟は多額の資金を投入し、豊富な専門知識を持ち、国中に素晴らしいインフラを整備しており、非常に多くの競争がある。それは、男子も女子も同様だ」

 ちなみに同メディアは、前述のオリーズの態度とは対照的な例として、OA枠で出場したアレクサンドル・ラカゼットの「これは僕にとって最高の銀メダルだ。キャリアの中では、決勝戦で敗れたことが何度もあったが、今回は一番マシな負け方だ。再び代表のユニホームを着ることができたし、そして雰囲気も素晴らしかった。一生忘れられないだろう」とのポジティブなコメントも紹介している。

 そして先日、イギリスの公共放送『BBC』が伝えたところによると、同国五輪協会が4年後のロサンゼルス大会でイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの統一チームを、2012年ロンドン大会以来出場させる意向であることを明かし、アンディ・アンソンCEOは「それはサッカーにとって素晴らしいことであり、彼らが五輪に参加するのを見たい」と語っている。

構成●THE DIGEST編集部

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