馬の“肉弾戦”が観られる馬上ラグビー<コクボル>の激しい頂上決戦!

競うことより、集うこと

2022年「ワールド・ノマド・ゲームズ」トルコ⼤会は、102か国から3000⼈もの選⼿が参加し、来場した観客はのべ10万⼈にのぼった。トルコはホスト国としての責任を⽴派に果たし、⾯⽬を保った形となった。メダル獲得の多かった国は、1位がトルコ(23個)、2位がキルギス(11個)、3位がイラン(5個)、そしてカザフスタン(4個)、アゼルバイジャン(4個)などである(トルコの通信サイト、Raill News2022年10⽉3⽇付などより)。

最初はあまりにゆるい⼤会運営に⾯⾷らい、⼾惑いも感じたものだったが、それも含めておおいに楽しめるようになった。⾃分の常識を基準にしてはいけないと学ばされた。
ワールド・ノマド・ゲームズは、競うことより、集うことが重要な⼤会だったのではないか、と私は思っている。

多重性と類似性。世界がどれほど多様なのかを⾒せつけられるとともに、そこに類似性を⾒つけて接点を探したり、交流したりする楽しみ。そして自分が思い描いてきた世界地図を塗り替えられたことが、⼀番の収穫だったと⾔える。

私はこれまでトルコを、「かなり東」だと漠然とイメージしてきた。しかしこの⼤会を通して、「かなり⻄」なのだと実感した。「かなり東」は、ヨーロッパから⾒た世界観に過ぎない。モンゴルの⻄、トルコの東に、まだ私の⾒知らぬ世界が広がっている。その世界のほんの⼊り⼝まで、⾺が連れてきてくれたのだと思う。

そして私たちが⾒なかったーーというより、もとより⾒る権利のなかったーー開会式で、2024年の次回⼤会はカザフスタンで開催されることが公式発表された。
ワールド・ノマド・ゲームズは2年に1度の開催なので、意外と忙しい。次の2024年カザフスタン⼤会は、パリでパラリンピックが閉会する日から始まる。もちろん、出かけるつもりだ。

文/星野博美

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馬の惑星

星野 博美

2024年4月26日発売2,200円(税込)四六判/360ページISBN: 978-4-08-781750-8

君は、馬だ。どこまでも走っていく馬だ──。
謎の老人が告げた一言から、その旅は始まった。
モンゴル、アンダルシア、モロッコ、トルコ。
土着の馬にまたがり大地を行くと、テロ、感染症、戦争……不確実な世界の輪郭が見えてくる。
「馬の地」が紡いできた歴史と人々の営みをたどる、さすらい紀行。

【目次】

はじめに

第一章 極東馬綺譚
火の馬
君は馬
馬と車
そこに馬はいるか

第二章 名馬の里、アンダルシア
レコンキスタ終焉の地、グラナダ
コルドバのすごみ
アンダルシアンに乗る
馬祭りの街、へレスへ

第三章 ジブラルタル海峡を越えて
二つの大陸
青の町、シャウエン
砂漠の出会い

第四章 テロの吹き荒れたトルコ
文明の十字路
雪の舞う辺境へ
トルコのへそ、カッパドキア

第五章 遊牧民のオリンピック
未知の馬事文化
いざ、イズニクへ
馬上ラグビー、コクボル
コクボルの摩訶不思議な世界

おわりに