「ワクワクしないわけがない」アルバレスらの加入にアトレティコ・ファンのボルテージが急上昇! 「6月の段階で聞かされてもフィクションとしか思えなかった」

 応援するクラブを問わず、スペインのフットボールファンはずっと我慢してきた。ラ・リーガで頭角を現わした選手が、すぐさまプレミアリーグのクラブに目をつけられ、大金と引き換えに持っていかれてしまうことを。

 今夏にビジャレアルからチェルシーに移籍したフィリップ・ヨルゲンセンなどはその典型例だ。もはや、かつての威光を維持し続けているのはレアル・マドリーのみで、そのライバルのバルセロナでさえも深刻な財政難に直面し、上層部の創意工夫(あるいは悪あがきともいう)も虚しく、移籍市場では劣勢を強いられている。

 2強に次ぐ存在のアトレティコ・マドリーも同様だ。しかも最近は、そのスペイン3番手の地位も怪しくなっている。昨シーズンはリーグ4位と、ディエゴ・シメオネ政権下では就任2年目から12年間続いていた3位以内でのフィニッシュを逃した。それは、移籍市場での劣勢が招いた結果ともいえる。チームのテコ入れはもはや不可欠で、シメオネ監督もクラブに対して補強を要求。スペイン紙『AS』のアトレティコ番記者、セルヒオ・ピコス氏も「大刷新の夏になる」と予想した。
  しかしいざ蓋を開けてみると、昨シーズンのラ・リーガ得点王のアルテム・ドフビクの獲得に失敗(ジローナ→ローマ)するなど、7月が終わろうとする段階になっても、新戦力はゼロのままだった。移籍市場での劣勢が続いていることは明らかなように思えた。

 そんな中、7月27日にクラブはスペイン代表のロビン・ル・ノルマンとの獲得合意を発表する。近年、レアル・ソシエダのDFリーダーを担っていた実力者だ。EURO開催中から加入が既定路線と伝えられていたのは、「ファンの不満を和らげるため」と勘ぐる地元記者もいた。 しかしそれは、その後に続く怒涛の獲得ラッシュへの号砲に過ぎなかった。

「今夏のクラブの補強の動きを目の当たりにして、ワクワクしないわけがない」と『AS』紙のコラムでパトリシア・カソン記者が喜びを噛み締めていたように、8月3日にアレクサンダー・セルロト(ビジャレアルから)、同12日にフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティから)と、立て続けにFW2枚の獲得を発表。ファンのボルテージは一気に上昇した。

「ル・ノルマン、セルロトに加えて、アルバレスもやって来た! そして、まもなくコナー・ギャラガーも加入するかもしれないなんて! 6月の段階でこの顔ぶれがアトレティコに揃うと聞かされても、フィクションとしか思えなかっただろう。それが今現実になっている」とカソン記者は興奮気味に語る。
  ファンの間で潮目が変わったのは、やはりアルバレスの加入話が浮上した時だ。もちろん、ル・ノルマンやセルロトもラ・リーガを代表する実力者だが、24歳と若いアルバレスは、新プロジェクトの顔役を担える正真正銘の大物だ。しかも、散々煮え湯を飲まされてきたプレミアリーグの「ビッグ6」の一角を担うマンチェスター・Cから強奪したという事実が、ファンの自尊心をより一層満たしている。

 ギャラガーに関しては一時獲得が伝えられたものの、その後、オペレーション成立の前提として並行して進められていたサム・オモロディオンのチェルシー移籍が暗礁に乗り上げたことで、正式発表が先延ばしになっている。これに関して『AS』紙は、チェルシーが興味を示すジョアン・フェリックスを代役として提示し、改めて交渉していると伝えている。また、アトレティコとしてはCBをもう1枚獲得したい意向で、それもJ・フェリックスのオペレーション次第となりそうだ。

 新規株式発行による7000万ユーロ(約113億4000万円)の増資に加え、クラブワールドカップ2025の出場権を得たことで手に入る5000万ユーロ(約81億円)の収入、マリオ・エルモソ、ステファン・サビッチ、メンフィス・デパイらの契約満了、アルバロ・モラタの放出(→ミラン)によるサラリーキャップスペースの確保などが追い風となり、大型補強を実現させているアトレティコ。彼らが周囲の諦めムードを一変させるだけのテコ入れを敢行しているのは間違いない。熱狂的なファンの期待を背負って、シメオネ・アトレティコ号は14年目のシーズンへ向かう。

文●下村正幸

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