アーセナルでの4年目のシーズンを迎えようとしている冨安健洋だが、オフ中に膝を痛めてアメリカ遠征やプレシーズンマッチにも参加できなかったことで、大きな出遅れを余儀なくされている。
ここ数シーズンは度重なるふくらはぎの負傷によって試合を欠場することが多かった日本代表DFは、再び怪我に苦しんでおり、ミケル・アルテタ監督は「彼はよく頑張っているだけに、とても気の毒だ」と同情を表わすとともに、「おそらく数週間はかかるため、彼は辛抱強く回復に努める必要がある」と語り、8月17日のプレミアリーグ開幕はもちろん、しばらくは戦線に復帰できないことを示した。
ユリエン・ティンバー、ファビオ・ヴィエイラらとともに早くも故障者リストにその名が載ってしまった冨安について、イギリスの日刊紙『The Standard』は「昨季、2月初めに問題を抱えてアジアカップから帰国した彼は、4月末まで先発出場ができなかった。そのこともあって、今季は無傷で1年間を乗り切ってもらいたいと考えていたが、その希望は早々に打ち砕かれてしまった」と綴っている。
一方で怪我を繰り返すこの背番号18に対しては、戦力として計算できないとの厳しい見方も少なくなく、新戦力の獲得のために売却すべきだとの意見が、ファンや現地メディア、そして有識者からも上がっており、サッカー専門サイト『FOOTBALL TRANSFERS』のスティーブ・ケイ氏は、『KS1 TV』で、今夏、アーセナルがボローニャのイタリア代表DFリッカルド・カラフィオーリを獲得する際に、冨安をトレード要員とする可能性があったと明かした。
これが実現しなかったのは、カラフィオーリがアーセナルに加入した場合、その移籍金の半分は彼の前所属クラブであるスイスのバーゼルに支払われるということで、この取引に人的トレードは適さないという判断がなされたからだと同記者は説明しているが、別の専門サイト『TBR』は、まだ冨安の移籍の可能性は残っていると報じている。
「ボローニャは今夏、カラフィオーリとジョシュア・ザークツィー(マンチェスター・ユナイテッド)の両選手を売却したために資金が潤沢にある。今後、この日本代表選手が今夏のどこかの時点でセリエAに復帰しても驚きはないだろう。この移籍は非常に理に適っているため、冨安がいずれボローニャに復帰してくる可能性はある」 こうして去就が注目される冨安だが、プレミアリーグは今週末に開幕ということで、現地メディアがアーセナルのシーズンプレビューを行なう中で、冨安についても触れられており、データ分析サイト『Opta』は、スタメン予想で左SBのオプションとして彼を選定し、「両サイドで快適にプレーできる」とポジティブに評している。もっとも、「コンディションが良ければ」と付け加えてはいるが。
冨安のポジション争いのライバルには、オレクサンドル・ジンチェンコ、ヤクブ・キビオル、マイルズ・ルイス=スケリー、カラフィオーリ、キーラン・ティアニーの名が挙げられているが、サッカー専門サイト『90min』は、プレシーズンマッチを振り返って、以下のように評価した。
「攻撃的なジンチェンコは昨季、守備の向上に注力するチームの選択肢としては不評だったが、ここ最近の彼は、アルテタ監督がこのウクライナ人選手の獲得を欲した理由を思い起こさせるプレーを披露している。アーセナルが20年越しの悲願であるリーグ制覇を果たすためには、ジンチェンコの最終ラインと中盤での貢献が必要になるだろう」
「カラフィオーリは、アルテタ監督が構築しようとしている4バックの守備陣に上手く適合し、ジンチェンコの代替オプションとなる。また、CBとしての能力も有しており、ウィリアム・サリバやガブリエウ・マガリャンイスのバックアップとしても十分に役割を果たせるだろう。指揮官も、『彼は非常に多才で、2、3の異なるポジションでプレーでき、とくに攻撃面では複数のエリアで貢献できる。彼は本物のDFだ』と絶賛している」
チームにとっては頼もしいタレントたちだが、冨安にとっては手ごわい存在であり、怪我で出遅れを強いられている状況では、なおさらポジション争いは厳しいものとなるかもしれない。果たしてここから巻き返しを見せることができるか。あるいは、近いうちに異なるユニホームを身に纏うのか。今後の動向から目が離せない。
構成●THE DIGEST編集部
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