5年前の出来事を教訓に、今度こそ大丈夫?
一方、駅前の浸水対策も強化されている。この浸水被害をめぐっては、多摩川へ通じる排水管の弁を閉じて川の水の逆流を止める措置をとらなかった行政の対応について、浸水被害を受けた住民が訴訟を起こしている。
川崎市上下水道局は「内陸部(住宅側)に雨が降っているときは弁を閉じないという当時の規則にのっとった対応をした。係争中なので当時の対応についてそれ以上のことは言えない」と説明するが、浸水被害の後、再発リスクを抑えるため対策をとってきたことは強調する。
「多摩川の水位は武蔵小杉駅近くの観測所で通常2メートル前後のところ、台風19号当時は観測史上最高の10.81メートルにも達していました。
このため下水を川へ流す5ヶ所の排水管から水が逆流しました。その後、同じ状況になっても水があふれないよう、まず排水管から川へ放水する地点にある逆流防止用の弁を電動に替え、遠隔操作で閉じられるようにしました。
弁を閉じれば排水管による多摩川への放水もできなくなりますが、毎秒30トンの排水能力があるポンプ車を4台導入したり、排水用のバイパス管を整備したりすることで排水能力を向上させ、シミュレーションでは台風19号と同じ状況になっても浸水被害が出ないとの結果になっています」(川崎市上下水道局の担当者)
この台風19号では、東京都内でも初の大雨特別警報が発表され、八王子市で1時間に 72ミリの雨が降った。総雨量では奥多摩町で650ミリを記録。7つの川から水があふれ、 全半壊や浸水など、1323 棟が被害を受けるという近年では最大の被害が出ている。
東京都も昨年12月、台風やゲリラ豪雨への備えを強化する内容の「東京都豪雨対策基本方針」を、2014年以来、約9年ぶりに更新している。
都はこれまで、河川の護岸や調整池の整備、河床掘削などを行ない、2022年度までに都内の河川の護岸整備率は 68%になっているという。
そのうえで東京都下水道局の担当者は「気候変動による気温上昇に伴い、世界の平均気温が 2℃上昇した場合、関東地方の降雨量は 1.1 倍になると試算されています。このため対応できる豪雨対策の目標降雨を 10 ミリ引き上げ、23区で時間85ミリとしました」と話す。
地球温暖化が進むなか、毎年のように台風やゲリラ豪雨に「数十年に一度の規模」といった修飾語がつく。これまでを上回る被害が起こることを想定し、備えておく必要がありそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班