Credit:NASA/JPL

海王星は太陽系の最も外側にある惑星で、遠すぎるため地球からは肉眼で見えません。

そのため夜空を眺めて意識されることはない惑星ですが、真っ青なその姿は図鑑ではお馴染みでしょう。

海王星は、天王星の軌道に計算とのずれがあったことから、外側に未知の惑星がありその重力の影響があるのではないか? と見つかる前から存在が予言されていた稀な惑星です。

海の神の名を持ち、神秘的な青い姿から、何も知らないと海洋惑星を想像してしまいますが、実際この天体はどんな惑星なのでしょうか? 青色の正体はなんなのでしょうか?

海王星の謎に迫ってみましょう。

目次

海王星の発見海王星には海がある?海王星の内部にある「灼熱の氷」海王星の衛星

海王星の発見


Credit: NASA/JPL

海王星は計算によって位置が予測され、発見された初めての惑星です。そのため、海王星は「予言された惑星」と呼ばれています。

1781年に天王星が発見されると、天文学者たちは望遠鏡でその軌道を詳細に調べました。

すると、ニュートン力学による軌道計算と実際観測された天王星の軌道にズレがあることがわかったのです。学者たちはこのズレの理由について考え、それが天王星のさらに外側にある未知の惑星の引力の影響ではないかと予想しました。

そこでフランスのルベリエとイギリスのアダムスという2人の科学者が、それぞれ独自に新惑星がどのような軌道を描くかを計算し、その位置について予想を発表しました。

この二人の科学者の予言に基づいて、1846年9月にベルリン天文台のガレが実際に観測によって新惑星「海王星」を発見したのです。

そのため海王星発見は、ルベリエ、アダムス、ガレの3人の功績とされています。

この発見は天王星の時のような偶然ではなく、力学的な計算にもとづいたものでニュートン力学の勝利と言えるでしょう。

その後、海王星の軌道の外側に冥王星が発見されましたが、冥王星は現在惑星の定義に当てはまらないとして準惑星とされているため、海王星が太陽系最遠の惑星になりました。

海王星は太陽から44億9500万km離れていて、公転軌道の長径は土星の3倍以上、天王星の1.5倍です。太陽から遠いため公転周期も長く、165年かけて公転しています。

地球からの距離も遠いため、地上から見て海王星は最も暗い惑星です。海王星の明るさは8等級で、肉眼では見えません。双眼鏡や小口径の望遠鏡で小さな青い星として見えます。口径20センチメートル程度の望遠鏡なら、条件の良い場合は表面の模様を確認できます。

直径は地球の約4倍で、天王星より一回り小さい大きさです。質量は地球の17倍になります。ガス惑星(木星型惑星)の中では最も密度が大きく、平均密度は1立方センチメートル当たり1.6グラムです。

海王星にも環がありますが、天王星よりもずっと控えめです。環は全部で5個あります。海王星にはかつてもっと多くの環があったのかもしれませんが、衛星トリトンの重力作用によってはじかれてしまったと考えられます。

海王星から見た太陽はとても小さく、点のように見えます。しかし、明るさは約マイナス18等もあり、周りのどの恒星よりも明るく見えます。

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海王星には海がある?

海王星の英語名であるネプチューン(Neptune)は、ローマ神話の海の神ネプトゥーヌスに由来しています。その名の通り、海王星は深い青色をしており、まるで海が広がっているかのようです。

しかし、残念ながら海王星の青い色は海の色ではなく、大気や雲の色です。

海王星の大気の主な成分は、水素が約80%、ヘリウムが約19%、メタンが約1.5%です。天王星が青く見えるのは、大気に含まれるメタンが赤色の光を吸収するため、残った青い光が反射されるからです。

天王星の大気にもメタンが含まれていますが、天王星の色は緑がかった薄いシアンなのに対して、海王星は明らかに青い色をしています。2つの惑星には同じようにメタンが含まれているので、同じような青色になってもいいはずですが、明らかに色合いが異なる理由はなんでしょうか?

最近の研究によれば、天王星よりも海王星の方が青く見える理由は、主に両惑星の大気中に存在する「もや」の層の厚さの違いによるものです。天王星の大気には厚い「もや」の層があって、微粒子によって光が反射されるため青色が薄まって見えます。海王星の大気にも「もや」の層がありますが、天王星に比べて薄いため、青色がより強く見えます。


▲研究チームによってモデル化された、天王星(左)と海王星(右)の大気中の3つのエアロゾル層 / Credit:International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA, J. da Silva / NASA /JPL-Caltech /B. Jónsson

研究チームが想定したモデルは、3層のエアロゾルから構成されています。エアロゾルとは微粒子を含んだ気体のことで、色に影響を与える重要な層は、2層目の中間層です。

海王星の大気は天王星より活発なため、大気の動きによってメタン粒子が中間層にかき集められ、メタン雪として下方に降下していくため、「もや」が取り除かれやすくなっています。

海王星の大気が天王星より活発な理由は、海王星の表面温度が高いためです。

高いと言っても太陽から遠く離れた海王星の表面温度の平均は約 -218℃(55K)で、極寒であることに違いありませんが、それでも太陽に近い内側の軌道を回る天王星の表面温度(平均約 -224℃(49K))と比べると、わずかに高いのです。

この違いが、よく似た2つの惑星の大気の動きに影響していると考えられます。

では海王星の表面温度が高い理由としては何が考えられるでしょうか?

まずは、温室効果について考えてみましょう。海王星の大気の主成分は水素やメタンで構成されています。メタンは二酸化炭素よりも高い温室効果があるため、温室効果によって表面温度が上昇している可能性があります。

次に考えられるのは、重力収縮による発熱です。惑星の上層部にある物質が中心部に落下した時に重力による位置エネルギーが熱エネルギーに変わります。その熱が表面に伝わって表面温度を上昇させているのかもしれません。

さらに、中心核にある放射性物質が熱源となっていることも考えられます。地球内部の岩石にはウラン、トリウム、カリウム40などの放射性物資が含まれています。これらの物質は崩壊までの期間(半減期)が長く、崩壊した際に放出するエネルギーが大きいため、現在も地球の内部が高温に保たれています。

海王星の密度は木星型惑星の中で最も大きく、氷と岩石で構成されたコアも大きいはずなので、そこに含まれる放射性物質の量も他の星よりも多い可能性があります。


天王星と海王星の内部構造 Credit: ETH Zurich / T. Kimura

内部に熱源があるためか、海王星は天王星と比較しても表面に見える大気の活動が活発です。

海王星は太陽系で最も強い風が吹いていて、最大風速は秒速600メートルに達します。海王星の大気には雲のような構造がたくさんあり、大暗斑のような長寿命の嵐がたびたび発生します。


大暗斑 / 海王星の大暗斑 Credit:NASA/JPL

大暗斑の正体は高気圧性の渦で、大きさは地球の直径とほぼ同じです。

大暗斑は1989年に探査機ボイジャー2号が海王星に接近したときに発見されました。しかし、その後1994年にハッブル宇宙望遠鏡が観測したときには大暗斑は消えていました。さらに数カ月後にはまた新しい暗斑が現れています。

大暗斑は、木星の大赤斑よりは寿命が短いようですが、これは海王星の大気がダイナミックに変動している証拠だといえます。