②グダグダの“ユルい笑い”が時代のカウンターとなっていた!
内村からのムチャ振りに芸人たちは必死で笑いを取ろうとするが、その即興コントなどのネタ自体が必ずしもおもしろかったわけではない。むしろめちゃくちゃスベッたり、場が荒れたりすることばかり。
けれど、そんなグダグダな状況にこそ内村は大笑いし、愛あるツッコミで“ユルい笑い”として成立させていたのだ。
今思えば、その“ユルい笑い”がウケたのは時代のカウンターだったからかもしれない。
人気企画だった「芸人引き出し王決定戦」をはじめ、『内P』ではさまざまなお題が与えられ芸人たちが即興コントを披露することが多かったが、『内P』スタート以前にはきちんとセットを組んで、ガッツリ作り込んだ台本で見せるコント番組が大ヒットしていた。
『ダウンタウンのごっつええ感じ』(1991年~1997年/フジテレビ系)や、内村が座長を務めていた『笑う犬』シリーズ(1998年~2003年/フジテレビ系)などは、かなり綿密に計算されて構築された本格コント番組だったのだ。
そんな本格コント番組がムーブメントを起こした後に放送開始した『内P』は、計算なんてする余裕のない芸人たちが、即興コントなどでむき出しの素を見せて笑いに昇華していた。
本格コント番組とは笑いを取ることへのアプローチが真逆だったわけだが、そんな“ユルい笑い”が、くしくも時代のカウンターとしてハマッたのかもしれない。
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③実は誰よりも内村光良自身の新たな一面が引き出されていた!
『内P』はふかわや有吉ら数々の芸人たちの新たな一面が引き出された番組だったが、実はもっとも違う魅力を開拓したのは内村本人だったように思う。
それまでの内村には、いつもニコニコでとにかくやさしい善人のイメージや、番組企画に真剣に取り組むストイックなイメージなどがあった。それは現在の内村にも通ずるところだろう。
そんな内村が『内P』では怪しげなプロデューサーとして、暴言を吐いたり横暴に振る舞ったりしており、ダークサイドな魅力を開花させたのだ。もちろん過去のコント番組で悪役キャラを演じていたこともあるが、『内P』では“内村光良”本人のままで権力を振りかざす傍若無人な人間を演じており、それが目新しかったのである。
たとえば番組開始早々に、内村が「お前たちはダメだ~!!」と叫ぶのがお決まりのパターン。そんな内村からの理不尽極まりないダメ出しに、芸人たちが猛烈に抗議したりタジタジして戸惑ったりするのが掴みの笑いとなっていたのだ。
余談だが、ふかわは“自分がウッチャンの新しい一面を引き出している”といった趣旨の発言をたびたびしていた。
内村や周囲の芸人は認めてはいなかったが、ふかわのイジリがいのあるダメさ加減に、内村がイライラしてキレるといったノリの延長で、ダークサイドキャラが出来上がっていったという側面もあったので、ふかわのその発言もあながち間違っていないかもしれない。
――こうして終了後も長年愛され続けた『内村プロデュース』。今秋のSPでも、ムチャ振りに必死に対応しようとする芸人たちによる“ユルい笑い”を堪能させてくれるに違いない。
文/堺屋大地 サムネイル/2009年2月18日発売DVD『内村プロデュース~円熟紀』(テレビ朝日)より