The Blue Marble / The Blue Marble credit:NASA/Apollo 17 crew; taken by either Harrison Schmitt or Ron Evans, Public domain, via Wikimedia Commons

地球は一言で言えば、「生命の惑星」です。地球には、大陸と海があり、酸素を含む大気があり、生命が誕生して進化していました。

現在のところ、生命が存在している天体は地球だけです。

天体に興味があってもなくても、誰もが太陽系において地球だけが他の惑星とは際立って異なる特殊な惑星だということは理解しているでしょう。

では地球はどうして他の惑星たちとこれほど異なっているのでしょうか? 地球だけに生命が存在する理由はなんなのでしょうか?

この記事では、私たちの住む地球はどのような惑星なのか、他の惑星と何が違うのかについて明らかにしていきます。

目次

生命に満ちあふれた惑星動いている大地酸素が豊富な大気強力な地磁気バリア

生命に満ちあふれた惑星

地球は太陽系で唯一、生命が存在する惑星です。

地球には非常に多くの生物が存在しています。2011年のダウハルジー大(カナダ)とハワイ大(アメリカ)の研究によると、地球上の生物の種類の総数は870万種類です。地球はまさに生命に満ちあふれた星といえるでしょう。

太陽から地球までの距離は約1憶5000万kmで、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に位置しています。

ハビタブルゾーンとは液体の水が惑星の表面に存在できる軌道の範囲です。つまり、表面温度が0℃~100℃の範囲です。これは主に星系の中心にある恒星との距離によって決まります。

地球は太陽からちょうどいい距離にあるため、この温度条件を満たしているのです。そして、ハビタブルゾーンにある地球には太陽から生命活動に必要なエネルギーが過不足なく供給されています。

太陽系で、ハビタブルゾーンの範囲にある惑星は地球だけです。水星や金星は太陽に近すぎ、そして火星は太陽から遠すぎました。


ハビタブルゾーンの概念 Credit:天文学辞典(日本天文学会)

ハビタブルゾーンの条件は、地球と同じような生命を持つ惑星を探すために考えられました。

生命居住可能領域と言いながら「液体の水」の存在が基準になっているのは、地球の生命は水がなくては生きていけないからです。

例えば、人間の場合、水なしでは5日も生きられません。地球の表面を覆う海は、生命に必要不可欠な水をたたえています。また、地球で最初の生命は海で生まれたと考えられています。海は生命のゆりかごなのです。

とはいえ、ハビタブルゾーンに存在することだけが惑星が海を持つことの絶対条件ではありません。火星にもかつては海があったという証拠も見つかっています。

それでは、なぜ最終的に地球しか海を持たなかったのでしょうか?

一つの要因として、惑星の材料となった岩石に含まれる鉱物の違いが考えられます。

地球の材料となった鉱物にはその成分として内部に水を含んでいました。この鉱物は含水ケイ酸塩鉱物と呼ばれていて、水星や金星付近の軌道では温度が高いために不安定になり水を吐き出してしまいます。

したがって水星や金星にはあまり水が蓄積しませんでした。火星は地球と同じように大量の水が蓄積されていましたが、重力が弱すぎるためにほとんどの水が宇宙に拡散してしまったのです。

地球には、水の他にも大気があります。地球の大気は、酸素、窒素、二酸化炭素の組成のバランスが生物の生存にちょうどいい条件で揃っています。

酸素は少なすぎると息が苦しくなりますが、多すぎると危険です。酸素濃度が高いと生体内で活性酸素が発生し細胞や組織に損傷を与えます。また、大気中の酸素が多いと火災が発生しやすくなります。二酸化炭素が無いと植物の光合成ができません。また、環境に二酸化炭素が多すぎると生物の体内で発生した二酸化炭素を排出することができなくなります。

大気を保持するためには、惑星の大きさや質量も重要です。

水星や火星は地球の半分くらいの直径で重力が弱すぎるため、地球のような大気を保持できませんでした。金星は地球と同じぐらいの大きさですが、二酸化炭素による温室効果が暴走したため、表面での圧力が90気圧、温度が400℃という高温高圧の世界になってしましました。

このように、地球は生命が繁栄するために必要な多くの条件を満たしています。遠い昔には金星や火星も地球に似た環境だった可能性が指摘されていますが、現在ではこれらの惑星は生命が住みやすい環境とは言えません。

地球だけが生命にとって理想的な環境を絶妙なバランスで保ち続けてきたのです。

もちろん地球とまるで異なる環境の方が快適という生命も存在するかもしれません。しかし現在のところ、この宇宙において地球以外に生命の存在は確認されていません。

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動いている大地

地球は、私たちが住んでいる惑星ですが、普段の生活では地球の内部がどうなっているかあまり意識することはないでしょう。

人類は太陽系の果てまで探査機を飛ばしましたが、実は地球の内部には到達できていません。地面を最も深く掘り進めた世界記録は約12kmです。これは地球の半径の約0.2%にすぎません。堀り進むにつれて圧力や温度が高くなり、12kmの深さでは数百℃、1200気圧以上という高温高圧になります。

ではなぜ地球の内部について、人類は色々詳しいことを知っているのでしょうか?

実はこうした研究には地震が利用されています。地球の内部の状態は、地震の波の伝わり方や重力の計測によって調べることができるのです。

地震波の速度は地球内部の密度や圧力によって異なるので、この速度の違いを用いて、地下内部の構造を推測することができます。

そのようにして調べた結果、地球は外側から軽い岩石成分の地殻、やや重い岩石成分でできた流動するマントル、高温で溶けている鉄などの金属質の核という層構造になっていることが分かりました。マントルはあくまで固体です。ただし長い時間でみると少しずつ動いています。


地球の内部構造 Credit: Washiucho, Public domain, via Wikimedia Commons

この層構造はゆでたまごに似ています。表面の薄い地殻は卵の殻、その下のマントルは白身、中心の核は黄身に相当します。マントルは固体で、核の外側部分(外核)は液体になっているので、半熟のゆでたまごですね。

私たちの住んでいるこの大地は動かないように思えますが、実は年々少しずつ動いています。地殻の一部は大陸をつくるプレートという板状のものに分かれ、マントルの対流などによって動いているのです。これをプレート運動といい、プレート運動によって大陸の移動を説明する理論をプレートテクトニクスと呼びます。


地殻を構成するプレート群 credit:USGS、鷲羽町, Public domain, via Wikimedia Commons

地殻とプレートとは正確には別物です。地殻・マントル・核の3層は化学組成の違いによる区別です。一方、プレートは力学的な性質の違いによってその下の層と区別されます。

プレートの実体は、リソスフェアと呼ばれる硬い岩石の層で、その下にあるのがアセノスフェアと呼ばれる流動的なやわらかい層です。

プレートは中央海嶺で生まれ、ベルトコンベアのようにマントルの対流に沿って動いて海溝に沈み込みます。プレート同士がぶつかったり、すれ違ったりするプレート境界では火山や地震の活動が活発で、こうした地質活動はプレートテクトニクスによって説明できます。

例えば、日本列島には地震や火山が多いですが、これはプレートテクトニクスによれば当然のことです。ユーラシアプレート、北アメリカプレート太平洋プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートが日本列島の下でひしめき合っているからです。

ところで、地球以外の地球型惑星(岩石惑星)でもプレートテクトニクスは機能しているのでしょうか?

現在の科学的知見によると、地球以外の地球型惑星(水星、金星、火星)では、地球のようなプレートテクトニクスは機能していないと考えられています。

火星や月などの小さな天体は、すでに内部が冷えてしまっており、活発なマントル対流が起こっていないと見られています。

とはいえ火星には、太陽系最大の火山といわれるオリンポス山などの巨大火山が点在します。こうした火星の存在は、火星の地質活動が、過去には比較的活発で、地下深部からのマントルの上昇流である「プルーム」が起きてたことを示しています。

しかし、なぜ地球より小さい惑星である火星に、地球には存在しないような巨大火山が形成されるのでしょうか? 実はその理由にプレートテクトニクスの機能が関係しています。

地球でもプルームが火山を形成することはあるのですが、地球ではプレート運動も同時に存在するため、このプルームの位置は徐々に移動していきます。

例えば、ハワイ諸島はプルームによって形成された火山島に由来しますが、太平洋プレートが北西方向に移動するため、この火山島は同じ方向にズレながら形成されていきます。

このように東西に小さな島が連なるハワイ諸島の形成は、プルームによる火山活動と、プレート運動の組み合わせによって説明できるのです。


プルーム / credit:すじにくシチュー, CC0, via Wikimedia Commons

一方で火星はプルームがずっと同じ場所で持続的に起きるため、巨大な火山に成長していくのです。もちろん重力が小さい点や、大気圧が低い点も火山の巨大化に影響していますが、オリンポス山のような巨大火山の存在は、火星にプレート運動がないことの証拠になるのです。

金星は地球と同じくらいの大きさで内部構造も似ていますが、その表面は1枚の硬いプレートに覆われていると考えられています。したがって複数のプレートの動きによるプレートテクトニクスは機能していません。

プレートテクトニクスが地球にだけ存在するのはなぜでしょうか?

やはり地球にのみ存在する水が、プレートテクトニクスの機能に重要な役割を果たしていると考えられています。水は岩石の強度を下げ、断層を滑りやすくし、プレートの動きを促進すると考えられています。

また、地球の表面温度がプレートを形成するのに適しているという要因もあります。他の惑星では、表面温度が高すぎたり低すぎたりして、地球のようなプレートの形成ができなかったのでしょう。