Netflix『地面師たち』原作者が“フィッシング詐欺”で大金を騙し取られていた! 「67万円取られた。ふざけんじゃねぇよ!」

Netflixシリーズ『地面師たち』が世界的に大ヒットしている。その裏側で、筆者は新宿の飲み屋でとんでもない噂を耳にした。どうやら『地面師たち』の原作者である小説家の新庄耕が、フィッシング詐欺の被害に遭ったらしい。100億円規模の地面師詐欺事件の小説を描いた新庄が、どうして詐欺被害の当事者となってしまったのか……。その事件の全貌を聞くために新庄に連絡を取ると、新宿5丁目のバーに呼び出されたのだった。

実は騙されやすい性分?

──新庄さん、本日はよろしくお願いします。

新庄耕(以下、同) よろしく。インタビュー中は飲まないの?

──あっ、では新庄さんと同じのいただきます。

じゃあ、ハイボール2つで。アルハラみたいになってないかな?

──いえいえ、ありがたいです。新庄さんの小説が原作のNetflixシリーズ『地面師たち』が世界的に大ヒットしていますね。これだけドラマがバズると、原作者の人生にもなにか変化があるものでしょうか?

いやぁ、そんなにないね。LINEがいっぱい来るくらい。

──LINEですか……??

うん。今、超すごいよ。ドラマが配信されてから、誰こいつ? みたいなキャバ嬢から「見たよー!」ってLINEが来る。ほんと誰か全然わかんなくて「どこのキャバクラですか?」って返したら「札幌、札幌~っ!」って返ってきた。

──新庄さんが覚えてないだけな気がしますが。

あと、古い友達が「俺たちダチだったよな」とか「新庄はこういう奴だったんだよ」みたいなことをFacebookにすごい書いてる。

──(笑)。そんな新庄さんですが、最近フィッシング詐欺の被害に遭われたという噂を耳にしました。

うん。67万円取られた。ふざけんじゃねぇよ! ありえないでしょ。

──どうしたんですか?

銀行を装ったメールが届いて、「口座が悪用されてるからリンク先に飛んでログイン情報を入力しろ」って書いてあって、それにまんまと。

──フィッシング詐欺のメールだとは疑わなかったのでしょうか。

そのメールが届く数日前に、イタリアのブランドの通販サイトで買い物してて。そこでカード番号とかいろいろ入力したんだけど、そしたら翌々日くらいにGoogleのセキュリティアラートがいっぱい飛んで来て。

「あーっ、やばい攻撃されてる」って思ってたときにちょうどフィッシング詐欺のメールが届いたから、「やばい! いよいよ口座がやられる!」と思って急いでログイン情報を入力したら、やられちゃった。

──メールの届いたタイミングが悪かったんですね。いつ詐欺だと気づきましたか?

普段は口座なんか見ないんだけど、たまたま領収書の管理をマネーフォワードでやろうと思って、アプリと口座を連携してて。出金があるとスマホに通知が来るじゃないですか。あるときパッとスマホを見たら67万円が出金されてて。ちょっと前にタイで植毛したからその出金かなと思ったんだけど、でも植毛は67万じゃ収まらなかったから違うかぁ、みたいな。

──植毛はいくらしたんですか?

92万円したね。

──わざわざタイまでいって。

タイは植毛の技術がいいって言うよね。知り合いから勧められたからカウンセリングだけでも受けようかなと思って足を運んだら、「今すぐサインしてくれたら半額にします!」って言われて。それでサインしたんだけど、タイにいる友達にそのことを話したら「それ素人が騙されるやつだよ」って言われて。

──もしかして新庄さんは騙されやすいんでしょうか……??

典型的な“Noと言えない日本人”なんで。

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「もし映像化するなら主人公は誰だろうね」「綾野剛さんですよ」

──なるほど。フィッシング詐欺の被害分のお金は返ってきましたか?

全国銀行協会が不正利用された人の救済措置を定めていて。被害に遭ってすぐ被害届を出しているとか、警察に相談しに行ってるとか、犯罪者集団と関わりがないとか、いくつか条件を満たすと救済してもらえるんだけど、それで銀行から67万円を返してもらえました。

──犯罪者集団との関わりはないんですね。

ないよ。詐欺師っぽい顔だっていわれるけど。芥川賞作家の西村賢太さんと亡くなる直前に雑誌の企画で対談したときなんて、本を持っていってサインしてもらったら、俺の名前の下に「隠しても隠しきれない反社の香り」って書かれたよ。なんだそれって。

──(笑)。地面師詐欺の次は、フィッシング詐欺の小説を描いたりはしないでしょうか?

どうかな。スマホでポチポチやってるフィッシング詐欺に、地面師みたいな物語性があるのかな。

──そもそも『地面師たち』を描いたきっかけはなんだったんですか?

当時担当の稲葉氏がこの企画を提案してきたんだよ。(※註:稲葉=集英社の編集者。新庄耕のデビュー作『狭小邸宅』をはじめ、『地図と拳』(小川哲著)や『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(麻布競馬場著)等を担当)

──それで描き始めたんですね。

渋谷のセルリアンタワーのラウンジで「冒頭でまず小さな詐欺を描いて、そのあとにでっかい事件をやりましょう」みたいな打合せをしたんだよ。A4の紙にメモしながら、だいたい1、2時間くらい。そのプロットがほぼそのまま小説になったね。

──1、2時間の構想が、今やNetflixで全世界に。

もっとおもしろいのが「もし映像化するなら主人公は誰だろうね」って話をしたら、稲葉氏が「綾野剛さんですよ」って言ったんだよ。

──それがまさに実現したんですね。

その話を綾野剛さんご本人に伝えたら、めちゃくちゃ喜んでくれて。しかしやっぱスターは違うね。豊川悦司さんもそうだけど、かっこよすぎる。この前、文芸誌で綾野さんと豊川さんと鼎談やったけど、かっこよすぎて直視できないから俺ずっとテーブル見てたもん。

──新庄さんも『地面師たち』の俳優の1人として出てきても違和感ないほどの強面だと思います。

いやいや。今回もいくつかYouTubeにゲストで呼ばれて出たけどさ。俺は自分が出てる動画とか嫌で見れないよ。後から「YouTubeどうだった?」って担当者に聞いたら、「反社っぽい人がモゴモゴ聞き取れない感じでしゃべってる」って言われて。なんだそれ。全然駄目じゃねぇかよ!