続編は、締切3日前になっても書けてなくて…
──(笑)。『地面師たち』はどういう経緯で映像化に繋がったんですか?
映像化のコンペをするタイミングで、突然映画監督の大根仁さんが編集部に電話をかけてきてくれたみたいで。それでコンペに参加してくれた。
10社くらいが企画書を出してきたんだけど、そのなかで大根さんだけ活字ばっかりの13ページの企画書を持ってきて。自分が今までこういうものを撮ってきて、今こういう状況にあって、これからこういうものを撮らなきゃいけない。
そのときに本屋で『地面師たち』と出会って、絶対にこれを撮りたいんだ、って熱い思いが書かれてて。もうそれを読んだ瞬間に「大根さんでしょ」って。
──1人だけ熱量が圧倒的に伝わったんですね。
うん。即決だよ。
──Netflixシリーズ配信と同時期に、『地面師たち』の続編である『地面師たち ファイナル・ベッツ』が刊行されました。こちらも発売直後に重版が決まったそうですね。これは映像化に合わせて描いたのでしょうか?
映像化の話が決まったときに盛り上がって、とりあえず続編を描こうってなったんだけど。思うんだけどさ、大体Ⅰがおもしろいやつの続き物ってつまんないじゃん。
で、Ⅱ書き始めてみたけどさ、全然書けなくてさ。やばいんだよ。雑誌連載の締切3日前になっても書けないことがあって。どうしよ? みたいな。
最終的にⅠと同じく15万字くらいに収めようとしたのに、だらだら書いちゃってⅡは27万字とかになって。どうすんだこれ? みたいな。長いし、わけわかんねぇ。
──自分の作品をそんな風に話す小説家も珍しいですね。
でもさ、一生懸命書いたから、『地面師たち』のドラマを楽しんだ人はぜひ読んでほしい。拓海もハリソン山中も活躍してるから。
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それでも、詐欺を描いてしまうワケ
──(笑)。自身も詐欺被害に遭われながら詐欺をテーマとした小説を描き続ける新庄さんにとって、改めて“詐欺”とはなんなのでしょう?
自分が嘘つきなのもあって、詐欺師の嘘をつく部分に惹かれるってのはあるかもね。
──新庄さんはどんな嘘をつきたくなるんですか?
見栄っ張りだからさ。植毛もしてるしね。本当はしょぼい人間なんだけど、自分を大きく見せたくなっちゃう。今はなるべく嘘をつかないでなんでも正直にしゃべるようにして、なんとか社会と接点を保ってる感じかな。
だからフィッシング詐欺に引っかかったときも、こういうのを隠したらよくないと思って、真っ先に夕日の写真とともに詐欺被害に遭ったことをTwitter(現・X)でつぶやいたよ。
──夕日の写真とともにですか……??
うん。詐欺られた日に見た夕日が、なんかめっちゃ綺麗だったんだよね。
取材・文・写真/山下素童