「ガンダム」シリーズに時折、登場する、重装甲に多彩な武器を持つ「武装てんこ盛りガンダム」、その圧倒的な存在感を放つ機体は、どのようにして生まれたのでしょうか。



RX-78「ガンダム」を重武装化。「1/144 パーフェクトガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】「同じ機体?」←よく見ると違います こちらがくだんの「フルアーマーガンダム」です(4枚)

ラフスケッチから生まれたガンダム

「ガンダム」シリーズは、これまでに数多くの個性豊かな機体を生み出してきました。そのなかでも重装甲に多彩な武器を搭載し、圧倒的な存在感を放っている「武装てんこ盛りガンダム」は目をひく存在です。どのような機体があるのでしょうか。

 武装てんこ盛りなガンダムの祖といえる機体は、独特のミサイル演出で知られる板野一郎さんが描いたラフデザインをもとに、やまと虹一先生がマンガ『プラモ狂四郎』(講談社)に登場させた「パーフェクトガンダム」でしょう。

 1984年発売のガンプラ「1/144 パーフェクトガンダム」(旧キット)同梱資料によると、元々は板野さんが「遊びのつもりで武装のかたまりみたいなガンダムを描いてみた」ものといいます。しかしながら、非現実的なデザインに恥ずかしくなって机にしまっていたところ、どういった経緯かは不明ですが、『狂四郎』の連載開始早々にやまとさんの手に渡り、アレンジされてマンガに登場することになったようです。

 同機のデザインは『機動戦士ガンダム』で「アムロ・レイ」が搭乗したRX-78-2「ガンダム」をベースにしており、追加装甲をほどこしたほか右腕の巨大な「2連装ビームガン」や、肩の「大型キャノン砲」が増設されています。

 同名の別機体が、太田垣康男先生のマンガ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(小学館)にも登場しています。紛らわしいため、「パーフェクト・ガンダム」と中黒を入れたうえ、名前の後に「サンダーボルト版」と付け加えられ、『狂四郎』版と区別されています。

 似たような機体として「MSV」と呼ばれる模型企画に「フルアーマーガンダム」があります。増加装甲で強化された機体の右腕には「2連装ビームライフル」を備え、背部に「360mmロケット砲」を積む構成はパーフェクトガンダムと共通しています。

 こうした武装が施された経緯について、「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」シリーズ(BANDAI SPIRITS)の「MS開発秘録」によれば「特殊兵装をともなったモビルスーツ1機に対して戦艦1隻分あるいはそれ以上に相当する攻撃力をもたせようと画策した結果」とされています。

 武装構成は似ていますが、後付けでガンダムに武装を追加したパーフェクトガンダムに対し、フルアーマーガンダムは、「地球連邦軍」の「FSWS計画」と呼ばれる機体の性能向上を目的とした強化プランであり、追加装甲を前提に作られていて一体感があります。なお、こちらも同名の別機体が『サンダーボルト』に登場しています。

 追加装甲で強化したフルアーマータイプのガンダムは宇宙世紀の歴史に大きな影響を与えたようで、ほかにも多くの機体が作られています。

 例えば『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の時代には、アムロが搭乗する「νガンダム」を、「第2次ネオジオン戦争(シャアの反乱)」の長期化に備えて強化した案である、「νガンダムHWS(ヘビー・ウェポン・システム)装備型」があります。そこからは度重なる戦いもあってか、地球連邦軍が戦局の不透明さや予期せぬ事態に備えていた背景がうかがえます。

「νガンダムHWS」は完成度の高い「νガンダム」の装甲や火力を、さらに強化した機体です。これまでのフルアーマー技術を集大成のように活かした機体で、もし「アムロ」が「ネオジオン」との戦いで乗っていたら、大きな戦果を残したことは間違いないでしょう。しかし、実現する前に紛争が終結したため、日の目を見ることはありませんでした。



兵器に見えない武器も多い異色のガンダム。「HG 1/144 クロスボーン・ガンダムX1フルクロス」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

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マントが映える武装てんこ盛りガンダム

 武装てんこ盛りガンダムには激しくなる戦いのなかで、急ごしらえで強化された機体もあります。具体的には『機動戦士ガンダムUC』に登場する「フルアーマー・ユニコーンガンダム」が当てはまるでしょうか。

「ネオジオン軍」の残党「袖付き」との決戦に備え、主人公「バナージ・リンクス」の友人である「タクヤ・イレイ」の発案を、技術者の「アーロン・テルジェフ」が実現した機体です。

 驚くべきはユニコーンガンダムが性能を隠した「ユニコーンモード」から、本来の姿である「デストロイモード」に変形しても、後付けのはずなのに追加した武装が動きを阻害しないことでしょう。場合によってはパージも可能な豊富すぎる武装は、長期戦に備えて継戦能力をあげる狙いもあったのかと思います。

 長谷川裕一先生のマンガ『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』(KADOKAWA)に登場する「クロスボーン・ガンダムX1フルクロス」もまた、「てんこ盛り」と形容するにふさわしい機体でしょう。

 直前の戦いで深いダメージを負ったため、主人公「トビア・アロナクス」の愛機が最終決戦に備えて強化され、少数で大軍に切り込むための武装が用意されました。アンチビームコティングが施されたマントにも見える重厚な「フルクロス」のほか、9本のビームを広域に放つライフル「ピーコックスマッシャー」など多彩すぎる武装を備えます。

 これ以外にも、巨大な武器庫を背負った「RX-78GP03 ガンダム試作3号機 デンドロビウム」(『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』)や、名前の通りに全身が武器庫の「ガンダムヘビーアームズ」(『新機動戦記ガンダムW』)といった個性豊かな武装てんこ盛りガンダムが存在しています。この機会に振り返って、自分のお気に入りを探してみるのも面白いかもしれません。