塾に通う小学生が30年前の2倍以上
「夏休みが昔に比べて数日短いなど、いろいろな要因があるとは思いますが、子どもの教育方針に関して、学校よりも親の考えが強く反映される世の中に変わったことが特に大きいと思います。例えば、習い事に通う子どもは昔に比べて格段に多くなり、多い子は週5でどこかに通っています。習い事は学習系に限らず、ダンス・楽器・演劇といった芸能系など多岐にわたり、親が送迎して徹底的にサポート。
さらに、中学受験をする家庭も多くなり、そういった家庭では日ごろから、学校の宿題以外でもドリルを買って勉強するなどしています。こうなってくると、学校側が子どもに強制させる宿題を多くするわけにはいかなくなりますよね」
令和4年の文部科学省の調査によると、公立の小学校に通う児童の4割、私立の小学校に通う児童の7割が学習塾に通っているという。約30年前の1993年の調査では、小学校全体で塾に通っている子どもの割合は23.6%であった。飛躍的に塾に通う子どもが増えていることがわかる。
ただ、宿題が減っているのは、教員たちがそれぞれの家庭に任せてしまっているというわけだけではなく、子どもを想っての考えでもあるようだ。
「そもそも教員の意識としては、学習内容の定着のために課題を出していますが、果たして宿題にどこまでの効果が見込めるかが疑問です。中学・高校となったら自然と課題も増えて部活も始まって忙しくなるので、せめて小学生時代は好きなことする時間が多くてもいいんじゃないかという思いもあります。
教員の激務がたびたび話題になるので、教員が楽をするために宿題を減らしているのでは? との声も聞きますが、課題を添削することはそこまで苦ではありません。ただ、費用対効果が薄く、子どもの時間をいたずらに奪うだけの結果になっているなら『少なくしてもいいんじゃないか』って考えを持つ人は多いです。
ただ、宿題は学習習慣をつけるという面でも、提出期限を守るという面でも、子どもたちに身に付けてほしい社会的スキルですので、大切にしていきたい文化であることは間違いありません」
いくら夏休みの宿題が減ったからといって、今の子どもには今の子どもなりの苦労があるようだ。古いしきたりに固執せず、これからも時代に応じて教育環境が変わっていくことを期待したい。
取材・文/集英社オンライン編集部