音信不通の親友の家を訪ねてみると…
先生が何かあったと思うのには理由があった。6月11日に先生がキンテツ氏に会った際、彼は「300メートル歩いただけでハァハァ言ってて、目にも光がないし、グラスを持つ手がブルブル震えてた」と言う。
「歩いてるときも『そんなハァハァする?』って言ったけどなんか笑って誤魔化してたし、グラスを持つ手の震えのことをツッコんでも『いや僕は生まれてからずっと手震えてるんです』なんて言ってて、変だとは思ってたんです」
だが、先生はキンテツ氏の自宅住所を知らないために安否確認ができない状態だった。それというのもキンテツ氏はライター業が最も盛んだった15年以上前は「東京タワーが見える港区のマンション」に住んでいたというが、その後、赤羽あたりに移り住み、現在は親御さんに仕送りをもらいつつさらに都下に移り住んでいたため「自宅住所を言いたがらなかった」のだという。
「キンテツは安いものを嫌うところがありました。牛丼チェーン店も『そんなヤスモン食えない』とバカにしたり、歌舞伎町の安いキャバクラで『ここは安いからお触りしてもOK』という勝手なルールを作ってたり。だから住所は言いたがらなかったし、僕もそこまで追及しなかったんです」
だが、ある理由でキンテツ氏の住所が明らかになる。
「僕はキンテツとは漫画のネタ的に付き合ってた部分もあるので二番目の親友だと思ってるんですけど、実はキンテツには一番の親友がいるんです。その親友が6月にキンテツから“ある頼まれごと”をされていて、それにより一番の親友の方がキンテツの住所を知ったんです。
僕は彼から住所をきいてキンテツの家に急行しました。そのマンションがもう、見るからにボロくて。ドアにはキンテツのお父さんが書いた貼り紙が貼られていました」
貼り紙には「7月8日にキンテツ氏が部屋の前で倒れていた」ことがキンテツ氏のお父さんの文字で書かれていた。奇しくも先生が「結婚は破談」とポストし、キンテツ氏にLINEを送った日だった。
「その後、キンテツのお父さんが7月25日に再び部屋の整理で来るとのことだったので、お父さんに直接聞きました。キンテツは8日16時頃にコンビニから帰ってきたところ、家のドア前で倒れてて、それを見つけた近隣住民が救急車を呼んで運ばれたものの、心肺停止で死亡。
司法解剖もしたみたいだけど死因はわからなかったみたいです。一番目の親友にも二番目の親友の僕にも知らされることなく7月11日に家族葬が行なわれたみたいです」
(広告の後にも続きます)
ツイキャス中に起こった怪奇現象
あまりにも突然の死。先生がキンテツ氏の住所を知ることになった理由については一番目の親友の方から「キンテツに不名誉になることだから今はまだ言わないでほしいと口止めされているんです」と言う。
「一番目の親友の方はキンテツを本当に純粋な親友だと思ってるから言わないでって言ってるけど、親の仕送りで暮らして秋葉原のコンカフェに行ってシャンパン入れたり、ロマンス詐欺で200万円騙し取られたりしてるキンテツらしい馬鹿げた理由なんですよ。だから僕はいずれしれっと言っちゃうつもりですけどね」
キンテツ氏の急逝後、やや不思議な現象も起きた。8月2日、先生が現在の心境を語るべくツイキャスを行なった際、キンテツ氏の話題に触れたタイミングで“ガビガビゴボゴボ”という雑音が入る。
「じつはこれ、僕はフツーにベッドに寝転がりながらスマホを持ってしゃべってて、何も雑音なんてなかったんです。でも聞いてた人から『雑音で先生の声が聞こえない』と言われて気づきました。
僕はキンテツから何を書いてもいい“石川キンテツフリー素材権”を5万円で買ってたんですけど、もしかしたらキンテツは『だからって勝手に俺のアホ話をするな』って邪魔しに来たのかなって思いました。よく霊は電子機器などに影響を与えやすいって言うし…」
実際に先生の8月2日のツイキャスを聞くと、確かに先生の声がまったく聞こえず“ガビガビ”の音声以外に“誰かの声”のような雑音も入る。不思議な現象だが、先生はキンテツ氏の死をこう振り返る。
「親の仕送りで暮らしながらも自分の将来に焦りもなく、本気で秋葉原のコンカフェ嬢を落としてなんなら結婚できると思ってたキンテツは、楽しいまま終わったいい人生だったと思います。僕は正直、少し羨ましくさえ思った。あいつうまいこと逃げたなって気持ちです。もっと人生の苦しみと少しの楽しさを一緒に味わいたかった」
とはいえ我々はまだ生き続けなければいけない。先生に「Xでの嫁募集計画」についても聞いた。
「ディズニーランド同行者をXで公募したときに80人くらい応募者が集まってうれしかったんですけど、ほぼ僕のことを知らない人でした(笑)。だから付き合うならせめて僕を知ってる方がいいですし、巨乳の方であればなおいいです」
今は心証をよくするために「顔のシミ取り」と「歯のホワイトニング」もしているという。さらに「ニートの車好きのおっさんの話」が題材の新作も準備中だという。先生の今後の冴えない、モテない男たちの漫画に、我々は勇気をもらいたい。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班