何かとコンプライアンスにうるさいご時勢ですが、アニメ界隈では時折「地上波で流しても大丈夫なのか……?」と心配になるようなシーンが展開されることがあります。『異種族レビュアーズ』『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』『健全ロボ ダイミダラー』……。今回は、視聴者をザワつかせた「地上波ギリのアニメ」を振り返ります。
健全とは? 画像は、TVアニメ『健全ロボ ダイミダラー』ファン必携の健全指定図書「健全ロボ ダイミダラー メモリアルブック」(KADOKAWA)
【画像】え…っ? 公式が出していいの? こちらが『健全ロボ ダイミダラー』のマニアックグッズです(3枚)
まさかのアニメ化決定に原作者「正気ですか?」
毎年数えきれないほどのアニメが制作されていますが、そのなかには見ているこっちが心配になるような「地上波ギリギリ」の作品も少なくありません。容赦なく女性キャラのあられもない姿が映し出されたり、事あるごとにムフフなシーンが流れたり、さらにあまりの過激さゆえに、放送中止に至った作品もありました。
2020年に放送された『異種族レビュアーズ』は、まさにその代表例です。同作は人間やエルフ、妖精や獣人といった異種族が暮らす世界を舞台に、主人公が通った「性風俗店」をクロスレビュー方式で採点していく物語となっています。
内容が内容だけにアニメ化が決定した当時は、ネット上で大きな話題になる一方で、原作ファンから「好きな作品だけど、これ放送大丈夫?」「ホントにアニメ化するの?」といった心配の声が広がっていました。原作者の天原先生ですら、「正気ですか?」と困惑したほどです。
なんとか無事に初回放送にはこぎつけたものの、続く第2話で乳牛系「ミノタウロス」が「ミルク」を噴射したり、第3話では「女体化プレイ」が描かれたりと、良くも悪くもほぼ原作通りの内容が展開されていきました。その結果、TOKYO MXをはじめとする各局が次々に「編成上の都合」を理由に放送中止を発表する事態となり、かつて土曜深夜にアダルトバラエティ枠を設けていたサンテレビですら、放送を断念する形になったのです。
また、2014年に放送された『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』のハードさも負けてはいません。同作は「マナ」と呼ばれる力が存在する世界を舞台に、ある理由から身分を剥奪された皇女「アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ(アンジュ)」の戦いが描かれています。
キャラクターデザインや設定から、一見すると硬派なロボットアニメのように思えますが、第1話からアンジュが衣服を剥がされて「身体検査」を強いられるなど、衝撃的なシーンが目白押しでした。
その後も当然のように女性キャラクターの裸体が描かれたり、濡れ場が放映されたりと過激な描写がいくつも登場します。とくに第20話で同作の悪役である「エンブリヲ」がアンジュの痛覚と快楽を操って悶えさせるシーンには、「完全に薄い本」「『痛覚を全て快感に変換した』というセリフをアニメで聞くことになるとは……」「公共電波でなんてもの流してるんだ(笑)」といったツッコミの声が集まっていました。
また同じロボットアニメというくくりでは、同年に放送された『健全ロボ ダイミダラー』も視聴者を騒然とさせた作品です。怪ロボットを率いて人類に迷惑をかける軍団「ペンギン帝国」と、それに対抗するべく作り出された巨大ロボット「ダイミダラー」の戦いを描いた作品……というのは建前で、本質はギャグやキワドい表現に満ちたコメディアニメでした。
そもそも主人公の「真玉橋孝一」がスケベ大好きな男子高校生という設定で、事あるごとにヒロインのひとりである「楚南恭子」へセクハラを働きます。ただ、実をいうと孝一はダイミダラーの動力となる「Hi-ERo粒子」を発生させる因子の持ち主で、恭子への行為は粒子を補給するために必要不可欠だったのです。
そのように何かと理由をつけながら卑わいな行為が描かれる一方で、『勇者王ガオガイガー』などのロボットアニメに携わった柳沢テツヤさんが監督を務めたこともあり、ハイクオリティなメカアクションが展開されていました。
そのためロボットアニメとしての評価も高く、レジェンドアニソン歌手の遠藤正明さん率いる「遠藤会」の熱さ満点な主題歌も、同作の人気を後押ししていた印象です。『健全ロボ ダイミダラー』は、ロボとエロスが奇跡的な化学反応を起こした作品といえるかもしれません。