「レフェリー? 英語で話しました」ヘント渡辺剛は指揮官に“キャプテン代役”を託される充実ぶり!すっかり強豪クラブの“顔”のひとりに【現地発】

 8月18日、ヘントのホーム、アルテフェルデ・スタディオンにキャプテンの腕章を巻く渡辺剛の姿があった。

 開幕3連勝中の好調ウェステルローに対して、ヘントは慎重な試合の入りを見せ、両チームとも好機が乏しい展開に。しかし27分にMFゲルケンスがヘディングで均衡を破ってヘントが先制すると、その2分後には相手のミスを突いたFWフェルナンデスがGKとの1対1からチップシュートを決めて加点。32分には右SBガンボールのクロスを、MFガンデルマンが鮮やかなスライディングボレーでゴールを叩き込み、一気にヘントがリードを3点とした。
【PHOTO】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの悩殺ショットを一挙お届け!

 ここから1試合平均およそ4得点のウェステルローが牙を剥く。CBふたりとアンカーひとりを除く7人のフィールドプレーヤーたちが個人技、コンビネーション、クロスを駆使してヘントゴール前まで攻め込み、この圧に負けたヘントはパスミスを連発した。良い流れに乗ったウェステルローは43分、イラン代表FWサヤードマネシュが左45度から鋭いシュートを決めて3-1にして前半を終えた。

 後半もウェステルローのペースで試合が進んだが、ヘントは渡辺を中心にした堅い守備で抵抗。80分にMFデロージのゴールで4-1として決着をつける。これでヘントは11位から順位を7位まで一気に上げた。彼らの反撃はこれからだ。

 攻撃時は4-3-3、守備時は3-5-2の可変システムを採用したヘントは、渡辺が3バック時に真ん中に入り、左右のトルナリガとガンボールをリード。今季2ゴール・2アシストと伸び盛りの19歳ストライカー、スタシンに対して渡辺は“絶対に前を向かせない”という気迫あふれるハードなマークで封じ込めた。また、左サイドからカットインで攻め込むサヤードマネシュへの警戒を怠らず、渡辺みずから右に飛び出しストップするシーンも何度かあった。

 今季のリーグ戦では1勝2敗とスタートダッシュに失敗したヘントだったが、ようやく彼ららしい強さを示す試合ができた。「キャプテンに話を聞かなくっちゃ」とベルギープレスがミックスゾーンで渡辺を待ち受けた。
 
――キャプテンマークを巻いた今日、いつもの試合より重要だったか?

「気にしないようにしました。今までミトロ(ステファン・ミトロビッチ/34歳)やスベン(クムス/36歳)がやってきたことを自分もできるようにと意識していました」

――レフェリーとのコミュニケーションは?

「いつも以上に(チームを)代表してレフェリーと話をしたりした。チームメイトとも『どうやって守るか』とかコミュニケーションをとっていました」

――何語で?

「英語です。簡単なサッカーの英語なら喋れますので」

――監督からの信頼を感じますか?

「この連戦のなか、全部試合に出ていますから信頼を感じますし、そのぶん責任も感じています」

――伊藤敦樹選手が来ますね。

「これで(シュミット・ダニエル、横田大祐を含めて)4人目の日本人選手になります。(冗談めかして)ヘントで1年やっているのでここのことなら全部分かりますから、俺がサポートしている感じです」

 首位相手に本来のチカラを見せたヘント。そのキャプテンの話を聞けた記者たちは満足そうに監督会見に向かっていった。
 ベルギーに来てからの渡辺は本当にタフだ。

 コルトレイクの2年目から彼はどの監督にとっても欠かせぬ存在になり、昨季ヘントにステップアップすると名将ハイン・ファンハーゼブルクからも寵愛を受けた。日本代表の一員としてアジアカップに参加した時期などを例外として、渡辺はコルトレイクとヘントで2年間、国内外のコンペティションをフルに出続けた。

 ワウター・フランケン監督が就任した今季もそう。UEFAカンファレンスリーグの予選を戦いながら、今季のヘントは木・日・木・日…とタフな連戦を8試合こなしているが、チームの中で唯一人750分(+アディショナルタイム)フル出場しているのが渡辺なのだ。しかも今回のウェステルロー戦は、3日前にシルケボー(デンマーク)と延長戦(3-2でヘントの勝利)を戦ったばかりとあって、まだ8月半ばだというのに疲労がピークを迎えていた。

「前回120分全部出たから、俺も『今日は絶対にスタメンじゃない』と思っていたんですよ。120分やってから中2日で試合なんで、ありえない日程なんです。(シルケボー戦でフル出場したフィールドプレーヤーのうち)俺と16番の中盤の選手(デロージ。ウェステルロー戦は88分間プレー)だけが連戦で先発したんですけれど、今日は身体がヤバかったです。前回の試合では俺も両足がツってしまって『さすがに次の試合はベンチかな』と思っていた。昨季も中2日のペースでずっと試合があったんですが、今回は初めて120分の試合になりました。さすがに身体がキツイから、さすがに交代すると思っていたら、試合に出続けましたね」

 この日は出番のなかった本来の主将、ミトロビッチが「キャプテン!」と渡辺に声を掛けてから家路に急ぐ。

「コルトレイクではキャプテンをやりました。このチームでも試合の途中からキャプテンをやりました。選手交代でキャプテンをしたことはありますが、スタートからキャプテンを務めるのは初めてでした。ルールが変わったので、俺がレフェリーに言いにいかないといけなかった」

 ウェステルロー戦の渡辺は少なくとも2回、チームを代表してレフェリーに異議を唱えていた。

 フランケン監督は渡辺についてこう評価する。

「ワタは良いパーソナリティを備えており、常に頭を回転させる賢い選手で、チームを引っ張ることができる。彼は話すタイプのリーダーではなく、手本を示すタイプのリーダーだ。ピッチの上で証明すること、それがもっとも重要なんです。監督を務める私にとっても特別な存在です」

 渡辺に今季の目標を尋ねると「今年は昨季(7位)より良い結果を残したい。チャンピオンを狙いたい。カンファレンスリーグでも良いところまで行きたいですね」という答えが返ってきた。“チャンピオン”とはベルギーリーグ優勝とチャンピオンズリーグ出場を掛けているのだろう。
 
 日本代表復帰への意慾をあらためて訊くと「もう結果を出すしかない。試合に出て勝ち続けること――それが俺がやれること。それしかないです」とヘントの勝利に貢献することが代表への道であることを示した。

 先日、谷口彰悟がSTVVの入団記者会見で欧州でのステップアップと26年ワールドカップ出場に向けて「メラメラしています」と意欲的に語っていた。そのことを渡辺に伝えると「さすがです」と言ってから続けた。

「それが日本代表の強いところだと思うんですよ。全員が与えられた場所で100%やって誰が選ばれるかというのが日本代表の仕事だし、誰が選ばれるか分からないのが日本代表です」

 疲労困憊のはずの渡辺は丁寧に取材に応えてから、クラブ関係者に促されながらVIPの待つ部屋へ向かっていった。脂の乗り切った27歳は、すっかりヘントの顔のひとりになった。

取材・文●中田 徹

【画像】SNSフォロワー数が1670万超! スイス女子代表のブロンド美女、アリシャ・レーマンが魅せる厳選ショット集をお届け!

【画像】韓国No.1美女チアリーダー、キム・ハンナの“ドッカン悩殺ショット”を厳選でお届け!