1966年放送の初代『ウルトラマン』のオープニングには、たくさんの怪獣たちがシルエットで登場します。さてそのなかに1体だけ、今も「正体不明」の怪獣がいることをご存じでしょうか。
「テレビマガジン特別編集 ウルトラマン EPISODE No.1~No.39」(講談社)
【画像】え…っ? 似てる? こちらが作者が「正体だ」とコメントした「ゴルゴス」とシルエットの「謎の怪獣」です
「作者」はゴルゴスと言っているが
1966年から67年にかけて放送された『ウルトラマン』は昭和、平成、令和と世代を跨いで子供らを熱狂させています。とりわけそのオープニングは軽快で勇猛な主題歌とともに、たくさんの「ウルトラ怪獣」の「シルエット」が登場することでもおなじみです。いくつになっても、このオープニングはワクワクします。
今観ても不思議な高揚感を醸すウルトラ怪獣たちのシルエットですが、放送開始からそろそろ60年に到達しようとしているのに、ひとつ大きな謎が残っていることをご存じでしょうか。ファンの間でも意見が分かれる「謎の怪獣」が1体、紛れ込んでいるのです。
この怪獣が登場するのは、12話以降のオープニングです。主題歌が始まって早々にカネゴン、ゴーガと『ウルトラQ』に登場した怪獣のシルエットが登場し……その次です。全身トゲトゲで、鋭い目に鋭い牙と爪を持つ、いかにも「怪獣」然としたシルエットが登場します。しかもカネゴン、ゴーガは5秒映るかどうかだったのに対し、この「怪獣」は実に15秒にもわたって画面に鎮座し続けるのです。
そして、驚くことに、この怪獣の正体が分からないのです。
もちろん、これまでもファンの間でさまざまな議論がなされ、多くの候補が上がっています。たとえばそのトゲトゲな姿から「地底怪獣マグラー」ではないか、という声があります。フォルムは確かに近しいですが、マグラーはOPで謎の怪獣のシルエットの後、アントラーに続いてすぐに登場するので、少々考えにくいところです。
また、同じくトゲトゲのデザインをしている「ベムラー」ではないかという説もあります。こちらは成田亨さんによるデザイン画のアングルが似ている点からも、なるほど有力候補のように思えますが、残念ながら「決め手」にかけているのが現状でしょう。
一方、『ウルトラマン 怪獣大名鑑』という書籍では、実際にこのシルエットを作成した合成技師の飯塚定雄さん、つまり「作者」からの伝聞という形でこの「謎の怪獣」の正体について言及されています。いわく『ウルトラQ』に登場した、「ゴルゴス」とのことです。
作者が言っているのであれば、動かしようのない事実のように思えます。しかしながら「謎の怪獣」は二足歩行でトゲトゲしたフォルムをしているのに対して、「ゴルゴス」は四つん這いで非常にずんぐりとした体型であるため、どこかで疑問が残ります。
このように有力説がいくつも浮上しているなか、2021年にこの論争はひとつの「決着」を迎えました。
2021年にこの怪獣シルエットのカプセルトイが、「GPシャドウアート」シリーズとして発売されたのです。ウルトラマン、カネゴン、ガラモン、バルタン星人と、全5種のラインナップのなかに、あの「謎の怪獣」の姿があるではありませんか。
バンダイから発売されたこちらのカプセルトイには、もちろん「(C)円谷プロ」の記載があります。ついに「謎の怪獣」の正体が判明する時が来たのです。果たして公式の見解はというと……。
これがまさかの、「謎の怪獣」としてラインナップされたのです。ウルトラマン、カネゴン、ガラモン、バルタン星人、そして謎の怪獣、です。つまり上記のさまざまな候補や貴重な証言を受けてなお、オフィシャルな商品がこの怪獣の正体を「謎」としたのです。半世紀以上を経て、ますます謎が深まる結果となりました。この謎は令和の子供たちに託しましょう。『ウルトラマン』という名作とともに。