世界の「クラシコ」はタイトルを争う2チームによる“伝統の一戦”。一方、Jリーグでは…【コラム】

 世界には、「クラシコ」と言われるフットボールゲームがいくつもある。アルゼンチンでは、ボカ・ジュニオルス対リーベル・プレート、フランスでは、オリンピック・マルセイユ対パリ・サンジェルマンなどが最たるものだろう。ナショナルダービーという言い方では、イタリアのユベントス対インテル・ミラノなどがあるだろうか。

 彼らは大昔から強豪としてタイトルを争い、トップレベルで争い続けてきた。その熱がファン、サポーターを動かし、ビッグゲームとなった。その舞台が、選手たちのポテンシャルを最大限に引き出してきたのだ。

 クラシコの条件は、同国トップリーグでの試合数が最も多く、タイトルを競ってきたことにあるだろう。それこそ、本来の“伝統の一戦”を意味するクラシコの語源である。

 あまり知られていないことだが、2011年までスペインにおける当初のクラシコは、レアル・マドリー対FCバルセロナではなかった。

 両雄と並び、100年以上の歴史において1部で戦い続ける(一度も2部に落ちたことのないチームは3チームだけ)アスレティック・ビルバオが(バルサに抜かれるまで)、マドリーと対戦する試合こそ、クラシコだったのである。

 今も、この一戦はオールド・クラシックと言われる。アスレティックは、史上2番目に多いスペイン国王杯優勝チームで、幾多の試合を重ねてきたのである。
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 マドリー対バルサは民族的な遺恨もあって(独裁者フランコはカタルーニャ人の文化を弾圧し、その象徴だったのがバルサだった)、特別な試合となっていった。それぞれ大都市のクラブであったことから、英雄的な選手たちが世界中から降り立ち、伝説的な試合を作り出した。いつしか、自然に国内を二分するクラシコになっていたのである。

 一方で、Jリーグでもクラシコを冠した一戦はいくつかある。しかし現状は、宣伝的な意味合いを含めたカードばかりだろう。そもそもの歴史が浅いのはあるだろうが、「常に1、2位を争うクラブがあるリーグ形態ではない」というのもある。

Jリーグ発足後、東京ヴェルディ、横浜F・マリノスがしのぎを削っていたが、その時代はすぐに終わった。ジュビロ磐田、鹿島アントラーズの二強時代も振り返ったら、5、6年と言ったところか。サンフレッチェ広島の4シーズンで3度の優勝は際立っているし、浦和レッズが覇権を握りかけ、川崎フロンターレは時代を切り拓き、横浜は今も強豪だが…。未だ群雄割拠といったところか。

 Jリーグは31年目、本当の意味でのクラシコが生まれるか。

 それは最強のクラブ同士の戦いだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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