マンガを実写化した映画において、2時間程度という限られた尺のなかで、原作の良さを活かしたまま制作することは簡単なことではありません。なかには大きな原作改変に舵を踏みながらも、ファンから評価された作品がありました。
映画『亜人』に登場する佐藤も描かれたポスタービジュアル (C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社
【画像】え…っ? 『亜人』で綾野剛が演じた役は原作では初老? こちらが全然違う姿です(3枚)
「性転換」したキャラも高評価?
マンガやアニメを実写化した映画では、限られた尺にまとめるため、原作の設定やストーリー構成を一部改変する場合があります。なかには、原作と性別が変わったキャラが登場するも、意外と悪くない評価が出た作品もありました。ネット上で全面的に称賛、とまではいかずとも好評の声も多い作品を振り返ります。
『亜人』
同題マンガを原作とした『亜人』(原作:桜井画門)は、絶対に死なない新人類「亜人」の主人公「永井圭(演:佐藤健)」が、政府に追われる身となり、全人類を相手に逃亡する作品です。本作品は、原作の設定などの改変が多くありました。
まず、原作の永井は医者を目指す高校生というキャラ設定でしたが、佐藤さん演じる実写版の永井は研修医となっており年齢が上がっています。また、永井の宿敵「佐藤」は、初老のキャラですが、実写版では俳優の綾野剛さんが佐藤役を務め、原作よりも若い見た目になっていました。
ストーリー展開にも原作改変があり、永井の幼なじみ「海斗」は、本作品にはいっさい登場しません。そのため、永井が亜人と発覚し、海斗の協力を得て政府から逃亡する部分などは大幅にカットされています。
このように原作と構成やキャラ設定が異なっていたものの、「原作より鬱展開が控えめで、すっきりした構成で見やすかった」「原作の面白さをくみ取りつつ、アクションに特化していて、良い実写版だった」といった声があがっており、 CG技術を駆使したアクションシーンなどはファンの満足度が高かったようです。
『カイジ 人生逆転ゲーム』
『カイジ 人生逆転ゲーム』は、福本伸行さんの『賭博黙示録カイジ』を原作とした実写作品で、2009年に公開されています。「カイジ」シリーズ実写版は、本作を皮切りに2020年まで3作品が実写化され、人気の高いシリーズです。
自堕落な日々を過ごす主人公「伊藤開司(演:藤原竜也)」は、友人の借金の保証人になったことをきっかけに、多額の負債を抱えてしまいます。そして、借金の取り立てにきた「遠藤凛子(演:天海祐希)」から「一夜で大金を稼げる」とそそのかされ、予測不能なギャンブルゲームに巻き込まれるのでした。
本作は、原作と比べて、いくつか変更された点が見受けられます。たとえば、原作の遠藤はサングラスをかけた「遠藤勇次」という男性でしたが、実写では女性に変更されていました。また作中、カイジと「利根川幸雄(演:香川照之)」が「Eカード」で戦う際には、遠藤がカイジが資金を使い果たすと利子付きで5000万円を貸すなど、続編『賭博破戒録カイジ』のように一部彼をサポートするポジションになっています。
また、実写版ではカイジが最初に挑戦した「限定ジャンケン」で敗北し、地下労働施設に送られていますが、原作ではカイジはその段階ではギリギリで勝利し、地下へ強制送還されていません。映画としての見せ場のため、続編『賭博破戒録カイジ』の地下落ちのエピソードがくわえられ、人気のギャンブル「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「Eカード」を無理なく盛り込む流れが作られていました。
観客からは「天海さんの美しさに見惚れたし、最終的に遠藤にしてやられるカイジってのも原作通りだからいいと思う」「原作の盛り上がる部分を詰め込んでて見やすかった」といった声もあり、面白くまとめるための改変として評価されています。ただ、カイジと「兵藤和尊会長(演:佐藤慶)」による「ティッシュ箱くじ引き」の決戦や、利根川の最後の見せ場「焼き土下座」がなくなったことを残念がる意見もありました。
オリジナルの展開が多く描かれている2部作の実写映画1作目『GANTZ』ポスタービジュアル (C)奥浩哉/講談社 (C)2011 「GANTZ」 FILM PARTNERS
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実写オリジナルの敵キャラが出現したことも?
『GANTZ』
「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて13年にわたり連載された人気マンガ『GANTZ』(原作:奥浩哉)は、2011年に前編と後編の2部構成で実写映画が公開されました。
物語は、死んだはずの人間たちがマンションの一室に転送され、謎の黒い球体「ガンツ」から出される指令を受けて、さまざまな「星人」と壮絶な戦いを繰り広げていくというものです。邦画のスケールでは難しそうなSF作品のため、「映像化は厳しいのでは?」という原作ファンからの声もありましたが、フタを開けてみれば、CGによる星人の姿や激しい戦闘シーンなどハイクオリティな映像が評価されました。
映画の公開当時、原作がまだ連載中だったため、2作目『GANTZ PERFECT ANSWER』では実写オリジナルのラストが描かれました。原作では、宇宙船で巨人の星人たちと戦って勝利するのに対し、実写版では「玄野計(演:二宮和也)」がガンツのなかに入っている「玉男」の身代わりとなって、ガンツにエネルギーを供給し続けることを決断するという切ない結末になっています。
また、マンガやアニメにも登場しない実写オリジナルの星人「黒服星人」の登場も、大きな改変ポイントです。作中、その一員「黒服壹(演:綾野剛)」と玄野が、地下鉄のなかで戦闘する姿が描かれました。その際、スピード感あるカメラワークで、目で追いつけないほどすさまじいアクションシーンになっており、2作目の大きな見どころのひとつといえるでしょう。
原作と異なった部分も多い本作でしたが、視聴者からは「ラストも実写ならではで良かった」「西丈一郎役の本郷奏多さんが原作とそっくりだった」などの声があがり、2部作とも割と好評だったようです。